ハノイ観光記

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4日目 : 2019/12/15 (日)

[ハノイ観光A、ハノイ発]

 

 

 ハノイ最終日の本日。決まってるスケジュールは昼前のチェックアウト、そして帰りのフライトが夜中12時過ぎということだけなので、丸一日観光に使うことができる。むしろ頑張って丸一日時間を潰さねばならない。とりあえず午前中はホアンキエム湖の周りを散歩し、午後は旧市街から少し遠出して、ハノイの隠れた名所であるロンビエン橋からハノイ城、レーニン像、そしてトレイン・ストリートと、一日延々歩き続ける予定にします。

 

 

 朝食は2日目と同様、ホテルのレストランでビュッフェ。一昨日とメニューが微妙に違ってて、飽きないようにしてくれているのが嬉しい。一昨日はチキンフォーをオーダーしたので、今日はビーフフォーにしてみたら、やはりチキンに比べて少し脂っこい感じだった。やっぱりチキンの方が好きかなー

 

シックな感じのクリスマスツリー。

まるでヨーロッパのホテルである。

今朝の日替わりベトナム名物。

何だったか忘れました。

 

 朝食を食べ終わってパッキングをしたら、まずはホアンキエム湖の周りの散策へ。まだ朝の9時ということもあり、ホテルの近くのお店は開き始めたばかりな感じで、青いお風呂椅子もまだ並んでいない。日曜の朝はまだそんなに賑わってないのね、と思いながら池の周りに出てみたら、どうやらマラソン大会みたいなのが始まるらしく、めっちゃ人が集まって賑わっていた。いいなぁ、こういう地元感ある盛り上がり。

 

マラソン大会に集まる人達。手前で太鼓を叩いている子供たちがカワイイ。

 

 池の周りを歩く前に、池の中に浮かぶ小島にある玉山祠というお寺へ行ってみた。寺の中には1968年に池で捕獲された2m以上ある亀の剥製が展示されているらしい。まぁ、そんなに亀の剥製に興味はないのだが、池の観光スポットになってるみたいなので、渡っておくに越したことはない。有料だけど。

 

この赤い橋を渡ってゴックソン島という小島へ。

 

橋の入口にある門の脇にいた虎。

反対側には龍がいました。

 

橋から眺める朝のホアンキエム湖。不忍池に近い雰囲気。

 

橋を渡った島の入口にも再び門が。

このクォリティ、好き。

 

こちらも門の脇には動物が。

亀が剣らしきものを背負ってます。

反対側にいるのは龍馬。

麒麟と一緒?

 

 どうやらホアンキエム湖の亀は伝説的な存在らしく、遡ること15世紀。ベトナムが明によって支配されていた頃、のちの黎朝(ベトナム王朝)初代皇帝となるレ・ロイが、湖で1匹の亀から渡された宝剣によって明に勝利したという伝説があるらしい。その後、平和な時代が訪れると、宝剣を持ち主である竜王に返すように湖の大亀から言われたレ・ロイは、この池に剣を返したいう。ホアンキエム(還劍)湖という名前はこの伝説から生まれたとのこと。実際にこの池には巨大な亀が生息していて(シャンハイハナスッポンという種類らしい)、つい最近では2016年に200kgもある巨大なシャンハイハナスッポンの死体が見つかったというニュースが流れている。そんなに大きい亀がいたら、伝説が生まれて神聖化されても無理はなかろう。

 

こちらが展示されていた亀の剥製。

 

2匹いました。見応えアリ。

 

 玉山祀はこの亀の他に、誰かを祀っているらしき部屋があるくらいで、大して見所はないのだが、100円ちょっとの入島料なので、まぁこんなもんでしょう。

 

 島から出たら、池の周囲はマラソン大会で走っている人がいたり、一角では何やら演舞大会みたいなのをやっていてオバちゃんオジちゃんが気合い入れて踊ってたり、また別の一角では子供たちが小さい車に乗って楽しそうに遊んでたり。みんな活き活きしてて、こういう純粋なエネルギーに溢れているとこっちも元気が出てくる、そんな街だなぁと思いながらホアンキエム湖を一周します。

 

演舞大会(?)で踊る人たち。ジャージ姿にどこか親近感。

 

こちらは別の団体。真剣、そして楽しそう。

 

池のほとりでは写真撮影中も人が多数。

ポーズ、バッチリです。

こちらのオバちゃんも撮影中。

衣装もバッチリです。

 

子供たちがこれを乗り回してて楽しそうでした。

 

 ホアンキエム湖には玉山祠の島のほかにもう一つ島があり、そこには亀の塔という小さな塔が建っていて、伝説ではル・ロイがこの島で宝剣を池に返したのだとか。こちらの島には上陸できないのだが、この塔がホアンキエム湖をフォトジェニックにしていると言っても過言ではなく、亀の塔のベストショットスポットを探しながら池を一周するだけでも十分楽しめます。

 

池の南西岸から撮影した亀の塔。

 

今回はコレがベストショットでしょうか。

 

 

 40分くらいかけて池の周りを散歩した後は、部屋に戻ってチェックアウトまで1時間ほど時間を潰し、更にロビーで40分くらいダラダラと時間を潰してから、ランチを食べにホテルのレストランへ。朝食ビュッフェを食べたレストランなので、別にここで食べずに、もっと地元感溢れるお店で食べてもいいのだが、このホテルでのランチも今回のパッケージに含まれているのだ。それにビュッフェが美味しかったので、ランチも期待できそうだし。

 

とりあえずドリンクはストロベリースムージー。

 

 パッケージに含まれているランチなので、メニューはプレフィックスのコース。スターターは揚げ春巻きとチキンサラダのプレート、次にフォー、メインはブンチャー(っぽい料理)と、期せずして昨日の夜に食べたメニューとほぼ同じであった。そして昨日のレストランに負けず劣らず美味しい。いや、むしろ創意工夫が凝らされていて、こちらの方が一枚上手感アリだ。

 

揚げ春巻き(真ん中のタレが美味しい)と、バナナの花のチキンサラダ。

バナナの花のサラダはベトナム農村の郷土料理らしい。

 

フォーは最初にヌードルと具だけ持ってきて、目の前でスープを注いでくれるサービス。

こういう一手間のサービスが嬉しい。

 

 メインのブンチャーっぽいプレートは、麺にプラスして焼き魚もスープにつけて食べる料理だったのだが、いやぁ、これが味しくて美味しくて。スープも魚も美味しいんだけど、それにとどまらず、レタスにシソ、そしてパクチーをたっぷりスープに入れられるというサービス精神に、もう箸が止まらなくなりました。ベトナム料理、最高。

 

手前の焼き魚を、麺やパクチーと一緒にスープに浸して食べます。

結構量があったけど、美味しくて夢中でガッツいてました。

 

デザートプレートのアイスはあっさり。

 

 これでおしまいと思いきや、最後にメニューにないスペシャルということで、ウェイターのお兄さんがノンアルコールカクテル(ミックスジュース)をテーブルで作ってくれるサービス付き。柑橘類の皮を目の前で燃やしてカクテルに香り付けしてくれたりと、手間暇かけた遊び心あるサービスで、味もおもてなしも大満足でした。

 

 

 食べ終わったら13時半過ぎ。午後の市街地散策へ出かけます。まずホテルの北側へ向かい、ハノイの伝統的な家屋がそのまま残っているという旧家保存館(Heritage House)へ。19世紀末に建てられた家屋で、商人の家族が代々住み続けた後、1954年に政府が買い取り、その後1999年まで5つの家族が暮らしていたとのこと。その間にリフォームを経ていたものの、オリジナルの構造を再現するように修復したうえで一般公開しているらしい(パンフレットより)。というわけで、入場料100000ドンを払って見学します。100000っていう数字が金銭感覚を惑わすというか、いまだにドンの感覚が分からないというか。1ドンが大体0.005円だから、100000ドンは・・・500円くらいか。安いな。

 

入口が旧市街に溶け込み過ぎてて、

前を数回素通りしました。

 

 入ってすぐは受付とショップスペースになっていて、その上の2階が旧リビングルーム。これが1st buildingで、その奥の中庭のようなスペースを過ぎると2nd buildingがあり、ここの1階が囲炉裏部屋(ダイニングルーム?)、2階が寝室になっており、更に奥には2つ目の中庭があり、その向こうに台所、一番奥には風呂という構造。つまり、間口は狭い代わりに奥行きが非常にある。どことなく日本の旧家に通じるものがある構造で、京町屋とかこんな感じなのだとか。

 

昔のリビングの再現。調度品が素敵。

 

中庭があるおかげで風通しが良くなっている。

暑い国ならではの工夫。

 

 

 旧家保存館を出たら東に向かい、大通りのチャンニャットズアット通りに出てハノイの交通料を体感。特に観光スポットでも何でもない大通りだが、ハロン湾に行く時にこの通りを通って、なんかもう車とバイクと歩行者がカオスな感じだったのが印象的だったので、もう一度見てみたかったのである。実際にカオスだったのは大通りの立体ラウンドアバウト(というか高速道路のジャンクションみたいなやつ)の中で、残念ながらそこまでは歩いて入れないのだが、街中の細い通りとはスケールの違う交通量、それにもかかわらずバイクの数が半端ないためにカオス感が出ている光景は、目を見張るそれでした。あー、この空間を俯瞰で眺めたい。

 

静止画ではカオス感が伝わりづらいが、そもそも車線というものがない。

 

 このチャンニャットズアット通りをしばらく北上し、歩道橋を過ぎたところで左折すると東河(ドンハー)門という門がある。ハノイの旧市街はかつて城壁に囲まれていて、その城壁には16の城門があったらしく、そのうち唯一現存しているのがこの東河門なのだとか。ちょっとした観光スポットみたいなので、とりあえず東河門をくぐって城下町の内側に入ります。

 

東河門を城壁の外側から。

 

そして内側。

 

 この東河門の西側(城壁の内側)から始まるハンチエウ通りはゴザの専門店通りらしく、イグサ製の日用品が店頭に並んでいた。地元感が漂っていて楽しい。そしてハンチエウ通りから北へ向かうと、ドンスアン市場というハノイ最大の市場があるので、恐らくこの辺りはハノイの日常生活の中心地なのではないだろうか。果物や野菜、色とりどりのスパイスを売ってるお店も並んでたりして、なんだかワクワクしてくる。

 

東河門をくぐってすぐのハンチエウ通り。

人々の日常感、そして樹のダイナミックさの融合が好き。

 

野菜を売ってるのかバイクを売ってるのかよく分からない八百屋の店先。

 

果物や花を売る人たちの露店が中央分離帯の役割を果たしている不思議。

 

 

 さて、ここまでホテルからずっと北上してきたのだが、当てもなく北に向かって歩いていたわけではない。このドンスアン市場の辺りからさらに北へ向かうとロンビエン駅という鉄道の駅があり、そのロンビエン駅から東に伸びて紅河を渡る、ロンビエン橋という鉄橋が目的地の一つなのだ。このロンビエン橋、ガイドブックにはあまり載っていないのだが、ハノイのおすすめスポットで検索すると大体出てきて、その写真を見たり(線路の上に立って橋の雄姿を撮影できるらしい)、その歴史を読んで、これは実際にこの目で見てみたいと思っていたスポットなのである。なぜそう思ったのかを説明するのは難しいが、1902年に竣工した全長1.7kmの鉄橋で、建設当時は「インドシナで最も美しい橋」と言われ、ベトナム戦争中に米軍の爆撃を受けた歴史を持ちつつ、修復されながら今日まで利用され続けていると言われたら、なんとなく食指が動いたりしないでしょうか。しないですかね。

 

再び大通りに出ると、向こうに見えてきました、ロンビエン橋。キャー!

 

 その存在を知ってから数ヶ月も経っていないものの、その間にロンビエン橋への想いは募る一方だったので(そして本当に訪れることになるとは昨日まで思ってなかったので)、視界にその姿が入ってきたこの時点で既に感極まり始めている自分。落ち着け。落ち着くんだ。とりあえずロンビエン駅の方に行ってみるんだ。

 

 まずはロンビエン駅のホームから線路に降りて橋を撮影できたりしないだろうかと、駅の中に入ってみるものの、そんな雰囲気は全くなく、座って静かに電車を待っている人たちがいるのみ。ウロチョロしている観光客(=自分)は明らかに浮いている。仕方ないので、次は駅を出て実際に橋を渡り始めてみる。と言っても線路の上を渡るのではなく、線路の両脇を走る、バイクや歩行者専用の道路(車は通行できない)。

 

ロンビエン橋の入口にて。

本当にロンビエン橋の上に立てる日が来ようとは!

 

この歴史を感じる錆つき、昔懐かしい質感。噂通りの美しさである。

 

さっきまで歩いていたチャンニャットズアット通りが橋の下を走ります。

上から見ると改めてカオス感。

 

そしてロンビエン橋の最大の魅力、美しいトラス部分が間近に!

 

 このまま歩いていけば、この美しいトラス部分を目の前に見上げながらウットリすることもできるし、時間と体力さえあれば1.7kmの長さを歩いて渡ることもできなくもない。いや、正確に言うと歩いて渡って再び戻らないといけないので3.4kmの距離だが、それでも1時間くらいかければ往復できるだろう。ただ、写真をよく見てもらうと分かるのだが、欄干が結構低い。しかも橋そのものが年代物のため、欄干も結構ボロそうで、さぞかし河の上を渡っている間は怖かろう。バイクの通行量も相変わらず多く、そのくせ歩行者専用部分の幅は狭く、向こうから人が歩いてきた時にギリギリすれ違えるくらいなので、どっちに転んでも地獄である。更に、実際に歩いたライターさんの記事を読むと(こちら)、歩道(と言っていいのだろうか)部分はガタガタしてて不安定な場所もあるらしく、渡ってる途中で後悔したとのこと。もちろん渡ったからこそ見られる光景もあるらしいが、ここはその後悔の念に従って渡らずに引き返すことに。

 

 とは言っても、これだけでロンビエン橋は終わるわけにはいかない。ウェブ情報によると、ロンビエン橋を上から一望できるベストスポットを有するカフェがあるとのこと。そしてそのカフェを橋の上から発見したので、早速行ってみます。ここまでホテルから1時間くらい歩いてるので、そろそろ冷たいものでも飲みたいし。ちなみに、途中で旧家保存館や東河門に寄り道したことを考えると、ホアンキエム湖からロンビエン橋の袂まで20分も歩けば着きそう。そんなに遠くないので、是非とも日本のガイドブックにも取り上げてもらいたい。

 

橋の下の大通り沿いに建つ、

Serein Cafe & Lounge というお店。

お店の入口にて。

撮影スポットのアピールめっちゃしてた。

 

 中に入ると、どうやらカフェスペースは3階から上らしく、3階までエレベーターで上ったら、好きな席に座ってテーブルでオーダーしてねと言われる。あらかじめウェブ情報で屋上のテラス席があることは知っていたので、これはもう屋上(5階)に行くしかないでしょ。しかし、残念ながら橋を望める屋上のいい席はら埋まっていた。ありゃ、残念… と思ったら、屋上の更に上のルーフトップ席があるではないか。しかもいい席が空いてるではないか。

 

この上の席から写真撮り放題!

 

 そりゃもう、テンション上がりまくりで撮影しまくるわけだが、冷静になってみると、こんな席まで果たして注文を取りに来てくれるのだろうかという不安が脳裏をよぎり始める。確かに橋の写真は撮り放題だけど…と思っていたら、なんと5階のベスト撮影スポットともいえる席が今まさに空いたところだった。まさに神の思し召しとしか考えようがない奇跡。ありがたく思し召しを頂戴いたします。あ、もちろん一番上のルーフトップ席にもちゃんと注文を取りに行っていました。

 

改めて5階のテラス席から。カッコイイ!しびれる!

 

どこまでも続いてそうなトラス部分が素敵!

 

渡りたい!

 

しかしこのバイクの交通量のすぐ横を歩いていくのはやはり怖そう。

 

橋の向こう側の光景も絵になります。壁画アートにもご注目。

 

 いやぁ、このカフェの屋上は本当にベスト撮影スポットで、幾何学的な美しさと歴史を物語るような風情を同時に湛えたロンビエン橋の姿はもちろんのこと、その橋を渡る大量のバイク、橋の下の大通りの交通量、大通り沿いの壁画モザイクアート、橋の向こうの倉庫街、視界に入るカラフルな建物、川岸の緑と、全てが見渡せる特等席であった。いつまで見てても飽きなそう。ちなみにこの壁画モザイクアート、ただの落書きではなく、ハノイ遷都1000年記念プロジェクトとして2010年に完成したもので、先程通ったジャンクションのようなラウンドアバウトの辺りからずっと続いているのだが、それはごくほんの一部。なんとトータル6.5km、総面積にして6,950uという、世界最大のモザイク壁画としてギネスに登録されているらしい。ハノイ近郊にある陶器の生産地として有名なバッチャン村のバッチャン焼きセラミックを使っていて、ベトナムの歴史や文化、地元の子供たちが描いた絵などを題材としているのだとか。これを見ながら大通り沿いを歩いていくのも楽しいかも。

 

ノンアルコールカクテルで一息。

リア充っぽい一枚を目指してみるもののイマイチ。

 

 このテラス席、なぜか韓国人らしき若者(ほぼ女子)が多く、ロンビエン橋を背景にした映えショットの撮影にいそしんでいた。インスタで話題のスポットなんだろうか。隣に座っていた女子なんか、おまえはモデルか!っていうくらい小道具使いながらポーズ決めまくってたし。そんな撮影女子たちを冷めた目で見るのも楽しいし、橋を行き交う人たちを見てるのも楽しい。

 

30人くらいで橋を渡り始める欧米人。

この集団と延々すれ違う人がかわいそう。

線路に侵入して写真を撮る人達。

そうしたい気持ちは分かる。

 

 恐らく、線路の上から橋を撮影した写真がインスタにあがってるんだろう。15分くらいの間に3組が線路に入ってポーズを取ったり、寝転がって写真を撮ったりと、だいぶ盛り上がっている様子であった。上の写真は、元々アジア人男子2人が中で撮影してて、そこを通りかかった白人女子が「どこから入ったの? え? この柵乗り越えるの? ここ渡るの怖くない?」と言いながら(この会話は想像です)アジア人男子の手を借りて恐る恐る線路内に立ち入り、入ってからは3人で超ノリノリな撮影大会をしているところ。白人女子のボーイフレンドと現地ガイドらしき連れはそこまで興味がないのか、線路の外でヒマそうに待ってるのが可笑しかった。いやー、橋のあるところにドラマあり。飽きません。

 

確かに、この橋梁部分を渡るのは怖そう。

 

 ところで、線路といえば列車なわけで、どうせなら列車が橋を渡るシーンも見てみたいのが人情というもの。ただ、ロンビエン橋を通過する列車は1日に数本しかないらしく(だからこそ線路に立ち入って悠長に写真を撮れるのであろう)、徒に列車が来るのを待ち続けるわけにもいかないので、すぐそこのロンビエン駅の時刻表をチェックしてみたら、なんとちょうどいい列車があるではないか。14:40頃にカフェに入ったのだが、15:20ロンビエン駅発という列車があるではないか。適当に歩いて適当にここに入ったのに、なんという偶然。やはり神の思し召しだろうか。ありがたや、ありがたや。というわけで、ドリンク飲み終わってからもしばらく時間を潰します。

 

 しかし15:20になってもなかなか列車は来ない。ベトナムの列車運行は案の定かなりルーズなようで、10分待っても来る気配がなく、もしかしたらダイヤが急遽変わってる可能性すらある。まぁじゃぁ仕方ないかとあきらめかけていたら、徐に汽笛のような音が聞こえてきた。もしやこれは!と思って待っていると、フェイクの汽笛が数回鳴るという"焦らし"の後、とうとう列車が登場。タメますねぇ。エンターテインメントのツボを心得てますねぇ。

 

なんかカッコイイの来た!想像してたよりずっと近代的な車体。

 

列車もバイクも写真に収められる幸運を噛みしめて連写します。

 

あぁ、列車が行ってしまわれる… 時間にして1分前後、至福の時間でした。

 

 結局このカフェには1時間ほど滞在。いやぁ、入ってよかった。別にドリンクは大して美味しくなかったし、そのわりに値段は高めだったけど、これだけロンビエン橋を堪能できることを考えれば、そこらへんは目を潰っていいだろう。接客は結構良かったし。

 

 お店を出たら、橋の下をくぐって橋の北側へ出て、北側からロンビエン駅に入ってみた。どうやら北側から駅に入る時は線路を横切ることになるらしく、そこなら線路の上に立って橋の写真が撮れるらしい。

 

橋の高架下を北側に抜けた先にある駅の入口。

 

コロニアル建築なロンビエン駅。

 

確かに、こちら側から駅に入るためには線路を横切らねばならない。

 

その線路の上から一枚。

 

今度はロンビエン橋に向かって一枚。イイ!

 

 これまたベストな撮影スポットである。さっき列車は行ったばかりだから、スタンド・バイ・ミーの如くロンビエン橋の方まで少し歩いていっても問題ないんじゃない? もっと写真撮れるんじゃない? と行く気満々でいたら、いつからいたのか、お巡りさんらしき人に「線路に入らないで、写真ダメ」と言われてしまった。ありゃ、そうなんだ。ウェブの記事だと線路に入って撮影できるって書いてあったけど、最近はそこらへん厳しくなってきてるんだろうか。そう思って駅の入口の写真を見返してみると、確かに「線路や橋の上での撮影禁止」という看板が。まぁ、危ないから仕方ないし、当然っちゃぁ当然だけど、我々を注意するなら橋の上から線路に侵入している輩達も注意した方がいいと思う。あっちの方がよっぽど危険度高いって。

 

 

 駅を後にしたのが16時前。次は西に向かってタンロン遺跡の方を目指します。Googleマップで Hàng Đầuと書いてある通りからファンディンフン通りを西に歩いて行ったのだが、Hàng Đầuまでが旧市街地の範囲なのか、ファンディンフン通りまで出ると新市街の様相を呈してきて、新しくて土地が広いホテルや小綺麗なショップが並ぶようになり、旧市街とはまた違った街になっていた。これが現代のハノイということになるのだろうか。歩道のアスファルト舗装が途中で放置されてるあたり、開発途中感が漂ってるが…

 

ファンディンフン通りの東端に建つ給水塔。19世紀末に建てられたものらしい。

 

 このままファンディンフン通りを西に進んでいくとタンロン遺跡の北辺に出て、かつてのハノイ城の北門の姿が目に入ってくる(タンロンはハノイのかつての名称)。これは1805年に築かれたもので、ハノイ城にあった5つの城門のうち唯現存しているものなのだとか。そしてこの正北門、19世紀半ばにフランスがベトナムに侵攻した際にフランス軍艦から受けた砲撃の痕が、今でも刻まれているのだ。まさに歴史の証人。

 

大きくて写真に上手く収められない正北門。向かって左側の二つの穴が砲撃の痕。

 

下の砲撃痕にズーム。1882年の攻撃だったらしい。

 

 この北門、タンロン遺跡の入口のようにも見えるが、ここから中には入れず(遺跡の入口は南側にある)、ただ門の上に登れるだけ。もともとタンロン遺跡の中に入るつもりはなかったので、門の上から遺跡の敷地内がちょっと見えたらいいな、くらいの気持ちで上ってみたら、遺跡っぽい建造物は全く見えず、敷地内にあるトタン屋根のボロそうな平屋が見えるだけだった。ちなみに逆も然りで、遺跡の中に入ってもこの正北門を見ることはできないので注意が必要。

 

 ところで、正北門は入場料なしで上れるという話だったのだが、入ろうとしたら門の横にある受付のような建物にいる守衛らしきおっちゃんが、お札を見せながら「チケット?」と言ってくる。え? ここでチケット買うの? と案内板を見たけど、それらしきことは全く書いていない。どうやら小遣い稼ぎにチケット代として1人あたり10000ドン貰っているっぽかった。えー、どうしようかなぁ、だったら入らなくてもいいかなぁと思ったけど、よく考えると10000ドンなら50円弱なので、まぁそれくらいいいかと思ってお金を渡したら、随分嬉しそうであった。定年後の給料が少なくて生活が苦しいんだろうか。

 

門の上にて。

 

 正北門から道路を挟んで向かい側には北門(クアバック)教会という教会があるらしく、せっかくすぐそこまで来てるので行ってみた。1930年代に建てられたというこの教会、黄色い外壁の薔薇窓と鐘楼が写真映えするからか、教会の敷地内でも周りでも、アオザイ着たりオシャレ風を気取ってる女子達が気合い入れて撮影しまくっていた。もはや、その人たち込みの風景である。

 

宣材写真かっていうくらい、みんな衣装が本格的。

 

まぁ、こんな色の教会をバックに写真に撮りたくなるのは分かる。

 

 この旅行記を書くにあたって北門教会のことを調べていたら、2012年に撮影された写真では外壁が全く黄色くないことを知ってビックリ(こちらのページ)。色々塗装が剥がれてきてたのか、それともイメチェンを図ったのか。いずれにしても随分と思い切ったカラーリングにしましたねぇ。

 

 タンロン遺跡を左手に見ながら南下していくと、広い歩道でバドミントンらしきスポーツをしている地元の方々が。楽しそうだなぁ、そうか、今日は日曜だから仕事休みなのか、日曜夕方の一コマなのかな、と思って横を通り過ぎると、よく見たらコートが歩道にしっかり描いてある。更に進んでいくと、そのコートが2つ3つと続いていき、ちょっとした屋外スポーツセンターのようになっていた。こういう光景も好きだなぁ。日本ではなかなか見られないなぁ。

 

ちゃんとネットまで張ってあって本格的。左側の建造物は恐らく城壁の一部。

 

 バドミントン通りを更に南に歩いていくと、右手(西側)には国会議事堂らしき建物が見えたりして、どうやらこの辺りがベトナムの国家中枢機能を果たしているらしい。この更に西側まで足を運ぶとホーチミン廟やホーチミンの家、ホーチミン博物館など、元国家出席ホーチミンに所縁ある観光スポットがあるのだが、もう夕方で閉まっているので(そしてそろそろ歩くの疲れてきたので)、予定通り、タンロン遺跡の南端まで辿り着いたら旧市街地の方へ戻ります。

 

国会議事堂と何かの記念碑。

 

思わず写真に撮ったバイク。

後ろに子供用ゴーカート積んでる!

しかも2つ!

1812年に建てられた国旗掲揚塔。

当時はハノイ城の監視塔だったとか。

塔の中は上れるらしいです。

 

遺跡の南側にあるレーニン像。

 

 レーニン像の周りは公園になってて、子供たちの一大カート遊び場になっていた。しかもレーニンさんの足元まで上って遊んでる子供がいたりして、何だか微笑ましい光景。なぜゆえベトナムにレーニン? と思ったら、単に他の社会主義国に倣ってレーニン像を建てただけで、別に大した意味はないという話。そりゃ子供も上って遊びますわな。

 

 

 更に旧市街地の方に向かっていくと、あるところを境に、それまで都市っぽい大通りだったのが突然ゴミゴミし始めて、なるほど、ここが新市街と旧市街の実質的な境界なのかというのがはっきり分かって面白い。そしてその境を過ぎると今回の午後散歩の目的の一つ、トレイン・ストリートが見えてきた。トレイン・ストリートとは、線路脇スレスレに民家やお店が並んでいて、電車が通る時の迫力と写真映えっぷりが話題となっているスポットだ("train street hanoi" で検索すると写真がいっぱい出てくる)。地元の人達やお店のお客さんが線路を道路のように使っているのでトレイン・ストリートと呼ばれていると思われる。

 

一見すると道路を線路が横切っているだけだが、その左右に目を向けると…

 

線路の横を小さい子供が歩いてたり、

自転車で走っていく人が。

こちらはカフェの客らしき人が座ってたり、

線路を横切る人がいたり。

 

 本当は電車が通り過ぎるシーンを見たいところだが、こちらもそんなに本数がない区間なので、ちょっと線路の中に入って写真を撮ろうと思ってたら、またしてもお巡りさんが「線路に入らないで」と注意してきた。マジっすか。ダメっすか。全般的に線路に立ち入るのが厳しくなってるんだろうか。でもカフェに入ってる人はいるので、お店に行くのならOKなんだろうか。と思って調べてみたら、この年の10月から立ち入り禁止になったというニュースを発見。あちゃー、僅差だったか−。よくよく写真を見返してみると、右側の写真に "DANGEROUS AREA" とある看板が掲げてあり、線路に座ったり写真や動画を撮るでないと注意書きが。この看板、以前はなかったみたいなので、本格的に線路立ち入りを取り締まるようにしているんだろう。それも仕方がないことだとは思うが、その前に無秩序に道路を走るバイクを取り締まった方が安全対策になると思うのだが...

 

 これで予定していた場所は全て行ったので、マグネットのお土産を買ったりしながらホテルへ戻る。と言っても空港に向かう時間までまだ4時間近くあるので、更に時間を潰すべくホテルのルーフトップバーへ。ここからの夜景がオススメという話だったので、せっかく泊まったホテルなんだからと行ってみたら、ちょうどホアンキエム湖を望むカウンター席が空いていて、夕暮れから暗くなるまでのハノイの夜景をゆったり堪能することができた。店員さんも気さくに話しかけてくれたりして、いい雰囲気の空間だ。

 

ホアンキエム湖の夕暮れ。まぁ、正直そこまでの夜景ではないが…

 

バーカウンターのオシャレ感。

なんとなく、カウンターのランプ。

 

 上の写真のランプは自分が座っていたカウンターにあったのだが、この写真をよく見てもらうと、カウンターの向こう側の柵が低いのが分かるだろうか。多分、視界を遮らないために低くしてるんだと思うが、これが結構怖くて、風が吹く度にナプキン飛んでっちゃうんじゃないかとか、グラスが倒れて落ちたりしないだろうかとかドキドキ。ルーフトップバーなんて行ったことないから分からないんだけど、これくらいの低さが標準?

 

 1時間くらいバーでゆっくりしている間、よくよくホアンキエム湖の向こう側を眺めていると、何やら他の建物より明るくて目立つ照明を発見した。コレなんだろう? と思って写真を拡大したり地図で調べたりしたら、ハノイ大教会であることが判明。そうか。夜はライトアップしてるのか。というわけで、せっかくなので大教会のライトアップを見に行ったら、それはそれは、どこぞのアミューズメントパークかっていうくらい派手派手になっていた。とても俗世界っぽい。そして相変わらず人が多いのだが、どうやらミサの時間だったらしく、ミサというちゃんとした目的で訪れた人たちが教会の外にまで溢れていた。なんだろう、この俗世界と信心深さの謎のミックス。

 

メリーゴーランドがあっても驚かない風景。

 

教会の前に溢れる信心深い人たちと、

飛んでいく星のイルミネーションのギャップ。

 

 教会の後は、昨日と同じくナイトマーケットを通ってホテルまで戻ることに。とは言っても、まだ19時前で露店が始まるか始まらないかくらいのタイミングだったので、最初はそんなに明かりもついておらず、段々とマーケット全体の調子が上がっていく感じだ。せっかくなので記念に何か買おうかなという計画だったのだが、いざ買おうと思っていると、これがなかなか買う気にならないというか、わざわざ買うほどのものでもないか…と思ってしまう哀しさ。冷静に考えたら、わざわざ買うほどのものなんてナイトマーケットで売ってないのに。

 

手前のおじちゃんが売ってるミニノンラーでも買えばよかったかな。

 

 そのまま何となく北の方のマーケットまで歩いていったらドンスアン市場の辺りまで来たので(ナイトマーケットのほぼ北端)、ぼちぼちホテルの方へ。帰り道、まだ通ったところがない道を通ってみたら、こんな暗い道あったのかっていうような裏道や、観光客向けのバーが多く並んでる通りがあって、ナイトマーケットとはまた違う雰囲気だった。

 

開店直後なのか、準備万端のお風呂椅子。

これからお客さんで埋め尽くされるのね。

 

 ホテルに戻った後はロビーでゆっくりしたり、ホテルの外の夜景を撮影しに出たり。実質たったの1日半しかハノイにいなかったのに、密度が濃かったからか、ハノイの街のエネルギーの成せる業なのか、名残惜しさが想像以上だった。そして21時頃になったらタクシーに乗って空港へ。このタクシーも宿泊パッケージに含まれているのだが、タクシーがホテルの前まで来られないということで、ホテルのチーフの人がピックアップの場所まで連れて行ってうくれる。そしてホテルを出る時はレセプションのスタッフ総動員で見送りをしてくれて、チーフの人は別れ際に甘納豆みたいなドライフルーツをくれて、一粒食べるごとに私達のことを思い出してくださいと。なんという、おもてなしの精神!今度ハノイに来たらまた泊まります!

 

 

 空港までのタクシーの運転手さんはベテランなのか、カオスに走る多人数乗りバイク達の間をすり抜けるように、そしてほとんど速度を落とさずに自由自在に車線変更していくので、ちょっとドキドキであった。これくらいのドライビングテクニックがないとハノイでタクシー運転手なんてやっていけないのかも。

 

 空港に着いたら、なんかターミナルの外まですごい人だかりで、こんなに飛行機に大勢乗るって一体何のツアー? と思ったら、どうやらタイでは旅に出る時、家族やら親戚やら友人やら総出で見送りに来る習慣らしく、その人だかりだった模様。人情に熱い国だなぁ。

 

夜の9時半とは思えない賑わいのターミナル。

 

 チェックインしたら、すぐに出国して手荷物検査を受けて(出国も手荷物検査も長蛇の列で結構時間かかった)、免税店で撒き物系のお土産を買った後、ラウンジで1時間ほどダラダラしてから、ようやく搭乗へ。

 

 帰りもビジネスクラスだったのだが、行きとは違う機材で、大きめのバックパックも置ける足元の広さが素敵。とは言え、行きと同じく5時間くらいしか乗らないんだよなぁ。もうちょっとこの広さを堪能したい・・・ 離陸したのが0時半頃と遅かったので、シートベルトサインが消えたらすぐにフルフラットにして睡眠モードに。でも2時間ほど寝たところで、もう機内食。ベトナム時間で夜中の2時半頃、日本時間だと4時半頃である。これは夕飯なのか夜食なのか、それとも朝食なのか。

 

3日ぶりの日本食。ベトナム料理も美味しかったけど、久々の和食はやはり嬉しい。

 

→ 5日目