第79回/2006年度アカデミー賞ノミネーション

 

■ 作品賞     ■ 監督賞     ■ 主演男優賞     ■ 主演女優賞     ■ 助演男優賞     ■ 助演女優賞

 

           

 

監督賞

 

監督として確かな実力がある5人が揃った監督賞。

ベテラン3人と新鋭2人の戦い、

もしくはアメリカ人2人にイギリス人2人、そして異色のメキシコ人1人の戦い。

けれどもやっぱり見所はスコセッシ V.S. イーストウッドですな。

 

 

 

 

Clint Eastwood : LETTERS FROM IWO JIMA / 『硫黄島からの手紙』

 

 この4年間で3度目の監督賞ノミネート。ハリウッドでのイーストウッド熱はまだ収まらないのだろうか。 まぁ、監督した戦争映画が立て続けに2本も公開されたのだから、 イーストウッド・ブランドの強さを考えるとノミネートは妥当なところかもしれない。 2作まとめての評価で受賞ということも考えられなくないが、 さすがにオスカー3個目はあげ過ぎでは? とオスカー会員も思うだろうし、 さすがに今年はスコセッシに軍配を上げさせたいと思うオスカー会員は多いだろう。 ということで、スコセッシ受賞のドラマの盛り上げ役ということで良いのでは。 ちなみに今年で77歳ということで、主演男優賞のピーター・オトゥールより年上。 この年齢でこれだけ精力的に映画を作り続けた近年の監督しての業績は賞賛に値するだろう。

 

# オスカーノミネート歴    '92 『許されざる者』 (作品、監督、主演)

'94 アービング・G・タルバーグ賞

'03 『ミスティック・リバー』(作品、監督)

'04 『ミリオンダラー・ベイビー』

               (作品、監督、主演)

 

 

 

Stephen Frears : THE QUEEN / 『クィーン』

 

 大好きな 『危険な関係』 の監督ということで御贔屓にしていたスティーブン・フリアーズだが、 この人がまだノミネート2回目!?と驚いてしまった。 去年のオスカーでジュディ・デンチがノミネートされた 『ヘンダーソン夫人の贈り物』 もそうだったように、 ドラマからコメディ、サスペンス、コスチュームものまでバラエティに富んだジャンルで、 これだけ一定のレベルで作品を世に送り出す監督もそういないだろう。 その地に足の着いた確かな演出力と、英国人監督であることを考えると、 元ダイアナ妃の事故死で揺れる英国王室の物語を描く本作の監督に、彼ほど相応しい人はいないかもしれない。 是非一度はオスカー像を手にして欲しいが、今年のスコセッシの前ではどうしてもインパクトに欠けてしまう。 また次回に期待ということで・・・・

 

# オスカーノミネート歴    '90 『グリフターズ 詐欺師たち』 (作品、監督)

 

 

 

Paul Greengrass : UNTIED 93 / 『ユナイテッド93』

 

 ベルリン映画祭で金獅子賞を受賞した 『ブラディ・サンデー』 で絶賛され、 マット・デイモン主演の大ヒット作の続編(『ボーン・スプレマシー』)の監督でもこれまた絶賛されたポール・グリーングラス。 その高い演出力を買われて、あの9・11事件を題材にした映画に大抜擢されたが、 エンターテインメントとしても成立しながら、あの事件に真摯に向き合う態度を一時も忘れずに作り上げた 『ユナイテッド93』 は見事な出来で、 作品賞にノミネートされないのが不思議なくらい。 今回の監督賞のメンツでは、唯一スコセッシ以外に前哨戦で栄冠に輝いているので、 理論的にはスコセッシのライバルとなるが、ハリウッドでの実績の少なさや、イギリス人監督であること、 そして何より作品賞候補になっていないことがマイナスポイントなため、現実的には受賞は厳しい模様。 これだけの演出力なら将来オスカーをもらうに値するので、是非それに期待ということで、 まずは次回作の 『THE BOURNE ULTIMATUM』 を楽しみにしたい。

 

【ロサンゼルス批評家協会賞、全米批評家協会賞受賞】

 

 

 

 

Alejandro González Iñárritu : BABEL / 『バベル』

 

 カンヌで批評家週間グランプリを獲得した長編デビュー作の 『アモーレス・ペロス』 で一躍注目を浴びたアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。 名前を覚えるのも発音するのも大変だが、 続く長編2作の 『21グラム』 も好評価で、3作目の 『バベル』 で見事にオスカーノミネート。 3作とも、交錯するいつくかのストーリーを手際良くまとめてサスペンスとして見せながら、 その中で人間の 「業」 を浮かび上がらせる演出は確かに評価されるべきで、 ノミネートも納得。個人的には、前2作は演出に力が入り過ぎていて観てて疲れるのだが、 まぁ、それだけの勢いがあるのは良いことだ。 受賞に関しては、 これまで英語圏以外の外国人での監督賞受賞がベルナルド・ベルトルッチしかいない事実から考えると、 メキシコ人であることが大きくマイナス。オスカーを貰うなら、スペイン語で映画を撮って外国語映画賞の方が現実的だ。

【カンヌ国際映画祭監督賞受賞】

 

 

 

 

Martin Scorsese : THE DEPARTED / 『ディパーテッド』

 

 さぁ、スコセッシ悲願のオスカー受賞なるか! これが今年のアカデミー賞の山場の一つと言えよう。 これまで監督賞では6回ノミネートされるも何れも受賞ならず、 最近の2作では受賞本命などと騒がれていただけに、本人も受賞できなかったショックは大きかったはず。 個人的には 『ディパーテッド』 の出来で受賞? と思わないでもないが、 全米では 『グッドフェローズ』 以来のスコセッシ最高傑作と絶賛されているし、前哨戦はほぼ制覇しているだけに、 何とか今年獲っておきたいところ。しかし、今年もスコセッシと一緒にイーストウッドがノミネート。 2年前の悲劇再びか!?と誰もが危惧してしまうが、前哨戦を見る限りはその心配はさすがになさそう。 とは言え、最近のヒラリー・スワンク VS アネット・ベニングの例(2回2人同時にノミネートされ、どちらも2人とも本命で、どちらもスワンク受賞)もあるので、 オスカー・ジンクスの呪いから何とか逃れて欲しいところだ。

 

【ゴールデングローブ賞、ニューヨーク批評家協会賞、

ワシントンDC批評家協会賞、ボストン批評家協会賞、

ブロードキャスト批評家協会賞、ナショナル・ボード・オブ・レビュー受賞】

 

# オスカーノミネート歴    '80 『レイジング・ブル』 (監督)

'88 『最後の誘惑』(監督)

'90 『グッドフェローズ』(監督、脚色)

'93 『エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事』

                     (監督、脚色)

'02 『ギャング・オブ・ニューヨーク』(監督)

'04 『アビエイター』(監督)

 

 

 

期待 : ポール・グリーングラス

予想 : マーティン・スコセッシ

 

『ディパーテッド』 より 『ユナイテッド93』 の方が演出的にも作品的にも確実に上。

とは言え、今年はスコセッシの年。

アカデミー賞ですから。

ハリウッドのお祭りですから。