第81回/2008年度アカデミー賞ノミネーション
■ 作品賞 ■ 監督賞 ■ 主演男優賞 ■ 主演女優賞 ■ 助演男優賞 ■ 助演女優賞
主演男優賞
前哨戦の結果からするとペンとロークの一騎打ち。
2度目の主演男優賞受賞となるか、
奇跡のカムバック受賞となるか。
ベテラン2人の存在も不気味です。
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Richard Jenkins : THE VISITOR / 『扉をたたく人』
どちらかという脇役、それもあまりアクの強くない脇役のイメージが強いリチャード・ジェンキンスだが、 『THE STATION AGENT』 のトーマス・マッカーシー監督の第2作でジェンキンスが演じるのは、 妻と死に別れ、以来何事にも心を打ち込めずに日々を送る大学教授。そんな彼が自分のアパートを訪れる 「ヴィジター」 たちと触れ合うことで、 次第に彼の中で変化が起こってくるというストーリーなのだが、 そんな主人公の内面の変化を微妙な表情で演じるジェンキンスの演技は公開当時から絶賛されており、 公開されたのが4月というハンデを乗り越えて、初のオスカーノミネートとなった。 しかも主演ということで、名脇役がこうやって評価されるのは嬉しい。 今年はコーエン兄弟の新作、『バーン・アフター・リーディング』 にも出ているし、 功労賞的な意味でも票が集まってもおかしくないが、 同じようなスタンスでノミネートされたフランク・ランジェラの存在がネック。 ランジェラの方は対象作が作品賞候補なので、どちらかと言えばランジェラに票が集まりそう。
Frank Langella : FROST/NIXON / 『フロスト×ニクソン』
昨年は 『STARTING OUT IN THE EVENING』 の主演男優賞候補、 2005年は 『グッドナイト、グッドラック』 での助演男優賞候補が期待されたものの、惜しくもノミネートを逃したランジェラが、 71歳にしてとうとう初のオスカーノミネートだ。芸歴40年以上のベテランの初ノミネート、 演じるのは元アメリカ大統領のリチャード・ニクソンという注目度の高い実在の人物、 監督はロン・ハワード、作品自体も作品賞候補になるほどの評価の高さなどなど、受賞するのに充分な材料が揃っている。 前哨戦ではショーン・ペンとミッキー・ロークが火花を散らしているが、 ペンの2度目の受賞に気が進まない人や、ロークの悪ガキっぷりに抵抗がある人はこぞってランジェラに投票するはずで、 ここはサプライズがあってもいいのでは。こういうサプライズなら大歓迎だ。
Sean Penn : MILK / 『ミルク』
『ミスティック・リバー』 で授賞式に出席してからは随分大人しくなったショーン・ペン。 ロビン・ライト・ペンと離婚しそうだとか結局しないだとか、私生活の方では色々あったが、 俳優としては相変わらずいい仕事をしているようで、 本作ではアメリカで初めてゲイであることをオープンにして公職に当選したというサンフランシスコ市会議員のハーヴェイ・ミルクを演じる。 予告編で観る限りでは、ショーン・ペンお得意の入り込み演技ではないのだが、 当選して1年で射殺されたという事件性や、自らもゲイであるガス・ヴァン・サントの演出の妙もあって、 気がつけば前哨戦の大半を制覇。ゴールデングローブ賞こそ逃したが、ブロードキャスト、SAGの受賞で勢いをつけ、 2度目のオスカー受賞も現実的になってきた。 受賞すればダスティン・ホフマンやダニエル・デイ=ルイス、トム・ハンクスと言った面々の仲間入りだが、 果たしてアカデミー賞は、前回の受賞からたった4年のブランクでペンにオスカーをあげるのか。
【全米俳優組合賞、全米批評家協会賞、ロサンゼルス批評家協会賞、 ニューヨーク批評家協会賞、ボストン批評家協会賞、サンフランシスコ批評家協会賞、 ブロードキャスト批評家協会賞受賞】
# オスカーノミネート歴 '95 『デッドマン・ウォーキング』 (主演) '99 『ギター弾きの恋』 (主演) '01 『アイ・アム・サム』 (主演) '03 『ミスティック・リバー』 (主演)
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Brad Pitt : THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON / 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
『セブン』、『ファイト・クラブ』 に続いてデヴィッド・フィンチャー監督と3度目のタッグとなったブラッド・ピット。 フィンチャー監督はピットが余程お気に入りのようだが、決して演技が上手いとは言えないピットがオスカー候補になったのだから、 フィンチャー監督の見る目は間違っていなかったということか。 映画を観た限り、これでオスカーノミネートとは、作品の力に随分後押しされたのでは・・・・と思わないでもないが、 ちょっとイッちゃってる役以外では一度も上手いと思ったことがなかったピットが、これだけ自然に見えたのは確かに初めて。 それに、生まれてから次第に若返っていく主人公のベンジャミンが20代にまで若返った時に見せる若さ、美しさ、そしてその儚さは、 今のハリウッドではピットにしか出せない雰囲気だろう(もちろんCGの力も大きいが)。 『L.A.コンフィデンシャル』 のキム・ベイシンガーのように、演技云々よりその雰囲気が評価されてオスカーを受賞した例もあるので、 ピットの受賞があっても理論的にはおかしくない。ただし、これまであまり演技力とは無縁だったハリウッド・スターに突然オスカーというシナリオは考えにくい。 受賞すればアンジェリーナ・ジョリーと共にオスカー・カップルの誕生だ。
# オスカーノミネート歴 '95 『12モンキーズ』 (助演)
Mickey Rourke : THE WRESTLER / 『レスラー』
80年代はセックス・シンボルとして大人気だったものの、 90年代にはボクシングへ転向した挙句に 「猫パンチ」 などと揶揄され、整形手術にも失敗、再婚した妻は薬物中毒と、 イメージダウンしまくりだったミッキー・ローク。 そんな彼が主演した 『レスラー』 がヴェネチア映画祭で上映されるや、ロークの演技には大喝采が飛んだという。 それもそのはず。ロークが演じたのは80年代に人気を誇るも、今では落ちぶれた孤独なレスラーという、 まるで自らの人生を鏡に映したような役柄だ。大好きなダーレン・アロノフスキー監督がロークを起用したと聞いたときは驚いたが、 なるほど、確かにこの役をロークほどのリアリティをもって演じられる俳優はいないかもしれない。 そしてゴールデングローブ賞を初めとした前哨戦を受賞し、ついにはオスカーノミネートと、完全復活のローク。 まだまだ保守的なアカデミー賞なので、いまだ悪ガキのイメージが強いロークに投票するのを躊躇う人もいるだろうが、 逆に全盛期、そして不遇の時代のロークを知っているハリウッドだからこそ、この完全復活に投票したくなる人もいるだろう。 SAGを受賞できなかったのは痛いが、まだ望みはある!
【ゴールデングローブ賞、ワシントンDC批評家協会賞、ボストン批評家協会賞、 サンフランシスコ批評家協会賞、シカゴ批評家協会賞受賞】
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期待 : フランク・ランジェラ 予想 : ミッキー・ローク |
ショーン・ペンに2つ目のオスカーはあげ過ぎの気もするし、
アカデミー賞がハリウッドの悪ガキを評価するのもちょっと違う気がするし・・・
ここはベテラン俳優が受賞すれば文句はないと思うのだが。