第81回/2008年度アカデミー賞ノミネーション

 

■ 作品賞     ■ 監督賞     ■ 主演男優賞     ■ 主演女優賞     ■ 助演男優賞     ■ 助演女優賞

 

           

 

主演女優賞

 

若手女優からベテランまで、もしくはハリウッドスターからインディーズ女優までと、

華やか、かつバリエーションに富んだ今年の主演女優賞だが、

受賞争いは 『プラダを着た悪魔』 コンビの対決とケイト・ウィンスレット。

それにしても、なぜケイト・ブランシェットが候補にならなかったのか・・・

 

 

 

 

Anne Hathaway : RACHEL GETTING MARRIED

/ 『レイチェルの結婚』

 

 『プリティ・プリンセス』 や 『プラダを着た悪魔』 のアン・ハサウェイがオスカーにノミネートされるとは、 本当に世の中分からない。しかもジョナサン・デミ監督はハサウェイのことが気になっていて、 初めから彼女を想定してこの映画を撮ることにしていたとか。そんなデミ監督の目に狂いはなく、 ヴェネチア映画祭で本作が公開された時から既にハサウェイの演技は絶賛されており、 映画そのものよりハサウェイの演技が素晴らしいという声が次々と聞こえてくることに。 それってもしかして 「あの女優にこんなちゃんとした演技ができるのか」 的な称賛なんじゃないかと勘繰ってしまうが、 主演女優賞は演技の実力よりも華やかな顔ぶれが選ばれる傾向にあるので(少なくとも3年前までは)、 そんな勘繰りは受賞の妨げにはなるまい。しかし今年のライバルは、何を隠そうプラダを着た悪魔。 あの映画を観ればメリルとハサウェイの実力は歴然の差だし、 全米で最近公開されたケイト・ハドソン共演のコメディ、『BRIDE WARS』 の評判がイマイチというのも受賞の足を引っ張っている。 このパターンはエディ・マーフィーが 『ドリームガールズ』 でノミネートされた時に、 『マッド・ファット・ワイフ』 が公開されて大酷評されたのと似ていて、あの時もマーフィーは受賞できなかったっけ。

 

【シカゴ批評家協会賞、ブロードキャスト批評家協会賞、

ナショナル・ボード・オブ・レビュー受賞】

 

 

 

Anjelina Jolie : CHANGELING / 『チェンジリング』

 

 夫のブラッド・ピットと仲良くノミネートされて、今年のオスカーに華を添えること間違いナシのアンジー。 俳優夫婦が同時にアカデミー賞にノミネートされたのはもしかして初めてでは? しかし、そんなワイドショー的な見方をするのは失礼かもしれない。 『ウォンテッド』 や 『Mr.&Mrs.スミス』 のようなアクション女優として見られがちだが(そして実際に数少ないアクション女優の一人ではあるが)、 本格的なドラマではアクション映画と全く違う表情を見せてくれる、れっきとした実力派女優なのだ。 最近では 『グッド・シェパード』 でのマット・デイモンの妻役が良かったし、伊達にオスカー女優の肩書を持っていない。 昨年は 『マイティ・ハート』 でノミネート確実と思われていながら、まさかの候補落ちとなったが、 今年は御大クリント・イーストウッドのお眼鏡に適い、作品の注目度もあって2度目のノミネートだ。 映画は1928年に起こった実際の事件を題材に、警察内部の腐敗を描き出すイーストウッドらしい作品で、 アンジーは行方不明になった息子を返してほしいと願う母親役。 キャリア最高の演技を見せると専らの評判だ。ただし、2度目の受賞となるほどの前評判はない。 ここで2度目の受賞があったらオスカー的にはメリル・ストリープとアンジーが同格?

 

# オスカーノミネート歴    '99 『17歳のカルテ』 (助演)

 

 

 

Melissa Leo : FROZEN RIVER / 『フローズン・リバー』

 

 『21グラム』 でベニチオ・デル・トロの妻役が印象に残っていたメリッサ・レオ。 それ以降、日本では公開されていないような映画にしか出演していないので滅多に顔を観ることはなかったのだが、 地味な脇役が多かった彼女が主演でノミネートされたのは嬉しい限り(このパターン、ローラ・リニーが初めてノミネートされた時に似ている)。 『FROZEN RIVER』 のタイトルが指すのは、アメリカとカナダの国境にあるセント・ローレンス川。 クリスマス前の凍てつくセント・ローレンス川を越え、カナダからアメリカへ密入国しようとする人々を助けて何とかお金を稼ごうとする家族を描き、 その生活の厳しさのリアルな描写、スリリングな展開がサンダンス映画祭で絶賛された本作でレオが演じるのは、 2人の息子をギリギリの経済状態で養うシングルマザー。出演シーンではほとんどノーメイクで通し、 スリリングな展開の中でも子供を想う母親という役を見事に演じていると評判だ。 サプライズで受賞してくれたら嬉しい一人ではあるが、ノミネートされるかどうかというラインに立っていたと思われるので、 受賞はちょっと難しそう。ローラ・リニーのように、このノミネートで女優としての評価を確立できればヨシとするか。

 

 

 

 

Meryl Streep : DOUBT / 『ダウト あるカトリック学校で』

 

 これで通算15回目のオスカーノミネートとなった我らがメリル。 もはや彼女の記録を超えられる俳優は誕生しないのではないか。 しかし90年代以降のメリルのノミネートは、「メリル・ストリープだから」 という理由でノミネートされていたような軽い役が多く、 まさに 「役不足」 という言葉が相応しかった。 従って受賞を期待できるような役ではなかったのだが、 今回メリルが演じるのは、人間の猜疑心を突き詰めて描いた本作で、その猜疑心を体現し、作品のテーマをえぐり出す複雑で重要なキャラクター。 この役こそメリルの実力に相応しい。 劇中でフィリップ・シーモア・ホフマンと火花を散らすメリルの演技は、予告編を観る限り、泣く子も黙る迫力だ。 批評家協会賞のみならずSAGも受賞し、SAGでのスピーチやはしゃぎっぷりも好感度大で(ドレスくらいは買ってほしいが・・・・)今年こそ3度目のオスカーに王手をかけた。 2度の受賞歴がアカデミー会員の投票を遠ざけるかもしれないが、これだけの名女優が主演女優賞を1回しか受賞してないのも変な話。 『マンマ・ミーア!』 で素晴らしい歌声を聴かせてくれたのもプラスになるかもしれない。是非今年こそ!

 

【全米俳優組合賞、ワシントンDC批評家協会賞、ブロードキャスト批評家協会賞受賞】

 

# オスカーノミネート歴    '78 『ディア・ハンター』 (助演)

'79 『クレイマー、クレイマー』 (助演)

'81 『フランス軍中尉の女』 (主演)

'82 『ソフィーの選択』 (主演)

'83 『シルクウッド』(主演)

'85 『愛と哀しみの果て』(主演)

'87 『黄昏に燃えて』(主演)

'88 『クライ・イン・ザ・ダーク』(主演)

'90 『ハリウッドにくちづけ』(主演)

'95 『マディソン郡の橋』(主演)

'98 『母の眠り』(主演)

'99 『ミュージック・オブ・ハート』(主演)

'02 『アダプテーション』(助演)

'06 『プラダを着た悪魔』(主演)

 

 

 

Kate Winslet : THE READER / 『愛を読むひと』

 

 今年は 『レボリューショナリー・ロード』 に 『愛を読むひと』 と、 前哨戦を賑わせる2本の映画に出演しているウィンスレット。前哨戦では前者で主演、後者で助演というカテゴライズで、 オスカーでもダブルノミネートに期待がかかったが、蓋を開けてみると 『愛を読むひと』 の役で主演候補という番狂わせだ。 それってありうるのか。ていうか、ワインスタイン兄弟のオスカー戦略もここまで来たか。 それはともかく、これまでのアカデミー賞からの好かれぶりや、前哨戦後半の追い上げ、更にはゴールデングローブ賞で主演助演のダブル受賞という快挙と、 受賞してもおかしくない勢い。しかしそれも前哨戦のまま助演部門にカテゴライズされていれば、の話。 メリル・ストリープとアン・ハサウェイが火花を散らす主演部門で受賞する確率は、助演部門で候補になった場合と比べると随分下がる。 ワインスタイン兄弟のあからさまなオスカー戦略に反発を示す人はウィンスレットに投票しないだろうし。 『レボリューショナリー〜』 での迫真の演技も加味すれば十分受賞に値するのだが・・・

 

【全米俳優組合賞、ゴールデングローブ賞、シカゴ批評家協会賞、

ブロードキャスト批評家協会賞受賞】

 

 

# オスカーノミネート歴    '95 『いつか晴れた日に』 (助演)

'97 『タイタニック』 (主演)

'01 『アイリス』 (助演)

'04 『エターナル・サンシャイン』 (主演)

'06 『リトル・チルドレン』 (主演)

 

 

 

期待 : メリル・ストリープ

予想 : ケイト・ウィンスレット

 

アン・ハサウェイにオスカーをあげるようなアカデミー賞であってほしくないし、

ハサウェイにあげるくらいならウィンスレットに獲ってほしい。

いや、別にハサウェイが嫌いというワケではないんですが・・・