第86回/2013年度アカデミー賞ノミネーション

 

■ 作品賞     ■ 監督賞     ■ 主演男優賞     ■ 主演女優賞     ■ 助演男優賞     ■ 助演女優賞

 

 

主演男優賞

 

77歳のベテランに、ハリウッドを代表するスターたちと、

アカデミー賞らしい面々が並んだ主演男優賞。

功労賞的にベテランの手に渡る可能性もあるし、

作品の力でイジョフォーに行く可能性もあるが、やはり大本命はかつてのロマコメ・スター。

 

 

 

 

 

 

 

カンヌ映画祭男優賞受賞

NBOR

ロサンゼルス批評家協会賞

 

 

 

ゴールデングローブ賞

 

 

 

 

 

ワシントンDC批評家協会賞

シカゴ批評家協会賞

サンフランシスコ批評家協会賞

ボストン批評家協会賞

サウスイースタン批評家協会賞

 

全米俳優組合賞

ゴールデングローブ賞

ブロードキャスト批評家協会賞

デトロイト批評家協会賞

ラスベガス批評家協会賞

ダラス−フォートワース協会賞

 

 

 

Christian Bale : AMERICAN HUSTLE / 『アメリカン・ハッスル』

 

 激痩せしたり(『マシニスト』)歯を抜いたりと(『ザ・ファイター』)、作品ごとに身体を改造して役に臨むことで有名なクリスチャン・ベイルが、今度は太りまくってオスカーノミネート。『ダークナイト』 シリーズのブルース・ウェインとはとても思えない見た目はビックリだが、もちろんただ太るだけじゃなくて、やっぱり上手いからさすが。ただ、主要キャスト4人全員がオスカーノミネートを果たした本作でベイルが演じたキャラクターは、他の3人に比べるとインパクトに欠ける感は否めない(見た目のインパクトはあるけど)。5人の主演男優賞ノミニーの中で一人だけ受賞経験があるのも障害で、今年は高みの見物といったところ。

 

# オスカーノミネート歴  '10 『ザ・ファイター』 (助演)

 

 

 

Bruce Dern : NEBRASKA / 『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』

 

 実に35年ぶりに2度目のオスカーノミネートとなった御年77歳のブルース・ダーン。誰もが認めるハリウッドのベテランだが、カンヌで初披露されて絶賛された本作では、彼ほどの年季と風格がなければ作品が成り立たなかったであろう絶妙な演技と存在感を見せているという話(自分は未見)。個人的には大本命のマシュー・マコノヒーを差し置いて受賞するとすればこの人だと思うし、もしもサプライズで受賞したらスタンディング・オベーションで盛り上がると思う。とは言え、最近は前哨戦的に本命じゃないとベテランにも厳しいアカデミー賞なので(79回のピーター・オトゥールや80回のルビー・ディーなど)、逆転は厳しいのが実情。

 

# オスカーノミネート歴  '78 『帰郷』 (助演)

 

 

 

Leonardo DiCaprio : THE WOLF OF WALL STREET

/ 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

 

 去年は 『ジャンゴ 繋がれざる者』、2年前は 『J・エドガー』 でオスカーノミネートが期待されたものの、2年連続で辛酸を嘗めたディカプリオが、晴れて三年目の正直で7年ぶりのノミネート。ただでさえアカデミー賞に嫌われてそうな印象だったうえに、全米俳優組合賞には名前が挙がらず、ブロードキャストでもコメディ部門でしかノミネートされなかったので今年もダメかと思っていたのだが、どうやら 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』 自体がアカデミー賞に気に入られたようだ(ジョナ・ヒルのサプライズノミネートもあったし)。確かに、本作でディカプリオが見せる演技は、これまで演じたキャラクター以上にハイテンションで勢いがあり、まさに面目躍如。中盤、クスリでラリって大変なことになっちゃうシーンなんて、さすがの一言だ。今年はもう1本の主演作、『華麗なるギャツビー』 も美術賞、衣装デザイン賞にノミネートされているのもプラス。とは言え、残念ながら今年の5人の中では4番手5番手なので、オスカー像を持ち帰るのはまだまだ先になりそう。

 

# オスカーノミネート歴  '93 『ギルバート・グレイプ』 (助演)

'04 『アビエイター』 (主演)

'06 『ブラッド・ダイヤモンド』 (主演)

 

 

 

Chiwetel Ejiofor : 12 YEARS A SLAVE / 『それでも夜は明ける』

 

 マシュー・マコノヒーがオスカー主演男優賞の本命というのにもビックリだが、その対抗馬がキウェテル・イジョフォーというのもビックリ。正直、『ソルト』 ぐらいしか出演作は覚えていなくて、その存在を気にしたことがあまりなかったのだ。しかし、振り返ってみると映画デビュー作はスピルバーグの 『アミスタッド』 で、以降もスティーブン・フリアーズ、ウディ・アレン、まだ名が売れる前のトム・フーパー、ジョン・シングルトン、スパイク・リー、アルフォンソ・キュアロン、リドリー・スコットの作品に出演と、なかなかのキャリアである。元々イギリスでは名の知れた舞台俳優だったということで、今回のノミネートも不思議ではないのかもしれない。前哨戦前半ではマコノヒーと半々くらいの成績だったのだが、後半の3大前哨戦が全てマコノヒーの手に渡ってしまったので、実質的に受賞は難しそう。

 

 

 

Matthew McConaughey : DALLAS BUYERS CLUB

/ 『ダラス・バイヤーズクラブ』

 

 というわけで、今年の主演男優賞の本命はマシュー・マコノヒーだ。正直、マコノヒーがオスカーにノミネートされる日が来ようとは! しかも主演男優賞の本命だなんて! という感じだが、2011年の 『リンカーン弁護士』 以降、演じる役柄のチョイスは明らかに変わってきており、最早、ジェニファー・ロペスやケイト・ハドソン相手にしょーもないロマコメの主人公を演じてた頃のマコノヒーではないのだ。今回マコノヒーが演じるのは、1980年代にエイズを発症して余命30日と診断されながらも、アメリカで未承認の治療薬により回復し、その治療薬の密輸販売でアメリカのHIV患者を救った実在の人物。20kg以上の減量でこの役柄に臨んだマコノヒーの役者魂は賞賛に値するし、見た目の変化だけではなく、演じるキャラクターの魂が宿る演技を見せてくれたという意味でも見事だった。マコノヒー自身もキャリアを転換していくために自分が納得できる役柄を選ぶようになったとインタビューで答えていたが、その集大成とも言える本作の演技での受賞は誰もが納得するだろう。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』 にも数少ない出番ながらシーン・スティーラーとして登場しているのもプラス。

 

 

 

 

期待 : マシュー・マコノヒー

予想 : マシュー・マコノヒー

 

個人的にはディカプリオの受賞があってもいいと思うが、

ここはやはり三大前哨戦を制して勢いのあるマコノヒーでほぼ決まり。

ほんと、人生って分からないものである。