第87回/2014年度アカデミー賞ノミネーション

 

■ 作品賞     ■ 監督賞     ■ 主演男優賞     ■ 主演女優賞     ■ 助演男優賞     ■ 助演女優賞

 

 

作品賞

 

最大ノミネート枠は10作なので、後2作はノミネートされてもいいはずなのに、

『ゴーン・ガール』 や 『フォックスキャッチャー』 の名前がない不思議。

まぁノミネーションの規定がそうなってるから仕方ない。

受賞争い的には 『6才のボク〜』 と 『バードマン』 の一騎打ちだが、『グランド・ブダペスト〜』 も忘れちゃいけません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全米製作者組合賞

全米俳優組合賞

ダラス−フォートワース批評家協会賞

ラスベガス批評家協会賞

 

 

 

 

 

ゴールデングローブ賞

ブロードキャスト批評家協会賞

ニューヨーク批評家協会賞

ロサンゼルス批評家協会賞

ワシントンDC批評家協会賞

シカゴ批評家協会賞

サンフランシスコ批評家協会賞

ボストン批評家協会賞

デトロイト批評家協会賞

ゴールデングローブ賞

サウスイースタン批評家協会賞

 

 

 

 

 

 

 

          

 

 

 

 

AMERICAN SNIPER / 『アメリカン・スナイパー』

作品、主演男優、脚色、編集、音響編集、音響効果賞、計6部門ノミネート

 アカデミー賞のノミネーション発表の時、作品賞候補の最初に名前を読み上げられたのが本作で、いきなり驚いた。なぜって、前哨戦では 『アメリカン・スナイパー』 の名前を見ることがそんなになかったから。これもやはりイーストウッド・パワーと言ったところか。しかも、ノミネート発表の週に公開されるや3週連続で興行収入トップを記録し、イーストウッド作品としても戦争映画としても最大のヒット作となるというサプライズも。イラク戦争に4度従軍し、米軍史上最多の160人を狙撃したとされる実在のスナイパーを英雄視するような演出はいかがなのものかという批判もあるようだが、イーストウッドのことだから、そう簡単な演出に終わってることはないだろう。オスカー的にはノミネート枠滑り込み作品なので、作品賞受賞はないだろうが、戦争映画のリアリティに大きく貢献する音響編集賞や音響効果賞の受賞はありえそう。

 

 

BIRDMAN or (the Unexpected Virtue of Ignorance) / 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

作品、監督、主演男優、助演男優、助演女優、脚本、撮影、音響編集、音響効果賞、計9部門ノミネート

 あのアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥがコメディ!?と、製作発表当初は誰もが意外に感じた組み合わせだったが、蓋を開けてみれば絶賛の嵐で、今年のオスカーの最多ノミネート作品となった。かつてバードマンというヒーロー映画で一世を風靡したものの現在は落ちぶれたスター俳優が、再起をかけて舞台に挑戦するうちに、バードマンとしての自分と現実の自分の間を彷徨うになるという奇想天外なストーリーは、確かに群像劇を得意とするイニャリトゥならではの演出の妙が活きていても不思議ではない。前哨戦では 『6才のボク〜』 に差をつけられて2番手に位置していたが、最後の最後で全米製作者組合賞(PGA)を受賞し、オスカー受賞の可能性も見えてきた。ただしPGAは必ずしもオスカー作品賞との直結度は高くなく、2005年、2006年、2007年は3年連続でオスカーと異なる作品を選出している。裏を返せば過去7年間は直結しているとも言えるので(ただし昨年のPGAが2作品タイ)、どっちに転んでもおかしくないところ。他の部門では監督賞、主演男優賞、撮影賞が有力で、脚本、音響編集、音響効果の受賞もありえそう。

 

 

 

BOYHOOD / 『6才のボクが、大人になるまで。』

作品、監督、助演男優、助演女優、脚本、編集、6部門ノミネート

 6才の少年が18歳になるまでの12年間を、実際に12年の年月をかけて撮影し、その間、同じ俳優が同じ役を12年間演じるという前代未聞の 『6才のボクが、大人になるまで』。その企画だけでも十分すごいが、決してアイディアだけに終わらずに、登場人物全員の12年という月日を感じさせる稀有な作品になっており、今年のオスカー本命に相応しい一本と言える。PGAの受賞を逃がしたのでガチガチの本命とは言えないが、前哨戦をひた走ってきた実績は決して無視できない。ただし、前哨戦を制覇してきたのにPGAもDGAも対抗馬に持っていかれるというパターンは4年前の 『ソーシャル・ネットワーク』 を彷彿とさせ、嫌な予感がプンプン。もし作品賞を受賞しても、他に受賞するのが助演女優賞しかないというパターンもありえるので、そなるとオスカー史上、受賞数が最少のオスカー作品賞が誕生することになる。ちなみに、本作は元々 『12 Years』 のタイトルになる予定だったのが、昨年のオスカー受賞作である 『それでも夜は明ける(原題:12 Years a Slave)』 と混同されるということで 『Boyhood』 のタイトルになった経緯があったそうな。

 

 

THE GRAND BUDAPEST HOTEL / 『グランド・ブダペスト・ホテル』

作品、監督、脚本、編集、撮影、作曲、美術、衣裳デザイン、メイクアップ・ヘアスタイリング賞、計9部門ノミネート

 とうとうウェス・アンダーソン作品が初のオスカー作品賞ノミネートを勝ち取った。しかも 『バードマン』 と並んで最多部門ノミネートである。決して作品賞本命ではないが、『6才のボク〜』 と 『バードマン』 に次ぐ3番手に位置しており、本作を含めた過去の作品のオールスターキャストっぷりからも業界内での人気は高いはずなので、万が一のサプライズがあるとすれば本作だ。仮に作品賞と監督賞は厳しくても、絶妙なユーモアでキャストの魅力を引き出した脚本や、ダブルノミネートとなった売れっ子アレクサンドル・デスプラの作曲賞、そしてアンダーソン作品の最大の肝とも言える美術、衣装デザイン、メイクアップ・ヘアスタイリングでの受賞は十分ありうる。今年のオスカーで最多部門受賞作品になる可能性も。

 

 

 

THE IMITATION GAME / 『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』

作品、監督、主演男優、助演女優、脚色、編集、作曲、美術賞、計8部門ノミネート

 第二次世界大戦中に解読不能と言われた敵国ドイツの暗号 「エニグマ」 を解読し、連合軍の勝利に大きく寄与したものの、同性愛者という理由で逮捕され、生涯その功績が称えられることはなかった英国の天才数学者アラン・チューリングの半生を描いた本作。初披露されたトロント映画祭では観客賞を受賞し、近年の同賞受賞作品の例に洩れず、オスカー作品賞にノミネートされた。どの部門も2番手以降の立ち位置なので、下手すると無冠のまま授賞式が終わってしまう可能性もあるが、望みがあるとすれば脚色賞(全米脚本家組合賞受賞)と美術賞、そしてダブルノミネートとなったアレクサンドル・デスプラの作曲賞あたり。

 

 

 

SELMA / 『グローリー 明日への行進』

作品、主題歌賞、計2部門ノミネート

 マーティン・ルーサー・キング・ジュニアによるモンゴメリーへの行進を描いた歴史ドラマが、『NIGHTCRAWLER』 や 『ゴーン・ガール』、そして 『フォックスキャッチャー』 と言った強豪作品を退けて作品賞にノミネート。昨年の 『それでも夜は明ける』 に続き、黒人差別というアメリカの歴史の暗部を描き出した作品はアカデミー賞的に無視できないということか。その割には、有力視されていたデヴィッド・オイェロウォの主演男優賞や、エイヴァ・ドュヴァーネイの監督賞ノミネートはならず、結果的に作品賞と主題歌賞のみのノミネートという寂しい結果に。実質的に受賞争いに絡んでくるのは主題歌賞のみだが、今年の同部門は、長編アニメ映画部門になぜかノミネートされなかったことで主題歌賞に票が流れそうな 『LEGOムービー』 や、 『ONCE ダブリンの街角で』(2007年度主題歌賞受賞) のジョン・カーニーが監督した音楽映画 『はじまりのうた』 という強豪がひしめいており、無冠のまま終わる可能性も。

 

 

 

THE THEORY OF EVERYTHING / 『博士と彼女のセオリー』

作品、主演男優、主演女優、脚色、作曲賞、計5部門ノミネート

 誰もが知っている車椅子の物理学者、スティーヴン・ホーキングが難病ALSを発症する頃の若き日を、その妻ジェーンとのラブストーリーとして描いた本作。『イミテーション・ゲーム』 と同じくトロント映画祭で絶賛され、アカデミー賞でも見事5部門にノミネートされた。作品賞と主演女優賞の受賞はまずないが、エディ・レッドメインの主演男優賞、どの作品が受賞してもおかしくないほど有力作がしのぎを削る脚色賞、そしてゴールデングローブ賞を受賞したヨハン・ヨハンソンの作曲賞には期待がかかる。ヨハン・ヨハンソンは 『フォックキャッチャー』 にも楽曲を提供しており、ダブルノミネートのアレクサンドル・デスプラに票割れが起きた場合、作曲賞を受賞するのはこの人。

 

 

 

WHIPLASH / 『セッション』

作品、助演男優、脚色、編集、音響効果賞、計5部門ノミネート

 まだ30歳の新鋭デミアン・チェゼルが監督、脚本を手がけ(撮影当時は20代)、昨年のサンダンス映画祭で観客賞とグランプリを受賞した異色の音楽ドラマ(と呼んでいいのか?)がアカデミー賞にノミネート。チェゼル自身も(監督賞には惜しくもノミネートされなかったが)脚色賞にノミネートされ、一躍期待の若手となった。話題作への出演が続くマイルズ・テラー主演というのもポイントだが、オスカー的に注目が集まるのは、助演男優賞受賞がほぼ確実なJ・K・シモンズの圧倒的と称される演技。ドラムサウンドが効果的にドラマを盛り上げるだけに、音響効果賞の受賞もあるか。

 

 

 

 

期待 : 『バードマン』

予想 : 『6才のボクが、大人になるまで。』

 

全米製作者組合賞受賞で 『バードマン』 の勢いもついてきているが、

監督賞がイニャリトゥに行きつつ、作品賞はやはり 『6才のボク〜』 が強いのではないかと予想。

漁夫の利を狙う 『グランド・ブダペスト・ホテル』 が受賞というサプライズも面白そう。