第87回/2014年度アカデミー賞ノミネーション

 

■ 作品賞     ■ 監督賞     ■ 主演男優賞     ■ 主演女優賞     ■ 助演男優賞     ■ 助演女優賞

 

 

主演男優賞

 

重要3賞全てにノミネートされていたジェイク・ジレンホールの名前がないという、

超残念なサプライズが待っていた主演男優賞のノミネーション発表だったのだが、

蓋を開けてみると候補者5人のうち実に4人が実在の人物を演じており、「これぞアカデミー賞」 的なセレクト。

大本命と思われていたのは残り1人のキートンだったのだが、終盤のレッドメインの追い上げはオスカーにも及ぶか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴールデングローブ賞

ブロードキャスト評家協会賞

NBOR

ワシントンDC批評家協会賞

シカゴ批評家協会賞

ボストン批評家協会賞

サンフランシスコ批評家協会賞

ダラス−フォートワース協会賞

デトロイト批評家協会賞

ラスベガス批評家協会賞

サウスイースタン批評家協会賞

ゴールデングローブ賞

全米俳優組合賞

英国アカデミー賞

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Steve Carell : FOXCATCHER / 『フォックスキャッチャー』

 

 オリンピックのレスリング金メダリスト、デイヴ・シュルツ銃殺事件を映画化した本作でスティーブ・カレルが演じるのは、オリンピックチームのコーチにして、デイヴを殺害した本人である財閥御曹司のジョン・デュポン。特殊メイクのおかげもあるが、普段のコミカルな演技からは想像もできないくらい不気味で得体の知れないキャラクターを演じており、一体誰がこの役にカレルを起用しようと思ったのかというくらい見事な変わりよう。この手の変身演技はアカデミー賞に受けがよいことも考えると、当然のノミネートと言えよう。前哨戦の成績からは、オスカーにノミネートされるかどうかギリギリというところだったので、受賞にこぎつけるのは厳しいが、コメディ出身の俳優に厳しいアカデミー賞を納得させただけでも今回のノミネートは十分な価値アリ。

 

 

 

Bradley Cooper : AMRICAN SNIPER / 『アメリカン・スナイパー』

 

 前哨戦では殆ど名前が挙がっていなかったにもかかわらず、作品ともども突然オスカーノミネートで殴り込みをかけてきたブラッドリー・クーパー。代わりに涙を飲んだのがジェイク・ジレンホールというのが個人的には悲しいが、これでクーパーは3年連続アカデミー賞ノミネートとなり、しかもその3作全てが作品賞にノミネートされ、名実共に実力派俳優として認められたと言えよう。演じるのは、イラク戦争に4度従軍し、米軍史上最多の人数を狙撃したと言われる実在のネイビー・シールズ元隊員。18kgの大幅な増量で実在の人物に挑むというアプローチは確かにアカデミー賞好みだが、そのカテゴリーではエディ・レッドメインに先を越されている感アリで、今年も受賞はお預けとなりそう。どうでもいいデータだが、3年連続オスカーにノミネートされたのは2001〜2003年のレニー・ゼルウィガー以来で、レニーとブラッドリーは元恋人同士。

 

# オスカーノミネート歴

'12 『世界にひとつのプレイブック』 (主演)

'13 『アメリカン・ハッスル』 (助演)

 

 

 

Benedict Cumberbatch : THE IMITATION GAME

/ 『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』

 

 英国TVドラマの 『シャーロック』 でシャーロック・ホームズを演じ、ここ数年で日本でも人気沸騰中のベネディクト・カンバーバッチ。映画界でも、2013年は出演作の 『それでも夜は明ける』 がオスカー作品賞を受賞、悪役を演じた 『スター・トレック イントゥ・ダークネス』 や、ドラゴンの声を担当した 『ホビット 竜に奪われた王国』 が大ヒットと、キャリア絶好調である。それを考えると今回の初ノミネートも納得だ。演じるのは、第二次世界大戦中に解読不能と言われていたドイツ軍の暗号 「エニグマ」 を解読し、連合軍の勝利に貢献したにもかかわらず、同性愛者という理由で逮捕されて英国政府に犯罪者として扱われた実在の数学者、アラン・チューリング。これまたアカデミー賞好みのキャラクターだし、予告編を観る限り、カンバーバッチの熱演は一見の価値がありそう。ただし、同じ英国出身俳優では 『ブーリン家の姉妹』 で共演したエディ・レッドメンの方がオスカー像には近そうで、受賞は三番手くらい。ちなみに、昨年の授賞式では様々なフォトボムで話題を提供してくれたカンバーバッチ。今年も楽しみです。

 

 

 

Michael Keaton

    : BIRDMAN or (the Unexpected Virtue of Ignorance)

/ 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

 

 初代バットマンことマイケル・キートンが、若かりし頃に 『バードマン』 というスーパーヒーロー映画に主演して一世を風靡したものの今では人気のない落ちぶれたハリウッド俳優という、自身とオーバーラップしまくるキャラクターを演じてアカデミー賞に初ノミネート。しかも、前哨戦をほぼ制覇して受賞本命である。いやー、まさかマイケル・キートンがアカデミー賞本命と言われる日が来るなんて、ホント人生って分からない。と言いたいところだが、前哨戦終盤の最重要賞であるSAGがエディ・レッドメインの手に渡り、ポール・トゥ・ウィンの展開に黄信号が灯り始めた(SAG主演男優賞の過去10年間のオスカー直結率は100%)。ハリウッドでのキャリアはレッドメインとは比べ物にならないほど長く、アカデミー賞が好きな功労賞や復活劇としての要素は十分なのだが、決して良作への出演が多いわけでもなく、これまで演技派としてあまり認識されていなさそうので、「マイケル・キートンにオスカー?」 という心情が会員に働いても不思議ではない。ちなみに、もしもキートンが受賞したら、歴代バットマン俳優でアカデミー賞を受賞していないのはヴァル・キルマーのみ。果たしてキルマーが受賞する日は・・・来なさそうだな。

 

 

 

Eddie Redmayne : THE THEORY OF EVERYTHING

/ 『博士と彼女のセオリー』

 

 『グッド・シェパード』 でマット・デイモンの息子を演じて以来、個人的にずっと気になっていたエディ・レッドメインが、早くも33歳にしてオスカーにノミネートされるとは嬉しい驚きである。ハリウッド的には、見事な美声を聴かせてくれた 『レ・ミゼラブル』 で本格的に認識され、人気実力ともに鰻上りのところで満を辞してのノミネートと言えよう。演じるのは、世界的に有名なスティーブン・ホーキング博士の若き日。ALSを発症し、体の麻痺が進行し始める前後のホーキング博士を、身体的にも内面的にも見事に演じていると専らの評判だ。前哨戦ではノミネート止まりだったので、まぁオスカーもノミネートされただけで十分かなと思っていたのだが、ゴールデングローブ賞ドラマ部門を受賞したのを皮切りに、SAG、そして英国アカデミー賞受賞と、本命マイケル・キートンに迫る怒涛の追い上げを終盤で見せている。イギリス人なので英国アカデミー賞受賞はさほどサプライズではないが、SAGまで受賞となると、俄かにオスカー受賞が現実味を帯びてきた。ALSという難病を患った実在の人物(しかも誰もが知っている!)というのも、アカデミー賞的には大好感。ただ、主演女優賞と違って主演男優賞は若手に厳しいので、33歳で受賞はちと早いか? マリウスの歌声のファンとしては、是非とも受賞してほしいが・・・

 

 

 

 

期待 : エディ・レッドメイン

予想 : エディ・レッドメイン

 

ここは希望的観測も込めてエディ・レッドメイン推しで。

もしもマイケル・キートンが受賞して、他の演技部門が下馬評通りになったら、

第70回以来、実に17年ぶりに 「実在の人物を演じて受賞した俳優が一人もいない」 という珍しい年に。