第89回/2016年度アカデミー賞ノミネーション
■ 作品賞 ■ 監督賞 ■ 主演男優賞 ■ 主演女優賞 ■ 助演男優賞 ■ 助演女優賞
主演女優賞
三大前哨戦全てで名前が挙がっていたエイミー・アダムスがまさかの落選というサプライズはあったが、
それでも今年の主要部門で最も混戦模様を呈していることには変わりない。
強いて言うならSAGとGG(ミュージカル部門)を受賞したストーンが頭一つ抜きん出てるが、
ポートマンとユペールも侮れないし、黒人旋風でまさかのネッガというシナリオも…さすがにないか。
ゴールデングローブ賞 ニューヨーク批評家協会賞 ロサンゼルス批評家協会賞 ボストン批評家協会賞 サンフランシスコ批評家協会賞 ダラス−フォートワース協会賞 フロリダ批評家協会賞 全米批評家協会賞 |
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ブロードキャスト批評家協会賞 ワシントンDC批評家協会賞 シカゴ批評家協会賞 ラスベガス批評家協会賞 デトロイト批評家協会賞 サウスイースタン批評家協会賞
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全米俳優組合賞 ゴールデングローブ賞 英国アカデミー賞 デトロイト批評家協会賞
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Isabelle Huppert : ELLE / 『エル ELLE』
今年度の前哨戦でイザベル・ユペールの名前が挙がっているのを機にプロフィールを色々調べてたのだが、もう63歳だったということに驚いた。今回演じるのが自分をレイプした犯人を見つけて復讐していく女性というのもあるが、いまだに年齢を感じさせない色気が漂っていて、とても還暦を過ぎているとは思えなかったのである。そしてメリル・ストリープと4歳しか違わないとはとても思えないのである(←メリルに失礼)。フランス語映画での主演、しかも監督は 『氷の微笑』 や 『ショーガール』 のポール・パーホーヴェンというのはアカデミー賞的にはハンデだが、キャリアと実力的にはオスカーに値するし、気が付けば前哨戦の半数近くを受賞、そしてまさかのGG賞受賞と、このままオスカーを受賞しても不思議ではない勢いになってきた。ただし、どちらかというと年齢が若い方が受賞する傾向にある部門だし、SAGにノミネートされなかったのも微妙ではある。もしも受賞したら外国語映画で主演女優賞を受賞した3人目(これまでの2人はソフィア・ローレンとマリオン・コティヤール)、そしてジェシカ・タンディ、キャサリン・ヘップバーンに次ぐオスカー史上3番目に高齢の主演女優賞受賞者になる。
Ruth Negga : LOVING / 『ラビング 愛というの名前のふたり』
前哨戦では名前が挙がっていたものの、SAGにノミネートされなかったので何となくオスカー候補から外れそうな雰囲気だったルース・ネッガが、エイミー・アダムスやアネット・ベニングといった有力候補を退けてオスカー初ノミネート。対象作は作品賞候補には挙がらなかったが、まだ異人種間の結婚を違法とする州があった1950年代のアメリカを舞台に、実在の白人男性と黒人女性の夫婦を描いた物語ということで、多様性がテーマとなりつつある今年のオスカーにピッタリの一本だ。ネッガと同じくらい前哨戦で名前が挙がっていた共演のジョエル・エドガートンがノミネートされなかったのは疑問が残るが、もしネッガがノミネートされていなかったら 「演技部門全てで黒人俳優がノミネートされる」 という史上初の事態にはならなかったので、このノミネートは大きい(ちなみに89回のオスカーの歴史の中で主演女優賞に黒人がノミネートされたのはネッガで11人目)。受賞争いに絡むにはキツイところだが、これまで映画界では注目をあまり集めていなかったので、今回のオスカー候補で今後キャリアの幅が広がっていくだけでも十分では。ていうか、ドミニク・クーパーの奥さんだったのね。
Natalie Portman : JACKIE / 『ジャッキー / ファースト・レディ 最後の使命』
夫であるジョン・F・ケネディを目の前で暗殺されたジャクリーン・ケネディが、夫が残したものを風化させないために暗殺から4日の間に取った行動を描いた本作。タイトルロールでもあるジャクリーンを演じたナタリー・ポートマンの演技は完璧で魂を震わすともっぱらの評判で、前哨戦でも十分な戦績を残し、2度目のオスカーも十分有り得る展開だったのだが、ブロードキャストの受賞を最後に勢いが止まってしまい、GGをイザベル・ユペール、SAGをエマ・ストーンに譲った今となっては二番手三番手の立ち位置になってしまった。三つ巴的な今年の主演女優賞の展開の中で、唯一オスカー受賞歴があるのも若干不利。とは言え、何が起こるか分からないのがアカデミー賞だし、何か起こるとしたら今年は主演女優賞なので、最後まで分からない。ちなみに、今回の賞レースでは美しいマタニティ・ドレス姿を披露しているポートマンだが、前回 『ブラック・スワン』 でオスカーを受賞した時もマタニティ・ドレスで、もしも今年受賞したらマタニティ・ドレスで二度オスカーを受け取った唯一の女優になる。
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Emma Stone : LA LA LAND / 『ラ・ラ・ランド』
近年はスパイダーマンのヒロインに抜擢されたり、ウディ・アレン映画のミューズになったり、オスカー候補になったりと躍進著しいところで、若手新鋭監督のミュージカル映画で歌って踊って主演女優賞にノミネートという、かなりベストな展開を歩んでいるエマ・ストーン。しかも、前哨戦前半ではイザベル・ユペールとナタリー・ポートマンの後塵を拝していたのに、SAGとBAFTAを受賞して一気にオスカー受賞有力候補に躍り出た。確かに、若くて可愛いだけの女優はゴロゴロいるハリウッドだが、ストーンのような独特のファニーさのある若手女優は不思議と少ないので、その魅力が花開くのは当然かもしれない。どちらかというと演技力というよりフレッシュさが印象に残るのは否めないが、そのフレッシュさや28歳という若さが有利に働くのが主演女優賞だし、5人のノミニーの中で1人だけ作品賞候補作でのノミネートというのも強い。ちなみに、過去にミュージカル映画から主演女優賞にノミネートされたのは8回で、受賞したのはルイーゼ・ライナー、ジュリー・アンドリュース、バーブラ・ストライサンド、ライザ・ミネリの4人。もしストーンが受賞したらライザ・ミネリ以来、44年ぶりのミュージカル映画での主演女優賞受賞になる。ゴズリングよりも実現の可能性が高そうな記録だが、さぁどうなる!
Meryl Streep : FLORENCE FOSTER JENKINS / 『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』
今年も来ましたメリル・ストリープ! ビックリするぐらい音痴だったのにカーネギーホールでソロリサイタルをやってしまった伝説の歌姫、フローレンス・フォスター・ジェンキンスを演じ、前人未踏の20度目のオスカーノミネートだ。歌唱力は折り紙付きのメリルが絶妙に下手な歌を披露する姿は一件の価値アリだし、ファンとしては今回のノミネートは嬉しい限りだが、一方でエイミー・アダムスが落選したことを考えると、今回は譲ってもよかったんじゃないかという複雑な気持ちにもなる。もしかするとGG授賞式でのセシル・B・デミル賞受賞スピーチや、それえを受けたトランプ大統領の 「最も過大評価されている女優の一人」 発言がハリウッドに火をつけ、結果ノミネートされたという展開だろうか。まぁ、いずれにせよ4本目のオスカーは10年後くらいで。
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期待 : イザベル・ユペール 予想 : エマ・ストーン |
今年のオスカーで最も予想が難しい、すなわち最も受賞の瞬間が楽しみな部門だが、
ユペール、ポートマン、ストーンの誰が受賞しても面白い。
個人的にはストーンの受賞は時期尚早な気もするけど。
2/26追記 : 実際に 『ラ・ラ・ランド』 観てみたら、エマ・ストーンは受賞に値する演技でした。是非!