第89回/2016年度アカデミー賞ノミネーション
■ 作品賞 ■ 監督賞 ■ 主演男優賞 ■ 主演女優賞 ■ 助演男優賞 ■ 助演女優賞
助演男優賞
助演で光る個性派40代や、26歳ながら確固たるキャリアを築きつつあるインド系イギリス人、
そして67歳のいぶし銀なベテランから20歳なりたての若手まで、
演技部門ノミニーの最年少と最年長が揃った助演男優賞だが、
前哨戦的にも今年のテーマ的にも、受賞はマハーシャラ・アリで決まり。
全米俳優組合賞 ブロードキャスト批評家協会賞 ニューヨーク批評家協会賞 ロサンゼルス批評家協会賞 ワシントンDC批評家協会賞 アトランタ批評家協会賞 ボストン批評家協会賞 サンフランシスコ批評家協会賞 ダラス−フォートワース協会賞 シカゴ批評家協会賞 サウスイースタン批評家協会賞 全米批評家協会賞 |
NBOR デトロイト批評家協会賞 フロリダ批評家協会賞
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英国アカデミー賞
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ラスベガス批評家協会賞
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Mahershala Ali : MOONLIGHT / 『ムーンライト』
今年の賞レースが始まるまで、マハーシャラ・アリという名前に全く聞き覚えがなかったのだが、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』 に重要なキャラクターで出ているのでアメリカのTVドラマファンの間では知られた俳優なのだろうか。しかし、そんな自分でも各批評家協会賞の結果が続々発表されるにつれて、いつの間にかスペルも完全に覚えてしまうくらいに前哨戦をことごとく制覇。これは 『プレシャス』 でモニークが受賞した時と同じくらいの勢いで、GGはまさかのアーロン・テイラー・ジョンソンの手に渡ったが、ジョンソンはオスカーにノミネートされなかったので、結局はアリの一強である。『HIDDEN FIGURES』 にも出演しており、今年の作品賞候補作に2本出演している唯一の演技部門ノミニーというのもプラスだが、そんなことはどーでもいいくらい、とにかく鉄壁。
Jeff Bridges : HELL OR HIGH WATER / 『最後の追跡』
というわけで、受賞云々という観点からは他の4人についてコメントするのはナンセンスなのだが、今年はむしろ他の4人の方がコメントしたくなるノミニーが揃っている。まずは大ベテランのオスカー受賞者、ジェフ・ブリッジス。同作からはベン・フォスターにも助演男優賞ノミネートの期待がかかっていたが、アカデミー賞はこれで7度目のノミネートとなるベテランを選んだ。2度目の受賞はなかなか厳しいかもしれないが、今後もノミネート数はコンスタントに伸ばしそうな予感。
Lucas Hedges : MANCHESTER BY THE SEA / 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
『ムーランイズ・キングダム』 で脇役ながらもオイシイところでウェス・アンダーソンに抜擢されたルーカス・ヘッジズ。以降、『ゼロの未来』 や 『グランド・ブダペスト・ホテル』 などの良作に出演しているのを何となくチェックはしていたのだが、まさか弱冠20歳でオスカー候補になろうとは。若手男優に厳しいアカデミー賞にしては珍しいチョイスである(20歳未満での男優賞ノミニーは過去7人のみ!)。それほど 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 が濃密な演技に支えられているということだろうか。もしも受賞したら、ティモシー・八ットンを抜いてオスカー史上最年少の男優賞受賞者になるが、まぁそれは仮定法現在な話。
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Dev Patel : LION / 『LION / ライオン 25年目のただいま』
『スラムドッグ$ミリオネア』 で鮮烈な映画デビューを飾り、BAFTAでは主演男優賞にノミネートされたものの、オスカーでは名前が挙がらなかったデヴ・パテール。正直、『スラムドッグ〜』 の次に 『エアベンダー』 に出演した時は 「この先大丈夫だろうか」 と不安になったが、気がつけば 『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』 『チャッピー』 『奇蹟がくれた数式』 などの良作が続き、映画デビュー8年目にしてとうとう初のオスカーノミネートだ。祝! 今年は黒人ノミニーが多いのが話題になっているが、多様性が今年のオスカーのテーマなら、インド系イギリス人のパテールのノミネートも今年のオスカーに相応しいと言えよう。しかも、大方の予想を裏切ってBAFTAではマハーシャラ・アリを退けて助演男優賞を受賞したので、オスカーでも期待値はゼロではなくなったが、これはパテールがイギリス人であることが多分に影響してそうなので、やはりオスカーでは厳しいのではと予想。ちなみにパテールとルーカス・ヘッジスは、1990年代生まれで初めてオスカーにノミネートされた男優らしい。
Michael Shannon : NOCTURNAL ANIMALS / 『ノクターナル・アニマルズ』
監督デビューの 『シングルマン』 でその演出力を絶賛されたトム・フォードの監督第二作は、現実と虚構が入り混じった息詰まるスリラーと評判が高く、BAFTAでは主演男優賞(ジェイク・ジレンホール)、助演男優賞(アーロン・テイラー=ジョンソン)、監督賞、脚本賞ほか9部門でノミネートされたのだが、アカデミー賞ではマイケル・シャノンのノミネートのみとなってしまった。とはいえ、これでトム・フォードは二作連続で演技部門にオスカーノミニーを輩出したことになり(前作はコリン・ファース)、オスカーファン的には次回作以降も要注目である。ちなみに、2016年のマイケル・シャノンの出演作は何と10本もあるようなのだが(出展IMDb)、そのうちの1本は盟友ジェフ・ニコルズ監督の話題作にして、ルース・ネッガが主演女優賞にノミネートされている 『ラビング 愛という名前のふたり』。アリに対抗できるとしたら2作合わせ技のシャノンになる? って、アリも2作合わせ技だったか。
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期待 : マイケル・シャノン 予想 : マハーシャラ・アリ |
若手2人の受賞は今後のキャリア的にマイナスかもしれないので、ここはマイケル・シャノンで、
なーんて捻った予想をしたところで、ここはアリで確定なので何を言ってもしょうがない。
個人的にはアリ以外の誰が受賞しても面白いんだけど。