第90回/2017年度アカデミー賞ノミネーション
■ 作品賞 ■ 監督賞 ■ 主演男優賞 ■ 主演女優賞 ■ 助演男優賞 ■ 助演女優賞
監督賞
作品賞有力な 『スリー・ビルボード』 のマーティン・マクドナーが落選というサプライズが起こったり、
クリストファー・ノーランが悲願の監督賞ノミネートとなったり(←ファンの悲願)、
グレタ・ガーウィグがオスカー史上5人目の女性監督ノミニーとなったりと、話題に事欠かない監督賞だが、
最終的にはギレルモ・デル・トロの独走で決まり。
ボストン批評家協会賞
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全米監督組合賞 ゴールデングローブ賞 ブロードキャスト批評家協会賞 英国アカデミー賞 ロサンゼルス批評家協会賞 ダラス−フォートワース協会賞 ラスヴェガス批評家協会賞 |
NBOR 全米批評家協会賞
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ワシントンDC批評家協会賞 サンフランシスコ批評家協会賞 シカゴ批評家協会賞 アトランタ批評家協会賞 フロリダ批評家協会賞
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Paul Thomas Anderson : PHANTOM THREAD / 『ファントム・スレッド』
『ブギーナイツ』 で映画界を騒がせてから20年、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 でオスカーレースを賑わせてから10年。再びポール・トーマス・アンダーソンがやってくれました。前哨戦では殆ど名前が挙がっていなかったにもかかわらず、作品賞ともにサプライズノミネートだ。残念ながらノミネートされなかったマーティン・マクドナーやルカ・グァダニーノの代わりというのは微妙ではあるが、着々とアカデミー賞での実績が積み上がっているのは嬉しい。とにかく一度は授賞式の壇上に上がってほしいのだが、割に寡作の監督なので、受賞スピーチが実現するのはまだまだ先になりそう。
Guillermo del Toro : THE SHAPE OF WATER / 『シェイプ・オブ・ウォーター』
『パンズ・ラビリンス』 でアカデミー賞を賑わせた以降、いつの間にかハリウッドの一流監督に仲間入りしつつも、独自の路線を捨てずに 『パシフィック・リム』 や 『クリムゾン・ピーク』 と話題作を世に送り出してきたメキシコの奇才ギレルモ・デル・トロが、まさかオスカー監督賞の本命になる日が来るとは! 正直、20年前にB級昆虫ホラーアクションの 『ミミック』 を観た時に、この監督がオスカーを受賞することになるとは微塵も予想しなかった。人生、本当に何がどうなるか分からない。当時のグロテスクさや怪奇な雰囲気は大人しくなってきたものの、デル・トロ曰く本作は 「本当に作りたい映画を作れた」 ということで、そのような作品がこれだけの評価を得たというのはさぞかし嬉しかろう。近年のオスカー監督賞は外国人が絶好調だし、移民たちを排除しようとするトランプ政権へのNOとしてメキシコ人が脚光を浴びるというのも現在のハリウッドらしいチョイスだ。もちろん、受賞したら業界人も映画ファンも大喜びだろう。ちなみに今年デル・トロが受賞したら、ここ10年でオスカー監督賞を受賞したアメリカ人はたったの2人ということになる(キャスリン・ビグローとダミアン・チェゼル)。
Greta Gerwig : LADY BIRD / 『レディ・バード』
女性の権利、活躍がテーマとなった今年のオスカーに相応しく、グレタ・ガーウィグがめでたく監督賞にノミネートされた。もちろん、女性の権利云々を言わずとも作品の高評価を考えると至極当然と言えるが、女性を主人公にした映画で女性監督がノミネートされるというのは、やはり今年のアカデミー賞を象徴しているよう。これまでの90年近いアカデミー賞の歴史の中で監督賞にノミネートされた女性は、76年のリナ・ヴェルトミュラー、94年のジェーン・カンピオン、03年のソフィア・コッポラ、09年のキャスリン・ビグローのみで、彼女たちに続く5人目という快挙である。近年は 『マギーズ・プラン』 や 『20センチュリー・ウーマン』、『ジャッキー』 など女優業も好調だし(最新作はウェス・アンダーソンのアニメーション映画の声優!)、本作では脚本賞にもノミネートと、なんと才能の多彩なことか。残念ながら脚本賞には 『シェイプ・オブ・ウォーター』 と 『スリー・ビルボード』 が名を連ねているため分が悪いが、今回の脚光を機にますます注目されることは間違いなさそう。
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Christopher Nolan : DUNKIRK / 『ダンケルク』
『インセプション』 で監督賞にノミネートされるだろうと誰もが予想していたにもかかわらずノミネーション発表で名前が呼ばれず、アカデミー賞から無視された形となったクリストファー・ノーラン。まぁ、老齢のアカデミー会員にとってノーランの演出は(そして脚本も)複雑過ぎてついていけない可能性があるので仕方ないのかもしれないが、とにかくこの無視されっぷりは一時のスピルバーグを思わせるほどだった。そんなノーランも、とうとう念願かなって監督賞ノミネートだ。やはり戦争映画はアカデミー会員の心を動かしやすいのだろうか。その緻密で計算され尽くした演出の中に観る者の心を動かすドラマを描く手腕は、もはや誰にも真似できないワザであり、オスカー像に値する監督であることは間違いない。批評家協会賞をいくつか受賞し始めたあたりでは 「もしかして受賞もありうるか?」 と思っていたが、残念ながら前哨戦後半はデル・トロに持っていかれたので、今回はとりあえずお預け。次作以降に再び期待したい。
Jordan Peele : GET OUT / 『ゲット・アウト』
コメディアンとしてTVで活躍してはいたものの、映画界でのキャリアは殆どないジョーダン・ピールが初監督作として送り出した 『ゲット・アウト』 が、昨年2月公開というハンデにもかかわらず賞レースを席捲し、このままいくと今年のアカデミー賞の話題の一つになるのでは?と予想はしていたが、まさか監督賞にまで名前が挙がることになるとは。ピールは脚本賞にもノミネートされているので、これでピール自身のオスカーノミネート数は3ということになる。正直、ジョーダン・ピールがノミネートされたのに 『スリー・ビルボード』 のマーティン・マクドナーがノミネートされなかったのはどうかと思うが、まぁそれを今更言っても仕方がない。それに、昨年のバリー・ジェンキンスに続いて2年連続で監督賞に黒人がノミネートされたのは、そこそこ意味があると言えそう。なんせアカデミー賞が始まってから80年の間に監督賞候補になった黒人は、1990年度のジョン・シングルトンたった1人だったのだから。ちなみにシングルトンの次は2009年度のリー・ダニエルズで、その後13年のスティーブ・マックィーン、16年のジェンキンスと続き、ピールはオスカー史上5人目の黒人監督ノミニー。女性監督とともに、まだまだ門戸は狭い。
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期待 : クリストファー・ノーラン 予想 : ギレルモ・デル・トロ |
DGAのオスカー直結率が高過ぎるので、毎年なんとなく盛り上がりに欠ける監督賞。
ノーランもピールもガーウィグも実力、話題性ともに抜群だが、
結局オスカー像はデル・トロに行きます。