第91回/2018年度アカデミー賞ノミネーション

 

■ 作品賞     ■ 監督賞     ■ 主演男優賞     ■ 主演女優賞     ■ 助演男優賞     ■ 助演女優賞

 

 

主演男優賞

 

各種批評家協会賞を半ば独走状態だったイーサン・ホークがノミネートされず、

今年の演技部門で一番混戦模様で本命不在感が高かったものの、

3大前哨戦が終わってみるとクリスチャン・ベールとラミ・マレクの一騎打ちという構図に。

それにしても、フレディ・マーキュリーにディック・チェイニーにゴッホとは、何とも豪華な顔ぶれ。

 

ゴールデングローブ賞

ブロードキャスト批評家協会賞

ダラス−フォートワース協会賞

ワシントンDC批評家協会賞

 

 

ヴェネツィア映画祭男優賞

 

 

ゴールデングローブ賞

全米俳優組合賞

英国アカデミー賞

NBOR

 

 

 

 

 

Christian Bale : VICE / 『バイス』

 

 相変わらず肉体改造俳優として役作りに挑み続けるクリスチャン・ベール。本作でも、ブッシュ政権の「影の大統領」と称されたディック・チェイニーになりきるために20kg増量し、もはやクリスチャン・ベールかどうか分からないレベルに変身を遂げている。もちろん見た目だけで終わらせない演技派なので、悪名高いチェイニーを上手く料理しているはず。前哨戦前半ではあまり存在感がなかったが、終盤でブロードキャストとGGを受賞し、一気に本命感が出てきたところ、SAGがラミ・マレクの手に渡り、2度目のオスカーに微妙な暗雲が立ち込めてきた。本作をまだ観てないので分からないが、ライバルがフレディ・マーキュリーというのはチェイニーにとってかなり不利な気もする。ちなみに先日のインタビューで、本作のために体重を増やしている最中にゲイリー・オールドマンに電話して、チャーチルを演じるのにどれくらい体重を増やしたのか聞いたところ、全く増やしていないと言われて驚き、現在の特殊メイクのレベルの高さに初めて気が付いたと言っていた。ということは、体重を増やすのは本作が最後?

 

# オスカーノミネート歴

'10 『ザ・ファイター』 (助演)

'13 『アメリカン・ハッスル』 (主演)

'15 『マネー・ショート 華麗なる大逆転』 (助演)

 

 

 

 

Bradley Cooper : A STAR IS BORN / 『アリー スター誕生』

 

 自身が思い入れ強く監督・主演・脚本を務め、めでたく4度目のオスカー演技部門ノミネートとなったブラッドリー・クーパーだが、確実にノミネートされるだろうと思われていた監督賞で候補落ちしてしまい、嬉しいような残念なような、微妙な心情といったところだろうか。その同情票が集まる可能性がなくもないし、酒に溺れるあまりに愛する者を失いそうになる酔いどれ演技はオスカー主演男優賞好みだが、実績的にも壮絶な役作り的にも、ラミ・マレックとクリスチャン・ベールの後塵を拝しているのは否めない。本作では脚色賞にもノミネートされており、こちらは抜きん出た候補作がないので、もしかしたら脚色賞での受賞はあるかも。

 

# オスカーノミネート歴

'12 『世界にひとつのプレイブック』 (主演)

'13 『アメリカン・ハッスル』 (助演)

'14 『アメリカン・スナイパー』 (作品・主演)

 

 

 

 

Willem Dafoe : AT ETERNITY'S GATE

/ 『永遠の門 ゴッホの見た未来』

 

 今年の主演男優賞ノミニーの中では最高齢となったデフォー様(63歳)。もうそんなベテランなのねぇと感慨深くなると同時に、早くオスカー像を取らせてあげたいねぇと去年もやきもきした気がするが、残念ながら去年より今年の方が受賞する可能性は低く、前哨戦での扱いを考えるとノミネートされたこと自体が軽く驚きと言っていい(現在アメリカで大ヒット上映中の 『アクアマン』 で結構オイシイ役を演じてるのもプラスか?)。ただし、裏を返せばアカデミー会員もデフォー様のことを応援しているということになるので、2年連続ノミネートで弾みをつけて近々受賞するというシナリオに期待したいところ。

 

# オスカーノミネート歴

'87 『プラトーン』 (助演)

'01 『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』 (助演)

'17 『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』 (助演)

 

 

 

 

Rami Malek : BOHEMIAN RHAPSODY / 『ボヘミアン・ラプソディ』

 

 TVドラマ 『Mr. Robot』の主役に抜擢されたのが2015年。その翌年には同シリーズでエミー賞を受賞し、一気に知名度と実力を上げた感があるものの、映画界ではまだそこまで実績はなかったラミ・マレックが、その数年後にいきなりオスカー主演賞の本命になろうとは誰が予想しただろうか。とは言え、誰もが知っているフレディ・マーキュリーを演じた 『ボヘミアン・ラプソディ』 の演技を見た人であれば、この展開も納得だろう。数々のライブシーンの完コピっぷりが凄まじいだけではなく、フレディの魂を演じきったマレックあってこその 『ボヘミアン・ラプソディ』 であり、受賞しても決して不思議ではないどころか、個人的には是非受賞まで行ってほしい。最大のライバルは、これまた違うレベルで「なりきり演技」のクリスチャン・ベールだが、これまでのアカデミー賞の傾向的にはSAGを制したマレックの方が大きく有利。さぁ、果たして!

 

 

 

 

Viggo Mortensen : GREEN BOOK / 『グリーンブック』

 

 今年はクリスチャン・ベールの増量変身っぷりが話題になっているが、本作のヴィゴ・モーテンセンの増量もなかなかのもの。14kgの増量を経た姿は、ヴィゴどうしちゃったの!?と思わず目を疑ったくらいで、シャープな面影全然ナシ! 本作でヴィゴが演じるのは、アメリカ南部での黒人差別がまだまだ根強かった1960年代に、ニューヨークで活躍する黒人ピアニストの運転手兼用心棒として雇われ、コンサートツアーで南部まで同行した実在の人物トニー・リップ。ヴィゴ本人は自分がデンマーク系のため、イタリア系のトニーを演じることに迷いを感じたらしいが、イタリア訛りの英語をマスターするために、なんと『ザ・ソプラノズ』の全話をイッキ見するという意外なアプローチを取ったとか。そんな体重増加やイタリア訛りだけでも役者魂が感じられるが、それだけでオスカー候補になるはずもなく、恐らく彼独特のダイナミックさと繊細さが同居する演技が本作の感動につながっているのだろう。オスカー的には、候補になってもいつも4番手5番手くらいの位置なので、なかなか受賞には至らなさそうなのが難点。ていうか、指輪物語のアラゴルンももう還暦か・・・

 

# オスカーノミネート歴

'07 『イースタン・プロミス』 (主演)

'16 『はじまりへの旅』 (主演)

 

 

 

 

期待 : ラミ・マレック

予想 : ラミ・マレック

 

マレックでもベールでも不思議はないし、

どちらにしろ僅差での受賞になるのではないかと予想するが、

ここは受賞歴のあるベールではなく、作品そのものの期待を背負ってマレックに是非!