(500)日のサマー (500) DAYS OF SUMMER

 

directed by Marc Webb

cast : Joseph Gordon-Levitt  Zooey Deschanel

Geoffrey Arend  Chloe Moretz

Matthew Gray Gubler  Clark Gregg

('10 01 11)

 

 

 運命の出会いを信じる主人公のトムが、運命の恋なんて信じないというサマーに出会って恋に落ちた500日間を描く、ちょっと異色のラブストーリー。

 

 と書きたくなるが、冒頭のナレーションにもあるように、この映画はラブストーリーではなくて、ひたすらトムの視点から語られる片思い(=愛)についての物語だ。サマーにフォーリンラブして、キスされて浮足立って、一緒にデートして幸せな気分になって、ワガママに振り回されて、フラれて、この世の終わりってなくらいに落ち込むトムの姿を見ていると、あー、分かる分かると驚くくらい共感の嵐で、恋に落ちるとこうなるよねーと、学生の頃の自分を思い出してしまった。いやぁ、あの頃は俺も若かったなぁ、なーんて。

 

 主人公のトムを演じるジョセフ・ゴードン=レヴィットが上手いというか超自然なので、とにかく彼の魅力なしでは成り立たなかったと思う。サマーと上手くいってる時は本当に嬉しくて嬉しくてしょうがない顔をしてカワイイし、フラれた時は全身に絶望感たっぷりなオーラを纏いながら皿を割りまくったりと、シーンごとでコロコロと変わる表情がコミカルだけとリアルだ。その匙加減も絶妙で、上手いっていうより、自然に演じられちゃってるように見えるところがまたイイ。去年公開された 『G.I.ジョー』 で悪役を演じてたのを観て、おっ、この人はなかなかやるかもと思ったのだが、あまり派手な顔つきじゃないだけに、どんな表情にも化けられる強みがあると思う。正直、これまであまり注目してなかったのだが、今年公開のクリストファー・ノーラン監督の話題の最新作ではディカプリオとも共演ということで楽しみだ。ちなみに、大好きな 『リバー・ランズ・スルー・イット』 に主人公の少年時代役で出ていると知って驚いた。

 

 サマーを演じたズーイー・デシャネルは今まで一度もいいと思ったことがなかったのだが、今回は何を考えてるのか分らない(トムから見たら)ちょっと不思議ちゃん、だけどそこがまた魅力的という少しエキセントリックな役を独特のナチュラルさで好演していて、ともすれば 「何考えてんだよ、この女は」 と嫌われそうなキャラクターを上手く料理して演じたと思う。

 

 これが長編デビュー作のマーク・ウェブの演出や、スコット・ノイスタッターとマイケル・H・ウェバーの脚本も冴えている。500日間の時間軸を行ったり来たりするアイディアも上手いし、フラれてもサマーのことが全然忘れられないトムが、サマーに自宅でのパーティーへ誘われて、トムの期待する展開と現実の展開がスクリーン2分割で流れるシーンなんて秀逸。そうそう。ここで誘われたらそういう展開やっぱり期待するよねー、というのを見事に映像化してくれた。他にも、サマーと初めてセックスした翌朝、嬉しくてしょうがないトムが街を歩くと、車の窓に映ったトムの顔がハリソン・フォードのハン・ソロになってたり、ミュージカルみたいに街の人々が踊り出したり、アニメの青い鳥がトムの肩に止まったりと、トムの心情をちょっと遊んだビジュアルで描く試みも楽しい。ミュージックビデオを多く手がける監督らしく、劇中に流れる音楽のチョイスもグッドだ。これだけいっぱい流れていてもウザくならないのは相当いいセンスだと思う。