ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還
  THE LORD OF THE RINGS : the Return of the King


directed by Peter Jackson

cast :  Elijah Wood  Viggo Mortensen
Ian McKellen  Sean Astin
Orland Bloom  John Rhys-Davis
Liv Tyler  Hugo Weaving
Dominic Monaghan  Billy Boyd
Cate Blanchett  Bernard Hill
Ian Holm  Bruce Hopkins
Miranda Otto  Andy Serkis
David Wenham  Karl Urban
John Noble  Sean Bean
('04 02 14)



 大学時代、授業そっちのけで楽器をさらい、それなしでは生活がまわらなくなるほど大学オケに真剣に熱中していた。その4年間の大学オケの最後の演奏会が終わった時、本番後で消耗しきった体で、これで大学オケ生活が終わったんだなぁということは頭でわかるんだが、どうにも実感がわかなかったのを覚えている。最後の演奏会ということで気合いも入り、自分の中で占める割合いもとても大きかったのだが、振り返るにしてはまだ実感がなく、冷静な頭だけが先行して、どことなく中途半端で虚しい感じ。『ロード・オブ・ザ・リング』(以下LOTR) 3部作も、それに似ている。スケール、ストーリー、セット諸々、どれを取っても素晴らしいのだが、それを思い返すことより、もうこんな凄い映画には巡り会えないんだろうなぁという、LOTRの仲間にスクリーンで会うことはもうないんだろうなぁという、そんな想いだけが頭の中を反芻してしまう。知らず知らずのうちにLOTRの虜になっていたんだなぁと、改めて実感。

 ピーター・ジャクソンの、3部作は必ず1年毎に公開するという作戦が上手いのだ。1作目の、これまでにないスケールと映像世界に圧倒された人々は2作目を1年間心待ちにし、その間に1作目を思い返して2作目に挑む。2作目を観れば、前回と同じ、もしくは更に強い力で3作目に臨むことになり、そうなればもう、製作者のみならず観客の方も2年間の想いが3作目にぶちまけられちゃったりする。しかも3作続けて物語は方向を決して見失うことなく、クォリティは見事なまでに保たれ続けるんだから(むしろグレードアップ)、いやもう、決して自分好みのタイプの映画じゃないけど、ここまで凄い映画にはもう一生お目にかかれません。

 2作目で三手に分かれて語られた旅の仲間だが、今回は指輪組(サムとフロド)と、その他大勢になる。『王の帰還』 のタイトルにふさわしく、アラゴルンはとうとうイシドゥルアの剣を手に入れて王位を継承するんだが、2作目がフィーチャリング・アラゴルン状態だったためか今回の出番は控えめ。むしろ話の重点はズバリ、フロドが滅びの山に指輪を捨てられるか、だ。てか、そもそもの目的が1作目からそれであって、そのためだけにここまで引っぱってるんだから当然だわな。なので今回の主役はフロドとサム、そして前作よりも更に演技力が加わったゴラムだ。特に、指輪のパワーで疲れ果てたフロドに代わって物語を支える、フロドにどこまでも献身的なサムが大活躍。イライジャ・ウッドもショーン・アスティンも、大作のスケールに怖気づかずに(体は小さいけれど)大き過ぎも小さ過ぎもしないで、堂々と演じきっている。そして滅びの山に辿り着いてから指輪の行く末を見守るシークエンスは、短いながらも素晴らしい出来! 冒頭のスメアゴルの物語もそうだが、ピーター・ジャクソンは短い時間で物語を語るのがすごく上手いんだと思う。それの積み重ねが一つの長編映画になるんだから、3時間20分の長さでも全く飽きさせずに見せてくれるのは、なるほど、当然なのだ。勿論、戦闘シーンも盛りだくさんで、今回の山場はペレンノール野での20万のオークとゴンドールの兵達の壮絶なバトルだ。やってることは2作目のヘルム峡谷と大して変わらないのに、それでもエキサイティングなことこの上ない。ていうかガンダルフ、なんで魔法使わないの(笑)

 やっと出番が増えたメリーとピピンとは対照的に、ギムリとレゴラスはますます影が薄くなり、今回は完全にアラゴルンの付き人状態でした。それでも、レゴラスが大技小技を絡めてオリファント(写真の象みたいなモンスター)とその乗り手たちを一人で倒しちゃうところは、2作目のスケボー階段下りに匹敵する立派なレゴラスの見せ場。というか、個人的に一番好きなシーン。倒し終わった後のレゴラスの顔が別人の様にやたらと余裕だなーと思っていたら、このシーンは追加撮影で撮られたらしく、オーランド・ブルーム、売れっ子になった余裕オーラが素で出ちゃってるよー

 そのオリファントや、泣き声は恐ろしいが意外にも目がカワイくて、意外にも簡単に殺されるナズグル、そしてオークのボスが乗っている猪なんだか豚なんだかよくわかんない動物などなど、モンスター達の造形も素晴らしくて飽きない。他にも、オークがミナス・ティリスの白亜の城壁を破ろうとする時に使うグロンドという大槌が牙つきの魚みたいな形をしてて(本当は狼らしいが)、これまた全編通してのベスト・デザイン賞。こういうこだわりや遊び心が、LOTR3部作が歴史的大作となった所以なんである。なんせ、20万のオークって原作に書いてあるから本当に20万人用意したっていうんだから。しかも20万人のオークのお面は全部違うっていうんだから! とりあえずはDVDでまた旅の仲間に会うことにして、次 はジャクソン監督の 『キングコング』 リメイクに期待ですね。いっそのこと、それも3部作にして楽しませて欲しいなー。





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