恋におちたシェイクスピア SHAKESPEARE IN LOVE


directed by John Madden

cast :  Gwyneth Paltrow  Joseph Fiennes
Geoffrey Rush  Tom Wilkinson
Judi Dench  Ben Affleck
Colin Firth  Imelda Staunton
Martin Clunes  Rupert Everett
Daniel Brocklebank  Joe Roberts
('02 01 05)



 『恋におちたシェイクスピア』はアカデミー賞を7部門で受賞している。作品賞、主演女優賞、助演女優賞、オリジナル脚本賞、美術賞、衣装デザイン賞、作曲賞だ。この年は誰もが『プライベート・ライアン』がオスカーを獲ると思っていたが、『プライベート〜』は監督賞を含む5部門受賞に終わった。ひとえに、『恋におちた〜』の配給会社、ミラマックスの熱心な(?)オスカーのための用意周到な宣伝によるものだが、1年前に『恋におちた〜』を観て、あぁ、この映画がオスカーを獲って何だか嬉しいな、という気になったのを覚えている。そう思うとミラマックスも捨てたもんじゃない。

 あの名作「ロミオとジュリエット」が、実はシェイクスピアの実体験に基づいていた!という大胆な仮説の元、コスチュームプレイに身を包んだロマコメが展開される。なんかもう、ニヤリとしちゃってさ。オスカー脚本賞は確実と言われただけあって、この巧い脚本!どんなに巧いかは是非観て!としか言えない、この文章力のなさ。うぅ、悔しい。つまりは、スランプに陥ったシェイクスピア(J・ファインズ)が、出会った令嬢ヴァイオラ(G・パルトロウ)との実らないであろう恋を題材に、その恋と同時進行で「ロミジュリ」を書き上げていく。巧く「ロミジュリ」と絡む脚本の見せ所。そして劇中でロミオを演じるのは何と、ヴァイオラの男装の姿、トマス・ケント!女性が舞台に立つのは禁じられているのに!さぁどうなるローズ座!

 大根役者疑いの濃厚なグィネス・パルトロウがオスカーを獲ってしまうほど、主人公のヴァイオラ役はいい役だ。他の映画では本当にレイフの弟かと思ってしまう程どんくさいジョセフ・ファインズでさえも、この映画では輝いている。筆をとるたびにその場で一回転するのがおかしい。ベン・アフレックはやっぱりいい役者だ。もう金輪際アルマゲなんとかとか、パーなんとかいう映画系には出ないことを切実に願いたい。

 この映画を僕が大好きな理由は、勿論ロマコメとして楽しいというのもあるが、一番に、「バカ」を応援している暖かい映画でもあるからだ。いや、「バカ」ってのは「芝居バカ」ってことね。登場人物は劇作家、役者、投資家と、みな芝居が好きで好きでしょうがない輩たち。そんな彼らが、シェイクスピアの新作を、観客を感動させようと一生懸命になって作っていく、その過程を描いていて、観ているこっちも芝居の大成功を祝いたくなる。いや、この映画を作っている人たちが、芝居を作る「芝居バカ」達を応援している。そんな暖かい視線を感じてしまうのだ。(その意味で、系統は違えど大好きな『ギャラクシー・クエスト』と似ている) ローズ座の劇場主(J・ラッッシュ)の金の返済ばかり気にしていた高利貸(T・ウィルキンソン)が、魂のある役者一団を目の前にすると突然かしこまり、うさんくさい劇場主なんかよりどんどん熱を上げていく様子が笑えるし、そこに、その暖かい視線を感じるのである。芝居が人の心を動かすってことを、よーくわかってる作り手達なのだ。だからこそ「ロミジュリ」上演シーンがあれだけ盛り上がる。あぅ〜!思い出すだけでも涙が出る〜!





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