『バッドボーイズ』 以降のウィル・スミスしか観たことがない人は、『アリ』 を観てびっくりするんじゃなかろうか。かく言う僕もその一人。アリの魂にまでなりきってると思わせる演技に目を見張った。伊達にオスカー候補になってない。W・スミスの演技を観る。『アリ』 の魅力はそこにある。
結論から言っちゃうと、どーにもつまらんかった。スミスの熱演はきっと誰もが認めるところなんだろうけど、モハメド・アリをよく知らない僕には、一体アリの何が凄かったのか、アリの何が人々を惹きつけたのか、イマイチ伝わってこない。例えばベトナムへの徴兵を拒否したこと、挑発的な数々の発言、そのファイトプレーと、どれを取ってもアリの魅力となるのに十分だろうということを、理屈ではわかっても、スクリーンから直に体感できるものとして感じないのだ。「ウィル・スミス頑張ってるなー」に尽きる。
てーわけで、マイケル・マン監督、演出力落ちてないか? 『インサイダー』 で成功したドキュメンタリータッチの映像に頼って、肝心なものをリアルに伝えてないと思う。もしくはスミスの演技に頼りっきりだったり、ボクシングの試合を忠実に再現することに重きを置きすぎたのか(これは確かにスゴイ)。結果、ディティールのこだわりが冗長に感じ(特に音楽!)、最後に何も残らない。映画全体の力になっていないのが惜しいなぁ。パワーはありそうな映画なのに。それとも、アリをよく知っている人には、これで十分なのかな。だとしたら、彼に関する知識の少ない僕みたいな人間には向かない映画ってことですね。あーぁ。不幸だ。
なんにせよ、これを「凄い映画」と評した、監督なんだか辛口評論家なんだかよくわからないI筒何ちゃらの意見なんか、ますますもって俺は聞く必要ないってことですね。ははは。
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