あの頃ペニー・レインと ALMOST FAMOUS


directed by Cameron Crowe

cast :  Patrick Fugit  Kate Hudson
Frances McDormand  Zooey Deschanel
Philip Seimour Hoffman  Jason Lee
Noah Taylor  John Fedevich
Mark Kozelek  Fairuza Balk
Anna Paquin  Olivia Rosewood
('01 04 30)



 自分は、キャメロン・クロウ監督の前作『ザ・エージェント』があまり好きになれないタチだった。レニ・ゼルウェガーを一躍有名にし、オスカー候補にもなった『ザ・エージェント』だが、確かにトム・クルーズやゼルウェガーの魅力が十分に発揮されていたにもかかわらず、終始甘ちゃんムードが漂ってて、その甘さが、スポーツ選手のエージェント業界をバックにしたサクセス・ストーリーにどうもマッチしていないように思えたのだ。何だかスト−リーの力になりそうでイマイチならない感じ。
 そして、クロウ自身がアカデミー脚本賞を受賞した『あの頃ペニー・レインと』は、その甘さにますます磨きがかかっている。ただし、『ザ・エージェント』と違うところは、そういうムードがバッチリ映画にプラスになってること!

 時は70年代。ロックに目覚めた15歳の少年ウィリアムはロックの批評家を目指し、ローリングストーン誌の記事を書くため有名街道まっしぐら(ALMOST FAMOUS)なバンドのツアーに同行する。その道中を追いながら、ウィリアム、そしてバンドのメンバーや、グルーピー達の成長を描く『あの頃ペニー・レインと』は、題材こそロックだが、この年代の男の子、女の子誰もが経験するような、他人への信頼、裏切り、恋、憧れ、友情、そんなものを暖かい目で描いている。70年代のBGMも雰囲気を煽って、なんだかふわふわと幸せになるような映画だ。ちょっと甘い感じのタッチが彼らの成長のかわいさにかぶって微笑ましい限り。

 キャメロン・クロウと言えばキャストの魅力を最高に活かしてくれる人だけど、もう、ケイト・ハドソン!主人公ウィリアムが恋するグルーピーのペニー・レインを演じる彼女の笑顔がひたすら眩しい!スクリーンの輝きをまさに一人占めで、それだけじゃなく、笑顔一つとっても実に多彩に演じてるのだ。好き放題に、奔放に生きているようで、心の奥では傷ついている。グルーピーの世界がいつか自分の世界ではなくなることもわかっている。そんな心情をやっぱり笑顔一つでチャーミングに見せてくれて、さっすがゴールディ・ホーンの愛娘。あのシーンが特に良かったとか大抵思うんだけど、どのシーンをとっても輝いてるのが素晴らしい!

 脇を固めるのも素晴らしい。ちょっと偏執的なウィリアムの母親役のフランシス・マクドーマンドが可笑しいほどに上手すぎで、バンドのギタリストにビリー・クラダップがドンピシャではまれば、先輩批評家のフィリップ・シーモア・ホフマンがここぞとばかりに地で好演(多分)。そして、ウィリアム役のパトリック・フュジットがいてこそ、『あの頃ペニー・レインと』は成功したと思う。頭も良くて家族も大事なウィリアムは、ペニー・レインに「こっちの世界(ロック)にいるには、あなたは優しすぎるわ」と言われる。そう。彼は全然スレてなくって、バンドにも女の子にもすごく純粋だ。だからバンドのメンバーにも「天敵」呼ばわりされながら好かれたりする。その純粋さは彼ら、彼女達にとってあるべきもの、そしてあってほしいものだったのだ。そんなウィリアムをいかにも童貞顔(失礼<本人)なフジットが演じてナイス。これがクロウ自身の自伝的作品というから、クロウもなかなかお目が高い。

 頑張って難点を探すと言えば、またまたアンナ・パキンが脇役中の脇役で出てきたり、ビリー・クラダップがたまに松崎しげるに見えることくらいかな。女の子たちのファッションや、当時の音楽、そして素晴らしい演技陣の魅力に脚本演出の妙で幸せな気分で映画館を出られて、あー、やっぱ映画っていいなぁ。




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