つぐない ATONEMENT

 

directed by Joe Wright

cast : Keira Knightley  James McAvoy

Saoirse Ronan  Romola Garai

Vanessa Redgrave  Brenda Blethyn

Juno Temple  Benedict Cumberbatch

('08 04 12)

 

 

 『プライドと偏見』 のジョー・ライト監督、キーラ・ナイトレイ主演の大河ラブストーリーということで随分前から期待してたのだが、観終わってみると大して何も心に響くものがない映画だった。なかなか評判はいいんだけど、こういうのみんな好きなのかなぁ。

 

 舞台は1935年のイギリス。幼い妹、ブライオニーがついた嘘によって使用人の息子、ロビー(ジェームス・マカヴォイ)との仲を引き裂かれたセシーリア(キーラ・ナイトレイ)は、戦地に赴いたロビーの帰りをただひたすら待ち、ロビーは戦地フランスから自分を待つセシーリアのいるイギリスへ戻ろうとする・・・というストーリーなのだが、映画後半の荒廃した戦地の描き方が薄っぺらく、ロビーとセシーリアの切ない想いは伝わるのに悲劇性が全く感じられないという事態になっていた。ジョー・ライト監督、あまりスケールの大きい話の演出は得意じゃないのかも。ブライオニーの 「嘘」 が語られる前半はおもしろかったし、ナイトレイを含め、主要キャラクターを演じる俳優たちの演技が良かっただけに残念。

 

 この映画、ナイトレイとマカヴァイが演じる2人が主役のような宣伝をされているが、本当の主人公はセシーリアの妹、ブライオニーである。幼い頃についた嘘、それによって引き裂かれた姉と恋人との仲は二度と戻らないことを理解し、ブライオニーはその罪を償おうとする。タイトルからもわかるようにその償いがこの映画のテーマなのだが、ナイトレイとマカヴォイで映画を売ろうとしている製作側の意図なのか、セシーリアとロビーを映画のメインに持ってこようとしていて、どっちつかずのバランスになっている。おまけにセシーリアとロビーを待ち受ける結末に悲劇性が感じられなければブライオニーの償いも今一つピンと来ない。そしてラストで明かされる衝撃の真実(だと僕は思う)! この映画の一番のクライマックスとも言えるシーンにそんな裏があったとは、驚きを通り越して拍子抜けしてしまった。これ、ヴァネッサ・レッドグレイブほどの演技力のある女優じゃなかったら結末に全く納得できなかったと思うけど。

 

 幼いブライオニーを演じたシアーシャ・ローナンはハッとする眼差しが印象的で、幼くて無垢ゆえの残酷さを持つ役を凛とした存在感で演じ、なるほど、これはオスカーノミネートも納得という演技だった。実際にオスカーを受賞したのはダリオ・マリアネッリの作曲賞だが、この手の映画にピッタリな情感溢れる旋律で、それに加えてタイプライターを打つ音が曲のリズムになっていくのが象徴的で面白かった。

 

 戦地から恋人が待つ故郷へ男が帰る映画と言えばアンソニー・ミンゲラ監督の 『コールド マウンテン』 を思い出すが、映画の最後で出てくるインタビュアー役を演じていたのはミンゲラ監督本人。こういう大河ロマンものが好きそう、かつ得意な監督で、亡くなったのが惜しい。そして、胸がないのを全く隠さないキーラ・ナイトレイはエラい! ディナーのために着替えたグリーンのシンプルなドレスや、真っ白な水着姿でそれが明らかになるのだが、そんなもの関係ないわとばかりに美しく凛としていた。自信のある女優はやっぱり違うね。