ワールド・オブ・ライズ BODY OF LIES

 

directed by Ridley Scott

cast : Leonardo DiCaprio  Russell Crowe

Mark Strong  Golshifteh Farahani

Oscar Isaac  Ali Suliman

Kais Nashif  Simon McBurney

('09 01 03)

 

 

 ディカプリオとクロウの共演に、監督がリドリー・スコットという顔合わせの社会派アクションということで期待していたのだが、緊張感の張り詰めるシーンはいくつかあれど、たいして盛り上がらないまま終わってしまった。アメリカの対テロ戦争の一環でテロリストを捕えるべく現地で働くCIA諜報員(ディカプリオ)と、机の上で彼に命令を出すだけの上司(クロウ)を主役に持ってきながらラストであの展開とは、何だかスッキリしないじゃないか。結局、金で解決するより信頼が大事ってことが言いたいのか。そのわりにはディカプリオが現地の看護師とイイ感じになったりするあたりは安っぽくて、現在の社会情勢を背景にしておきながら軽い話に終始している。スコット監督の手慣れた感たっぷりの演出が仇になってます。

 

 それでも主役がこの2人なので、2人の相変わらずの上手さは楽しめる。家庭では良き夫、良きパパでありながら、CIAの中東局長としてディカプリオに電話で指示を出すクロウは、ただただ太ったオヤジにしか見えないかと思いきや、いざという時は頼りになりそうなデカさ(物理的なデカさじゃなくてね)を感じさせて貫録を見せる。ていうかクロウ、44歳にして太り過ぎじゃないか。『アメリカン・ギャングスター』 でも 「上手い」 と思うより前に 「太い」 としか思えなかったが、役作りとは言え、ディカプリオに 「デブ!」 と罵られるシーンではコレいいのか?って心配するくらい、太り方が様になり過ぎている。リドリー・スコットと五度タッグを組む次回作では主役のロビンフッドを演じるらしいが、そんな役、この体重で演じられるんだろうか。

 

 一方、そりゃ太るヒマもないだろうと思えるくらい、現地で毎日危険に晒されて命懸けで任務を遂行するディカプリオは、ヒゲも様になる貫禄を身につけて、彼が得意とする勢いのある演技で見せてくれる。あまり本質的ではないけど彼は 「痛いこと、イヤなことをされる演技」 っていうのが本当に上手くて、この映画でもお腹に予防注射されたり、拷問にかけられたりするシーンはさすが。ほんっと、痛そう。そんなディカプリオとスクリーン上で火花を散らすのは実はクロウではなく、ヨルダン情報局長のハニ・サラームを演じるマーク・ストロングだ。その彫りの深さと鋭い眼差しがいかにも知性派ボス的な顔立ちで、登場シーンから既にタダモノではない感を漂わせて印象深かった。その眼光で睨まれたら強気のディカプリオも一歩引いちゃうでしょう。僕はこの映画で初めて彼を認識したのだが、フィルモグラフィーを見ていたら、ファンタジー映画の 『スターダスト』 で最後まで生き残って主人公と闘う凶暴王子を演じていたのが彼だったと知って驚いた。えぇぇぇ。全然雰囲気が違う。こういう風にガラッと雰囲気を変えられるワキ役は貴重で、要チェックだ。

 

 タイトルにもあるように 「嘘」 がキーワードとなる話なのだが、途中でディカプリオが仕掛ける大きな嘘は、そんなバカなと思いながらも、この国ならやりかねないと思えてしまうところがアメリカって恐ろしい。まぁ、そういう国家の裏の顔がいかにもありそうだからこそ政治サスペンス盛り上がるわけだけど。