トゥモロー・ワールド CHILDREN OF MEN

 

directed by Alfonso Cuarón

cast : Clive Owen  Julianne Moore

Michael Caine  Chiwetel Ejiofor

Claire-Hope Ashitey  Pam Ferris

Oana Pellea  Peter Mullan

Danny Huston  Charlie Hunnam

('06 12 02)

 

 

 この映画を観たいと思った理由はいくつかあるのだが、ジュリアン・ムーアが好きな自分としては、彼女が出てるからというのが一番大きな理由の一つだった。なのに、この仕打ち。ネタバレになるので詳細は書かないが、ひ、ひどい。ひど過ぎる。プロデューサー出てこい状態だ。もうこうなったら去年全米で公開されたムーアの主演作、“THE PRIZE WINNER OF DEFIANCE, OHIO” を早く公開してもらうしかない。日本の配給会社の方々、頼むからDVDスルーにしないで下さい。

 

 時代は2027年。世界中の人類に子供が誕生しなくなってから18年後のイギリスが舞台だ。そんな世界でなぜか妊娠した女性キーを政府や地下組織から守るために、今や売れっ子俳優の一人のクライヴ・オーウェンが活躍するというストーリーだが、「子供が生まれない世界」 という設定を活かしたシーンがあまりないので、設定の割にオリジナリティのない話だった。また、2027年は世界が荒廃しているという設定なので、近未来というよりも現代の廃墟のようにイギリスの街が描かれている。それはそれでリアルなんだけど、ストーリーの普通さと相まって、映像全体としてはちょっと古臭い印象を持った。途中から戦争映画みたいな映像になっちゃうし。まぁ、歴史は繰り返すってことなんでしょうか。

 

 とは言っても、主役がクライヴ・オーウェンなので、出ずっぱりの彼を見てるだけでもそこそこ楽しめる。それに、何と言ってもすごかったのは、オーウェン演じるセオが地下組織に捕まったキーを追いかけ、銃弾が飛ぶ廃墟の中を建物から建物へと移っていくシーン。ここで監督のアルフォンソ・キュアロンは8分以上に渡る長回しを撮ったのが、この臨場感すごかったー。血ノリがカメラについて画面に赤いのが映ったりするんだが、それさえもリアルで、息を呑む、ドキュメンタリーのような映像だった。このシーンだけでも、この映画を観る価値があるね。

 

 面白いのは、街は荒れ果て、人間はすさんでいく中、やたらと自由に動き回る動物たちが出てくること。犬や猫はもちろん、羊の群れが普通に道を通ったり、廃校になった小学校からは突然シカが出てくるのだ(このシーン、ちょっと笑ってしまった)。人類は歴史の中で変わってしまうが、動物や自然は何も変わらないということだろうか。そんなメッセージを読み取らなくても、突然出てくる動物たちをカワイイと思えれば楽しめるかもしれない。なかでも、マイケル・ケイン演じるジャスパーが飼っている犬が芸達者で光っていた。『イルマーレ』 に出てきた犬と並んで、今年のベスト・ドッグ賞を差し上げたい。