リチャード・ギアは好きではない。昔はカッコよかったかもしれないが、今では随分モサくなって、美大生相手のプレイボーイや、名うてのスナイパーをやるには厳しくなってるじゃんか。ところがどっこい、『Dr.Tと女たち』のギア様は、「女は神聖なんだ」と男友達にうそぶくも、思い通りに行かない女たちに翻弄されて、一味違う。周りの男たちと変わらない、普通に情けないギア様。
ギア様が演じるのはダラスの産婦人科医サリー・トラヴィスだ。みんなからDr.Tと呼ばれるギア様は、仕事は順調、美しい妻に美しい娘二人で家庭円満。今までのギア様なら、オレって何でこんなに人気あるんだろう、ふっ、て感じなんだろうが、今回は大変だ。妻は精神退行で入院し、結婚する娘にはレズ疑惑。家には離婚調停中の義妹と、その幼い3人娘が大騒ぎだし、患者の御婦人たちは待合室で待ちぼうけ。唯一のオアシスはゴルフクラブで知り合ったブリー。あぁ、もう人生パニック。女って、何でこんなにわからないんだ!
ギア様以外の出演者はほとんど女。自己顕示欲の塊のような派手な衣装でスクリーンが賑わう。それを観ているだけで楽しいが、ケイト・ハドソンは『あの頃ペニー・レインと』に比べると、どうしてもパッとしない。あれ以上輝くことはもうないんだろうか。リブ・タイラーは、きっと妊娠してるって設定なんだろうと真剣に思ってしまったほど丸かった。この二人をはじめ、シェリー・ロングやヘレン・ハントと薄い顔が多い中、ローラ・ダーンの変てこな顔、いや、変てこな唇は群を抜いている。「派手なだけ」の衣装の女がスクリーンにわんさか出てくるのだが、その一歩先の「奇抜な」スタイルを着こなせるのは、顔ゆえでしょう(勿論役になりきっているというのもあるだろうが)。羽根の帽子に、セクシーなインナーに、豹柄のコート。ほんでもって、アナタ、いくら家に小さい娘しかいないからって、そんな少女マンガなエプロンで料理してどうするのさ。ホントに『遠い空の向こうに』と同じ人だったのかと、自信が持てなくなってきた。
ダーンと、出番が少ないながらも強烈な印象を残すファラ・フォーセットの二人が際立つ中、納得行かないのがヘレン・ハントだ。この人、演技クサイってばー。Dr.Tがハント演じるブリーに向かって、「君は今まで会ったどの女性とも違う」と言うシーンがあるんだが、そうかー?こんな女、いくらでもいそうだぞー。それ程ハントの演技には説得力がない。タレ目で眉間にシワを寄せるて首を振るなんて、誰だって出来るっつーの。
これだけの女性がひしめくのを、アルトマン監督はやはり上手にまとめて、全く緩みがない(当り前か)。そして、ギア様の悩みゲージが最大に達したラストのカタルシス。結局男に女はわからないという、至極当然の結末がこう来るとは!アルトマン監督も、女優は扱えるが女性のことはやっぱりわからないんだろうな。その諦めが、この瞬間に開放感を味わう。神聖だけど、わからない。女性とは畏れ多い存在なのだ。(←別に僕が思ってるわけではないことに注意)
関係ないが、Dr.Tの患者たちは、予約してるのに診察が遅い、とひしめき合う。産婦人科は患者の多さの割りに医者の数が少ない科なんです。だから長時間待つのはどこでも一緒なんで、あんまブーブー文句言わないで下さいね<女性の方々。僕が実習に行った病院では、オバチャンが「先生、今日は4時間待ったわよー」って笑いながら言ってました。
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