エリザベス:ゴールデン・エイジ

ELIZABETH : the Golden Age

 

directed by Shekhar Kapur

cast : Cate Blanchett  Geoffrey Rush

Clive Owen  Samantha Morton

Abbie Cornish  Jordi Mollà

Rhys Ifans  Eddie Redmayne

Adam Godley  Tom Hollander

('08 02 17)

 

 

 今や名実ともにナンバー1女優と言っていいケイト・ブランシェットの出世作となった 『エリザベス』。公開されたのはかれこれ9年も前になるが、今になって続編? ブランシェットは始めは続編に乗り気じゃなかったというし、監督のシェカール・カプールは前作以降に撮ったのは1本だけとパッとしないし、カプール監督の再帰ヒット狙いか? と思ってしまうのも無理はないというもの。

 

 実際フタを開けてみると、見応えタップリの歴史大河ドラマだった前作には到底及ばないスケールの小ささで、物足りない感は拭えなかった。エリザベスがヴァージン・クィーンとして英国女王に即位してから10年ほど後、プロテスタントのエリザベスの周囲にはカトリック派のスコットランド女王メアリーの存在や、カトリックの盟主としてヨーロッパを制圧しつつあったスペインのフェリペ2世の圧力を心配する声があがっていたが、本作ではそれらを巡って渦巻く陰謀、そしてそこからスペインの無敵艦隊に攻め入られるまでを山場に歴史絵巻が語られる。前作でも様々な陰謀、策略の中を生き抜いてエリザベスが女王に即位するまでを描いたカプール監督だけに、今回もメアリーを巡る陰謀がスペインからの攻撃につながる下りはスリリングで、上手く見せてくれた。けど、そこにエリザベスが想いを寄せるウォルター・ローリー卿との話が絡んでくると途端に退屈になる。カプール監督としては、ヴァージン・クィーンとして即位してから女性としての感情を押し殺してきたエリザベスの内面を描きたかったんだろうが、暖炉の前で2人が恋人のように語るシーンとか、ちょっと安い演出に走っちゃりして、どうもただの底の浅いメロドラマにしか見えてこない。

 

 とは言え、エリザベスを演じるのはケイト・ブランシェットだ。カプール監督の演出が冴えないローリー卿とのシーンでもさすがの上手さを見せ、複雑なエリザベスの内面を表している。物語の中では前作から10年近く経っているが、ブランシェット自身も前作から10年の間に女優としてますます磨きをかけていて、エリザベスの成長を見せるのに相応しい。ほとんどのシーンでブランシェットが出てくるので、彼女を観てるだけで飽きずに2時間座ってられるというものだ。そしてスペイン大使たちを前に凄むシーンでの緊迫した表情の変化を見よ!これぞ演技。唸るほどの上手さである。前作に引き続き、エリザベスの陰で暗躍する側近のウォルシンガムを演じたジェフリー・ラッシュもさすがの貫禄。そして期待以上だったのが、メアリー・スチュアートを演じたサマンサ・モートンだ。上手い女優だとは思っていたけど、自らの陰謀が思わぬ形で明るみに出るシーンでの彼女の演技は、よくぞここまでやった! と心の中で思わず叫んじゃいました。映画の中で一番印象に残ってるの、このシーンです。

 

 クライヴ・オーウェンは彼ならではの持ち味で、ワイルドだが粗野ではない複雑な魅力を持つローリー卿を演じて説得力があったが、ラストの無敵艦隊を相手に活躍する姿はオーウェンだとキマリ過ぎ、カッコよ過ぎ。そもそも無敵艦隊との戦闘シーン自体が物足りないのもあるが、突然アクション映画のヒーローみたいになっちゃって変だった。そして実際にはローリー卿は無敵艦隊を相手に闘っていないという歴史的事実。後から知って、ますます冷めちゃいました。

 

 アレクサンドラ・バーンによる衣装は今年のアカデミー衣装デザイン賞を受賞。受賞も納得の豪華なデザインで素晴らしいけど、やっぱりすごいと思うのは、その衣装に負けない存在感を出しているブランシェット。今年はオスカーでダブルノミニーになった 『アイム・ノット・ゼア』 でボブ・ディランを演じたり、待ちに待ったインディ・ジョーンズの最新作で悪役を演じてたり、更にはデヴィッド・フィンチャーの最新作にも出演したりして、まだまだ楽しませてくれそうだ。