エミリー・ワトソンのフィルモグラフィーを調べた時に、『EQUILIBRIUM』 という映画の評判が良いのを知り、公開されたら観てみたいなぁと思ってたんだけど、気づいたら 『リベリオン』 って邦題でひっそりと公開されててビックリ。プレミアのレビューにも載ってないし、東○ウォーカーに原題が載ってなかったら危うく見逃すところだったわ。しかも、「リベリオン」 って単語、劇中で1回も出てこないんですけど。
時は第3次世界大戦が終結した世界。2度と戦争を起こしてはならないと、政府が考案したのがヒトの感情を抹殺すること。怒りや悲しみ、憎しみという感情の爆発を抑えれば、争いは起こらず、平和な世の中になる。かくして思想や芸術は一掃され、読書や音楽、絵画の鑑賞は禁止。人類は皆、プロジウムというクスリを毎日定刻に打ち、自らの感情をなくしていた。そして、感情違反者を取り締まるのが 「クラディッチ(聖職者)」 と呼ばれるスペシャリスト達。感情を持たずに任務を遂行する彼らの一人、ジョン・プレストン(クリスチャン・ベール)は 「殺人マシン」 にふさわしい最高のクラディッチだが、相棒の死と、「生きる目的は何?」 と問いかける違反者の女(エミリー・ワトソン)との出会いで次第に変わっていき、人間の感情が芽生えてくる・・・・・
何だかありきたりなSFっぽいが、これが面白いのだ! クラディッチの服装が 『マトリックス』 に似てるのがちょっと気にかかるし、ポスターもそっくりだが(そう思ってみると、クリスチャン・ベールのアップもキアヌ・リーブスと似てるように思えてくる)、そんなのも吹っ飛ぶほどブッ飛んだアクションシーン! クラディッチが習得するのは 「ガン・カタ( GUN=KATA )」 という武道で、相手の配置体制を最大限に利用し、最小限の動きで最大限に効率的な攻撃をするというものだ。これをこなすクリスチャン・ベールがカッコイイ! んなバカな(笑) というツッコミも入れつつ、久々の痛快なアクションに大興奮である。よく考えるとここらへんも 『マトリックス』 からヒントを得てるのか? などとも考えてしまうが、でもそれより面白いぞ。このへんの勢いが、大好きな 『処刑人』 に通じるものがある。監督と脚本のカート・ウィマーに大拍手!
楽しみにしていた紅一点のエミリー・ワトソンだが、物語のキーパーソン的存在で、やっぱり上手い。彼女の出演シーンになるとぐいっと引き込まれる。これに 「冷たい目線ならおまかせ」 クリスチャン・ベールが絡んでくるわけだから、アクション以外でも十分に見せてくれるというわけだ。演技派(しかも並みの演技派じゃない)を投入するころで誕生する面白さとは、こういうもの。2人の目の演技だけでシーンが十分成り立っている。ベールが上手いのは、ほんのちょっとした表情の違いだけで人間としての感情が芽生えるのを現すところ。わかりやすい苦悩の表情や雄叫びなんかなくてもOKなのだ。ウィマー監督、長編2作目でいきなりこんなキャストをゲットするとは、やるなぁ。
難を言えば、何でそうなるのーって展開が終盤直前にあって納得いかないし、第三次世界大戦の映像でフセインが映ったり、主人公が加担するのが一種のテロリズムを彷彿させる行為だったりするのは時代が時代だけに後味の悪さを残すが、やはりエンターテインメントならばそういうのを抜きにして楽しみたいもの。「感じる」 ことの大切さ、それをなくした時の悲しさを描く方がこの映画では大切なのだから(ベールが一匹の犬を抱えるシーンがいい)。ちなみに 「イクイリブリウム」 とは 「心の平静」 の意で、映画では感情を抹殺する薬、プロジウムの製造工場を指す。結局最後まで1回も中は見せてもらえませんでした。
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