エラゴン 遺志を継ぐ者 ERAGON

 

directed by Stefen Fangmeier

cast : Ed Speleers  Jeremy Irons

John Malkovich  Robert Carlyle

Sienna Guillory  Garrett Hedlund

Alun Armstrong  Chris Egan

Djimon Housou  Rachel Weisz

('06 12 24)

 

 

 全米では原作が大ヒットらしいが、今更この手のファンタジーを映像化されても、『ロード・オブ・ザ・リング』 の前ではどうしても霞んでしまうと思う。キャラクターも全て二番煎じみたいになっちゃうし。それを知ってか知らずか、とにかく頑張ってヒットさせようと広告をやたら出している映画会社の宣伝担当の努力と熱意とともにチケットも買ってしまったのだが、案の定、何の目新しさもないファンタジー・アドベンチャーだった。ジェレミー・アイアンズとジョン・マルコヴィッチという名脇役も無駄使い。何を考えて映画化したのか、プロデューサーの話を是非とも聞いてみたいものだ。

 

 細かいことはどうでもいいとして、一番入り込めなかったのが、ドラゴンライダーである主人公のエラゴンとドラゴンの意思疎通手段。手段っていうか、2人は心の声で話せるという設定なんだけど、その心の声が、ナレーションの如く画面にかぶるのだ。そうやって人間の声で話されちゃうと冷めちゃうんだよなぁ。ドラゴンにも人間性みたいのを、っていう設定にしたいんだろうけど、やり過ぎだと思う。まぁ、原作がそうなってるんだから仕方ないのかもしれないけど、更にドラゴンの声がレイチェル・ワイズなので(ドラゴンは雌なのだ)、ドラゴンが話す度にレイチェルの優しげな顔が浮かんできてしまう。どうにも違和感を拭いきれなかった。

 

 一応クライマックスくらいは盛り上げるつもりがあったのか、エラゴンがドラゴンの背中に乗って敵と対決するラストは絵的にも頑張っている。おいおい、いつからそんなに魔法が使えたり、身のこなしが軽くなったりしたんだー、とツッコミを入れたくなるが、それより何より問題なのは戸田奈津子の字幕である。17歳の少年、しかも今時の若者的な描かれ方をしている少年が、ここぞという時に 「いざ勝負だ」 なんて言うか? 「いざ」 なんて。せっかく観てるこっちも頑張って盛り上がろうとしてるのに、階段を一段踏み外したように白けてしまった。どうかと思うなぁ。

 

 多分、原作は 「物語」 というよりも、ゲーム感覚のストーリーなんだろうね。で、それをそのまま映像化しちゃったから、痛みも何もない特撮映画になっちゃった。しかも、この手のCGは観客の目も肥えているので、別に何の驚きもないからヒットもしない。原作は3部作らしいし、どう考えても続編を作らないといけないような結末になっているが、このテイストのまま3作目まで行くと金と時間とジョン・マルコヴィッチの無駄使いになるので、本当に止めた方がいいと思う。どうでもいいが、ロバート・カーライル(『フル・モンティ』 の主人公)がマルコヴィッチの手下役で出てくるのだが、言われないと分からないような醜顔メイクで驚いた。これならカーライルじゃなくても良いのでは・・・