ゴッド・アンド・モンスター GODS AND MONSTERS


directed by Bill Condon

cast :  Ian McKellen  Brendan Fraser
Lynn Redgrave  David Dukes
Todd Babcock  Kevin J. O'Connor
Lolita Davidovich
('00 03 18)



 『フランケンシュタイン』や『フランケンシュタインの花嫁』で知られるジェームズ・ホエール監督の、過去の傷と、晩年の生への苦しみを、彼の家にやって来た一人の若い男庭師との関係を通して浮き彫りにしていくというこの作品だが、アカデミー賞をとったビル・コンドンの脚色と演出による二人のやり取りが上手く描かれていて、見応えのある秀作ドラマに仕上がっている。

 ホエールを演じるのは、イギリスの名優、イアン・マッケラン。いかにもゲイ好みな逞しい体つきの庭師クレイトンには、ブレンダン・フレイザーが扮し、ホエールの世話をする家政婦にリン・レッドグレイプと、役者が揃っている。フレイザーは、『ジャングル・ジョージ』や『ハムナプトラ 失われた砂漠の都』なーんて、おバカな作品で筋肉隆々ヒーローをやってるだけかと思ったら、二人の名優に囲まれてひくことなく対等に渡り合っていて、ちょっと見直してしまった。また、リン・レッドグレイブ(『シャイン』でジェフェリー・ラッシュと結婚する人)の映画ごとの七変化も見事だが、この映画の見所は、真に迫り過ぎのイアン・マッケランに尽きる。ホエールと同じようにゲイであり、それをカミングアウトしているマッケランだが、本物のうえに上手いときてるので、コワイ。取材に来た学生に、質問するごとに服を脱いでいくことにしようだの言ってみたり、フレイザーのカラダを物欲しげな眼で眺めてみたり、しまいにゃぁ、やっぱりフレイザーに襲いかかってみたりする。ルパート・エヴァレットはゲイ・コメディエンヌ(?)として新境地を開拓したが、マッケランの場合、シリアスで勝負してるので、『ゴールデンボーイ』でもそうだったがギャグにならない恐ろしさがある。鬼気せまる演技とは、まさにこのこと。どーでもいーが、『ゴールデンボーイ』のブラッド・レンフロやら、『ゴッド〜』のフレイザーやら、マッケランに食われなかったのかな。マッケランはこの作品でアカデミー主演男優賞にノミネートされた(レッドグレイブは助演女優賞に)が、授賞式でのノミニーの出演シーンVTRが、例の‘質問ごとに服を脱いでよ’シーンだったのは、ちょっとスレスレのギャグで面白かった。

 人間の奥底に潜む狂気を、不思議な、それでいて奇妙に現実的な恐怖に満ちた演出でえぐり出した『ゴッド アンド モンスター』だが、最後は意外にも爽やかである。ホエールとクレイトンの間に芽生えはじめていた、かすかな友情と理解が、良い後味を残していた。





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