グッバイ、レーニン! GOOD BYE, LENIN!


directed by Wolfgang Becker

cast :  Daniel Bruhl  Kathrin Sass
Maria Simon  Chulpan Khamatova
Florian Lukas  Alexander Beyer
Burghart Klauβner  Michael Gwisdek
Armin Dillenberger  Jurgen Holtz
Christine Schorn  Ernst=Georg Schwill
Stefan Walz  JurgenVogel
('04 03 10)



 ベルリンの壁崩壊前の東ベルリン。心臓発作で意識不明になったアレックスの母クリスティアーネは、壁の崩壊や、その後の東ベルリンの劇的な変化も目の当たりにすることなく眠り続けた。が、しかし。倒れてから8ヵ月後、突然ママが目覚めた! わずかなショックも命取りになると警告する医者。社会主義運動に身を捧げて来た母親が壁の崩壊なんか知ったら大変と、家族や友人を巻き込んで東ドイツ体制が続いているフリをする、アレックスの奮闘が始まる!

 監督のウォルフガング・ペッカーは、「ベルリンの壁の崩壊という歴史を伝えつつ、あくまで家族のつながりを描きたかった」 と言っていて、確かに 『グッバイ、レーニン!』 は監督の狙い通りの映画になっていると思う。コメディ・タッチというのも多分に影響しているとは思うが、壁の崩壊や東ベルリンの変化は、あくまで登場人物の視点からとらえて、アレックスと母親を中心とした家族の物語をしっかりと、べたべたしないで描いている。俳優達もみんな、ワキまですごく自然。かつ、暖かみのある演技だ。観ているこっちもいい気分になる。こういう、アッサリした距離の保ち方で人間関係を描くのは、やっぱりヨーロッパ映画ならではなんだろうなー。

 母親の部屋を入院前の様子に変えることから始まり、東ドイツ製のピクルス探し、友人と協力してニセのニュース番組の製作と、アレックスのウソはどんどん広がる。果ては、東ベルリンが西ドイツの移民を受け入れているとまで(!)。姉や恋人も言うように、どうしてそこまでするのか、アレックスにどこかで共感できなくなるのだが、次第にアレックスが母親のためだけではなく、自分にとっての理想の生活を具現化しているということが分かってくる。壁の崩壊前は反社会主義デモに参加していたアレックスも、壁の崩壊を喜び、新しい時代の流れに乗ろうとしてはいるが、母親と暮らしていた思い出は全て東ドイツ時代なのだ。それを懐かしく思い、再現しようとするアレックス。壁の崩壊も母親と一緒に目の当たりにしたかった。その想いも、少年の頃のヒーローの宇宙飛行士を新たな指導者にするというオマケつきで、ラストで結実する。ある種の御伽話のようだけど、だからこそ微笑ましく、とても心地よい。そういう点でも話の設定が映画全体の持ち味になっていて、下手に現実的な話に走ったりしないあたりが、すごく上手いと思う。

 音楽は 『アメリ』 のヤン・ティルセン。『アメリ』 もやっぱり御伽話というか、ファンタジー的なところがあって、そんなテイストが今回も彼の音楽とピッタリ。あと、予告編でレーニン像のシーンを流したのは失敗だ。一度観てると感動が薄れる。くぅ。何てことを。





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