理想の女(ひと) A GOOD WOMAN


directed by Mike Barker

cast :  Helen Hunt  Scarlett Johansson
Mark Umbers  Stephen Campbell Moore
Tom Wilkinson  Milena Vukotic
Roger Hammond  John Standing
Diana Hardcastle  Shara Orano
('05 10 02)


 文豪オスカー・ワイルドの 『ウィンダミタ卿夫人の扇』 の映画化である。同じくワイルド原作で、最近映画化された 『理想の結婚』 や 『The Importance of Being Earnest(日本未公開)』 を見てみると、どちらもキャストがなかなか豪華だが、こういう、セリフが面白くて舞台向けな戯曲の映画化は、やっぱり上手い俳優の説得力ある演技じゃないとね。そこで、今回のスカーレット・ヨハンソンとヘレン・ハントだ。名実共に急上昇中のヨハンソンは心配いらないだろうが、演技派でも何でもない、タレ目すまし顔女優のハントで果たして大丈夫なのか。

 これが、意外にもいい。オスカー受賞後、実はそんなに多くの映画には出ていないので、気づけば 『恋愛小説家』 以降の出演作品は全部観てたんだけど、一度もいいと思わなかったヘレン・ハントが、初めていい演技をしてると思えた。ハントが演じるアーリンは、1940年代の社交界からつまはじきにされながらも多くの男と関係を持つ、奔放な恋愛遍歴の持ち主。そして、ヨハンソン演じるメグの夫に近づき、密会を重ねるのだが、今回は、『スコルピオンの恋まじない』 で見せたシワ顔さえも武器にして、年季ある女の演技を見せる。その表情や佇まいからは、伊達に修羅場をくぐりぬけてないだろうなぁ的な余裕や、そんな生き方で自然と身についた強さと孤独さがにじみ出ていて、ヨハンソンの前では貫禄すら感じさせるのだ。『ウィンダミア卿夫人の扇』 が原作のタイトルたる所以である、アーリンが自分の幸せを犠牲にしてメグをかばうシーンでは、これまで続いた軽い役では見られなかったハントの重みのある演技が、そのシーンを映画の密かなクライマックスにしている。そんなドレスを着るのは痛々しくてムリがあるんじゃない感も、この役にピッタリだったりして、タレ目のコメディ女優から一皮向けたヘレン・ハントなのでした。

 物語としては何てことない展開だが、原作を知らなかったので、途中の展開には若干ビックリ。ワイルド原作じゃなければ、ただの世俗的なストーリーで終わったと思うが、それでもセリフの面白さで飽きさせない。そのセリフを話す俳優達が上手いのは勿論だが、その中でもトム・ウィルキンソンはうなるほど見事。彼のおかげで映画の格が1ランク上がったと思う。実際、この人が出てれば映画がメタクソであることはまずないので、安心して楽しめる俳優の一人である。次回作の、エミリー・ワトソンと心理劇を繰り広げる 『SEPARATE LIES』 も楽しみだ。





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