ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ
        HEDWIG AND THE ANGRY INCH


directed by John Cmaeron Mitchell

cast :  John Cameron Mitchell  Michael Pitt
Miriam Shor  Stephen Trask
Theodore Liscinski  Rob Campbell
Michael Aranov  Andrea Martin
Alberta Watson  Ben Mayer-Goosman
Maurice Dean Wint
('02 06 01)



 赤い傘をさしながら雑踏をかきわけていく、派手なブロンドのウィッグに、大きなサングラスの女。さびれたライブハウスに入った彼女は、マイクを前にしてド派手ファッションの中、突然自分の半生を歌い始める。やばいー。このイッちゃいそうなノリにはついていけないかもー、と思っていたが、気づくと釘付け。しょっぱな、ヘドウィグが歌う ”TEAR ME DOWN” でひきつけられ、”ORIIGN OF LOVE” でノックダウン。そして、ラストのトミー・ノーシスが歌う ”WICKED LITTLE TOWN” で胸が震えた。ヘドウィグの生き様に、ヘドウィグの愛の深さに打たれてしまった。くぅ。

 東ベルリンで生まれた男の子、ハンセルは黒人米兵ルーサーに見初められ結婚。母親の名前、ヘドウィグを名乗ってアメリカへ渡る。その時に性転換手術を受けて、残ってしまった”アングリーインチ”こと1インチの男の名残。アメリカへ渡ったヘドウィグは、ルーサーに捨てられ、17歳の少年トミーと結ばれるが、ヘドウィグのアングリーインチを知ったトミーは、ヘドウィグを拒絶する。さらに、トミーはヘドウィグと一緒に作った曲をひっさげて、全米チャートNO.1を飾るロックシンガーとなってしまった。深く傷ついたヘドウィグは、各地でコンサートを開きながらトミーをのツアーを追いかけていく。

 『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』 は、オフブロードウェイでカルト的人気を博して2年半上映されたミュージカルの映画化である。前半、ヘドウィグの半生が、素敵なロックナンバーと共に描かれ、楽しくなるが、トミーとの愛を語る後半が圧巻。ジョン・キャメロン・ミッチェルは、舞台に引き続きヘドウィグを演じ、脚本、監督も手がけていが、そのなりきりようと言ったら、もう舌を巻いてしまうほど。どこからどう見てもロック・ミュージカルな『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』だが、ヘドウィグの存在のリアルさに圧倒されてしまうのだ。ヘドウィグの存在そのものが映画のテーマとなり、それ自体が、誰もがカッコイイと思うであろう、誰もが惚れてしまうであろう愛の姿。それは、先にも書いた、ラストでトミーが歌う”WICKED LITTLE TOWN”のシーンで、突き刺すようにスクリーンからドクドクと伝わってくる。J・C・ミッチェルもさることながら、トミーを演じるマイケル・ピットの純粋さに溢れたオーラにもやられた。痛々しくて、切なくて、傷つきやすい、それが愛の姿。

 『ムーラン・ルージュ』 のような豪華絢爛な世界でのミュージカルに乗せられる、まっすぐな愛の姿もいいが、汚れた世界でミュージカルに乗ってリアルに映し出されるまっすぐな愛の姿も素敵だ。観終わった後に思わずサントラを買いにタワレコに駆け込んでしまいました。





トミー・ノーシス役の Michael Pitt
(マイケル・ジャクソン役ではない)


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