エヴァの告白 THE IMMIGRANT

 

directed by James Gray

cast : Marion Cotillard  Joaquin Phoenix

Jeremy Renner  Dagmara Dominczyk

Angela Sarafyan  Gli O'brien

Ilia Volok  Maria Wampuszyc

('14 03 04)

 

 

 『裏切り者』 『アンダーカヴァー』 『トゥー・ラバーズ』 と、ホアキン・フェニックスと組み続けてきたジェームス・グレイ監督が、4度目となるホアキンとのタッグで描く時代物のメロドラマ。1921年、戦火のポーランドからニューヨークへ移住してきたエヴァ(マリオン・コティヤール)は、入国時の検疫で妹が結核と診断されたために妹と離れ離れになり、迎えに来るはずの叔母夫婦も来ず、入国することができずに途方に暮れていた。そんな彼女に救いの手を差し伸べたブルーノ(ホアキン・フェニックス)は、劇場で踊り子たちを踊らせて売春を斡旋しており、妹のためにお金が必要なエヴァはブルーノに言われるがままに娼婦へと身を落としていく。

 

 プロット自体はよくあるメロドラマなうえに、冷静に考えるとどのキャラクターも魅力があるとは言えず、ヒロインに至っては 「芯の強さとわがままは紙一重」 な言動を繰り返していて、本来ならば 「なにこの人達」 となるのだが、ホアキンのさすがの演技力と暗さを湛えた瞳、そしてマリオンの美しさと目力のおかげで、二人がそれぞれにとって辛い時代を生きようとする姿に心を打たれる瞬間があった。これはもう、この二人の演技を堪能する映画。そういう視点で観れば非常に見応えのある物語だ。ラストシーンに至っては、マリオンとホアキンが演じることで、そういう風にしか生きることができない二人の哀しさが滲み出ていて素晴らしかった。

 

 一方で、もう一人の重要人物であるエミールを演じるジェレミー・レナーには何とも言えない小物感が漂っていて、そもそもそういう演技なのか、それともこれが彼の存在感の限界なのか。『アメリカン・ハッスル』 でもそうだったんだけど、どうしても今っぽい軽さが抜けないというか、当時を生きてるように見えないというか。おかげで、彼が登場する度に物語の重厚感が削がれていくような気がするのであった。使い方要注意な俳優である。