イノセント・ボーイズ
      THE DANGEROUS LIVES OF ALTER BOYS


directed by Peter Care

cast :  Emile Hirsch  Kieran Culkin
Jena Malone  Jodie Foster
Vincent D'Onofrio  Jake Richardson
Tyler Long
('02 10 25)



 1000円均一映画の日に観に行ったのに、劇場には20人もいなかった(おバカ映画の 『ズーランダー』 には行列ができてたのに!)。そういう僕は、キアラン・カルキンとジェナ・マローンが悩める10代の少年少女を演じると聞けば観ないわけにはいかないってことで劇場へ。二人とも見事に子役から脱皮するであろう、将来のある役者だからだ。登場人物は、カトリック系の学校に通う悪戯好きでエネルギーを持て余している少年4人と、一人の少女、そして校長のシスター・アサンプタ。

 主人公のフランシス(エミール・ハーシュ、健闘)がプロ顔負けの漫画を書くという設定で、劇中、彼らの内面をアニメーションで表現するシーンが度々映し出される。『THE ATOMIC TRINITY』 という架空のコミックで、四人の仲間が怪物に変身して、自分達を目の敵にするシスター・アサンプタにそっくりな悪者軍団を倒していくというストーリーなのだが、これがいい。『スポーン』 のトッド・マクファーレンによるもので、アニメーションの質が高いのは当然だが、彼らの怒りや悲しみを、感情を誇張して描くアニメの世界では十分に伝えられるということか。パワーのある映像だ。だが、それが映画のメインになってしまって実写部分で語ることが少ないのは問題。それなりに屈折しかかっている主人公達の思いはわかるし、上手く描いているとは思うが、突然訪れる悲劇は(と言っても展開としては読めるのだが)必要だったのか? 彼らが少年の段階で答えを見つけようとすることは、そこまで事態が進まないとわからないことなのか? そこまでに至る彼らの内面は、やっぱり俳優達の力で見せてほしかった。

 正直、キアラン・カルキンは 『サイダーハウス・ルール』 や 『ミュージック・オブ・ハート』 のような笑顔の似合う役に慣れていたのだが、これからの出演作を観ればカワイイだけの子役にとどまるつもりがないのは分かるし(『IGBY GOES DOWN』)、今回はその転機になる作品。キアラン演じるティムと、フランシスが淡々と道を歩くシーンで、フランシスは、自分よりどうしようもない想いと現実を抱えながら、それを受け入れて生きているティムの内側を少し垣間見るようになる。道で死んでいる犬一匹をめぐる、何てことないダイアログから突然浮き彫りになるティムの孤独。このシーンの二人が特にいい。そして、彼らを始めとする少年4人に違和感はない。ただ、ジェナ・マローンは「不幸なワケあり少女」がもはや彼女のスタンダードになってしまい、この映画のような正統派ワケあり少女役は予想通りという感じがする。ここらへんにハマリ役の落とし穴。だって眼がいつも一緒なんだもん。

 この映画に出てくる大人の中で、唯一少年たちに「味方」として映る体育教師を演じるのはヴィンセント・ドノフリオ。ワキ役ながら上手くて光る。『ザ・セル』 の犯人役と同一人物とは思えない変化ぶりである。さすが。





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