インビクタス 負けざる者たち INVICTUS

 

directed by Clint Eastwood

cast : Morgan Freeman  Matt Damon

Tony Kgoroge  Patrick Mofokeng

Matt Stern  Julian Lewis Jones

Adjoa Andoh  Marguerite Wheatley

Lelety Khumalo  Sibongile Nojila

('10 02 07)

 

 

 『ミスティック・リバー』 以降、傑作、もしくは傑作に準ずる誇り高い作品を撮り続け、昨年は 『グラン・トリノ』 という最高傑作を送り出したクリント・イーストウッド監督の最新作は、ネルソン・マンデラの感動の実話だ。舞台は南アフリカ共和国。1994年にネルソン・マンデラが27年の投獄生活から解放され、黒人初の大統領に就任するところから映画は始まる。マンデラは、大統領就任翌年に南アフリカでの開催を控えたラグビー・ワールドカップを通して、それまで対立しあっていた白人と黒人たちを人種の壁を越えて一つにしようとする。マンデラを演じるのは 「この人なら納得」 なモーガン・フリーマン。南アフリカのラグビーチーム、スプリングボクスの主将ピナールをマット・デイモンが演じる。

 

 『チェンジリング』 や 『グラン・トリノ』 のように、人間の尊厳を描いたら右に出るものはいないイーストウッドらしい題材、そしてその正攻法の演出はスポーツものに向いているという持論から(『ミリオンダラー・ベイビー』 で証明済み)今回も楽しみにしていたのだが、前2作ほどの感動は正直なかった。もちろんイーストウッドの骨太な演出は健在で、ラグビー・ワールドカップの優勝を通して国民たちが一つになっていく様は感動的ではあるのだが、どこか物足りなさが残った。多分それは、マンデラという人物、もしくはピナールという人物の内面が、ただでさえ感動的な実話の裏に隠れてしまい、浮き彫りにならなかったからだと思う。イーストウッドの上手さが手慣れた方に転んでしまっているのだ。もう少し長くてもいいから、そこらへんをもっと深く掘り下げて描いてほしかった。

 

 揃って今年のオスカーにノミネートされたモーガン・フリーマンとマット・デイモンだが、この2人にしてみればそこまでのものでもないと思う。特に、フリーマンが高い志を持った歴史的偉人を演じるというのは 「いかにも」 なキャスティングで、少し白けてしまう感アリだ。デイモンも良かったけど、昨年公開された 『インフォーマント!』 で役者としての幅の広さを見せてくれた後なので、それほどでもないような気がしてしまう。肝心のラグビーシーンで出番があまりなかったのも気になってしまった。