千と千尋の神隠し SPIRITED AWAY


監督 : 宮崎 駿

声  :  柊 瑠美  入野 自由  内藤 剛志
沢口 靖子  夏木 マリ  菅原 文太
上條 恒彦  小野 武彦  我修院 達也
玉井 夕海  大泉 洋  はやし・こば
神木 隆之介
('01 07 29)



 やっぱり宮崎駿ってすごいなぁ、って今さらながらに感嘆させてもらいました。正直、前作『もののけ姫』はスゴイ映画だったかもしれないけど、肩に力はいりまくりって感じで、トトロファンとしては、どうもしっくり来なかったのだ。それが今回はどうだ。神様と化け物が入り乱れる御湯屋に出てくるキャラクターのなんと愛らしいこと!セリフのない神様たちでさえ、いるだけで活き活きしている。特に、化け物「カオナシ」の寂しさとおかしさといったらないのだ(この化け物、しまいにゃぁティーカップで紅茶を飲んだりする)。なんでこいつ、顔がない(お面をかぶってる)のに、こんなに表情豊かなんだろう。なんでこんなに表情豊かに描けるんだろう。
 もちろん、マックロクロスケならぬススワタリや、ミニトトロが出てくるのもたまらないサービス。この映画で一番悪者(そうでもないけど)である湯婆婆[ゆばーば]でさえも、宮崎駿はユニークに、そして愛を注いで描いてるよね、ってのがよくわかる。この婆、鼻デカイなぁと思ったら、なんとマントに身をくるんで空を飛ぶと、でかい鼻がまるで嘴になるのだ。このセンスに脱帽です(しかも、お供のそっくりさんな鳥は[湯バード]!)。凄い数のキャラクター、しかも人間じゃない彼らに、素晴らしい命を吹き込んだという点で、もう十分宮崎駿ワールドを堪能させていただきましたと、いやぁ。大満足大満足。

 で、うまいと思うのは、女の子の描き方。ナウシカとかラピュタとか、はたまたマジョタクなどの主人公とは違って、ごく普通の女の子が、突然紛れ込んでしまった不思議な世界でブタにならないように一生懸命働いていくのだが、千尋は不思議な世界に入り込むと、まずハクという少年に助けられる(このハクの声優が噛みそうで噛みそうで・・・)。優しくしてくれたハクだが、彼が頭の上がらない湯婆婆の前で初対面のように振る舞い、千尋はちょっと寂しくなる。「無駄な私語はよせ」なんて言われると、ふくれっ面をするんだ。そうなんだよね。大人ならちょっと考えればわかるようなことなんだけど、子供ってそう。しょんぼりとかじゃなくて、ふくれっ面。それが当然なんだけど、その当然を描けてない子供の映画ってたくさんある。

 湯婆婆の声に夏木マリ、釜爺の声に菅原文太ってのがエライ。偉すぎる。文ちゃんのおとぼけぶりがもうサイコーです。こんな強烈なキャラ、この二人だから出来るワザでございます。けど、前に座ってた女の子。千尋の両親がブタになっちゃうシーンで泣き出しちゃって、ずっとお母さんと外にいたみたいでかわいそうでした。確かに、ちっちゃい子には怖いかもしんない。そういう点でも今までの宮崎駿作品とは違うなぁ。引退引退と言い続けて、ここでこんな映画作っちゃうなんて、なーんだ。全然衰えてないどころか、ますます創造力たっぷりじゃないですか。



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