ラスト サムライ THE LAST SAMURAI


directed by Edward Zwick

cast :  Tom Cruise  Ken Watanabe
Hiroyuki Sanada  Koyuki
Shichinosuke Nakamura
Masato Harada  Togo Igawa
Shin Koyamada  Sosuke Ikematsu
Aoi Minato  Seizo Fukumoto
Billy Connolly  Timothy Spall
Tony Goldwin
('04 01 03)



 まっすぐな話には、まっすぐなキャストとまっすぐな監督が合う。エドワード・ズウィック監督もトム・クルーズも直球勝負の人だ。渡辺謙もトムクルにひけをとらないまっすぐな存在感を見せる。面白みはないが、映画としての見ごたえは十分。

 時は明治、西洋化の波が押し寄せる日本にやって来たオールグレン大尉(トム・クルーズ)。日本の軍隊の近代化のための教官として雇われた彼は、近代化に慣れない兵士たちを率いて戦いに臨み、捕虜として捕まってしまう。そこは西洋化に毒されることなく、侍としての己を捨てない人々の村。その村で時を過ごし、渡辺謙演じる武士の勝元や、村人達との交流の中でオールグレンは侍の精神に、そして今の自分になくなってしまった戦いの精神に惹かれて行く。

 渡辺謙がイイのは評判通り。彼が演じる勝元のキャラクターは映画そのものを支えている。物語の必然性としては不自然なまでに英語を上手くあやつり、日本人としては実に37年ぶりに演技部門のオスカーにノミネートだ。一方トムの方は、最初の酒におぼれて自暴自棄気味な演技が激情型でわざとらしく、またかと思ってしまったが、勝元に会ってからは違和感がない。まるで、オールグレンのキャラクターと共にトムの演技も、サムライ・スピリットの 「静」 に感化されたよう。

 勝元の村が和風ホビット庄にしか見えないとか(ロケ地はNZ)、真田広之の出番が意外に少ないなとか、いや、そもそも勝元の英語が流暢過ぎとか、ツッコミどころはいくらでもあります。が、話の基本的なところは押さえてあるし、ミスマッチなキャストもなし。何より、合戦のシーンの迫力が見事だ。日本の大河ドラマに慣れている身としては段違いの面白さで、忍者バトルのシーンだけでも氾濫するハリウッド・アクションの水準を易々越えている。銃と刀、歩兵と騎馬兵という戦いも効いていて、是非是非、日本の大河ドラマもハリウッドで撮ってほしいものだ。そして、合戦シーンの 「動」 と、登場人物の丁寧な心理描写による 「静」 の対比も効いている。泣き所もツボをおさえてあって、緩急つけた演出にハマりました。最後10分ほどの展開がいくらなんでも安易すぎないかと思うのだが、というか、なくてもいいんじゃないの的な展開なので(天皇役の中村七之助がイマイチ過ぎる)、そこが大きくマイナス。小雪は演技と言えるほどの演技をしていないが、あの独特の雰囲気で採用されたのか?

 正直言って製作発表当時は、いや、予告編を目にした公開直前まで、トムクルが長髪で日本の侍になるってどーなのよとタカをくくっていたし、誰が観たがるんだろうと思っていたんだけど、フタを開けてみれば日本で大ヒット。そうかぁ。あの予告編でみんな観る気になのかぁ。それとも日本人がハリウッド映画出演、しかも主演がトムクル・ザ・大スターということで足が劇場に向かうのかな。まぁ、面白かったから嬉しい誤算だけど。





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