一般教養の少ない(つまり1970年代なんたらかんたらと言われてもサッパリな)僕にとって、この映画の見所は、なりきり演技のジョニー・デップと、監督のテリー・ギリアムの変人ぶりでしょう。『シザーハンズ』『ギルバート・グレイプ』『エド・ウッド』『ニック・オブ・タイム』 と、どの映画でも見事に役になりきって不自然さのかけらも感じさせなかったジョニー・デップが、麻薬でラリっちゃう男を演じる。普通の役で深いうまみを感じさせる彼が、いかにも的な演技になりそうな役をどうこなすか。ココが楽しみだったのね。
冒頭、のっけから幻覚のコウモリを追い払う仕種。なんかかなりイッちゃってます。始終ガニマタで歩いてみたり、帽子を取ったらハゲてたり、それでいてユーモア感覚も垣間見せてくれる。相棒役のベネチオ・デル・トロは、役作りで信じられないほどのデブになってて驚かせてくれるんだけど、クスリでラリっちゃったりして苦しんだりするシーンはギャーギャー言ってるだけで少々ウザい。それでも、デル・トロを受けるデップは絶妙で、それでいて自分がイッちゃうシーンは全くクドくなく演じている。いやぁ。デップにはホントに感嘆するしかないって感じ。
物語は、この二人の奇行が軸になって進むので、他の出演者たちは、全くもってオマケなのだが、やっぱり奇麗なキャメロン・ディアス(『カジノ』 のシャロン・ストーンを思わせる)や、こんなキュートな役も、しかも、こんなに少ない出番で印象強かったクリスティーナ・リッチ他、エレン・バーキンやゲイリー・ビジーなんかもワキではまっている。ロン毛のヒッチハイカーにトビー・マグワイアってのには驚いた。
そんな役者陣をイメージを裏切るように使って一番楽しんでるのは、監督テリー・ギリアム本人だろう。『12モンキーズ』 でクセモノの脚本を見事に料理し、一歩間違えたら万人に嫌われかねない独特のセンスで 『フィッシャー・キング』 をタダモノでなはい感動作に仕上げた彼を、僕は気に入っている。今回も、デップが麻薬で幻覚を見るシーンの映像感覚はトコトンやってくれます。絨緞の草模様が伸びてきて足にからみつくわ、バーの客は全員イグアナになるわ、人の顔は怪獣になるわで、好き放題。観ていて気持ちよかったー。顔の歪め方とか、デップのアップの撮り方とか、面白くてしょうがない。でも結局、もっとスゴくて、かつイッちゃってるのは、監督の感覚についていっちゃったデップ自身でしょう。クセモノ監督と組んだ彼は必見。ティム・バートンとの次回作 『スリーピー・ホロウ』 に大きく期待。
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