ロード・オブ・ザ・リング
 THE LORD OF THE RINGS : the Fellowship of the Ring


directed by Peter Jackson

cast :  Elijah Wood  Ian McKellen
Viggo Mortensen  Sean Bean
Orlando Bloom  John Rhys-Davies
Ian Holm  Hugo Weaving
Liv Tyler  Cate Blanchett
Sean Astin  Billy Boyd
Dominic Monaghan  Andy Serkis
Sala Baker  Christopher Lee
('02 03 22)



 面白かったです。「世界で一番売れた」原作は読んだことないないけどね。それにしても、イライジャ・ウッド、主人公のクセに頼りなさ過ぎだろー。

 3時間、濃い。ハリポも2時間半と長かったが、映画全体を覆う、ハリポと対極にある暗い雰囲気に、ひたすら続く壮絶な闘い(そしてイライジャ・ウッドの終始困った顔)。ずっしりと見応えたっぷり。観てて思ったのは、よくこんな映画作ったなぁ、ということ。いや、よくまぁこんな映像世界を創り上げることができたなぁ、ってことだ。これがもう、完璧な世界が繰り広げられる。今までも 『マトリックス』 や 『ハリー・ポッターと賢者の石』 あたりで驚異的な映像マジックを観ることは出来たけど、それとは別次元の凄さだ。映画の、いや、イマジネーションのスケールが違う。『ロード・オブ・ザ・リング』 は観た後に心が揺さぶられる映画では決してないが、ピーター・ジャクソン監督が映像化した世界そのものが後を引く。観ている間はこんな感覚になるとは思わなかったが、後になって思えば思うほど、凄いものを観たという気になる。そして、「凄いものを見せていただきました」映画にありがちな、「けどそれだけですね」感がない。本当に、ホンモノの凄さを体感した (なんか「凄い」ってばっか言ってるな、俺)。

 観る前には批判的な意見をよく聞いた。完結しないで終わっちゃって拍子抜けなんですけどとか (3部作の第1作目ですから)、旅ばっかしてるじゃんとか (原作の邦題知らんのか、オマエは)、ゲームみたいとか (勿論)。きっと原作はもっともっとエピソードがあって色々と繋がっていくに違いない。それは 『ハリー・ポッター〜』 にも当てはまることだが、それを上回る映画そのもの「世界」に圧倒されてしまうのだ。くぅっ。

 監督のピーター・ジャクソンは、『バッド・テイスト』 、 『ミート・ザ・フィーブルズ / 怒りのヒパパタマス』(!) 、 『ブレインデッド』 などを過去に作っている、スプラッタ・ムービーを畑とする監督で、今回も描写が多少グロい。が、むしろ彼にしては抑えた方だろう。そして、そのテイストが 『ロード・オブ・ザ・リング』 の世界に不可欠なものとなっている。『ロード・オブ・ザ・リング』 は、彼の母国ニュージーランドで撮影されているが、ニュージーランドの美しい自然の風景を捕らえ、それとは対照的な冥王サウロンの暗黒世界を徹底的に描く。特に、CGを駆使した後者の世界は圧巻なのだ。主人公と仲間が旅をして、アイテムを手にし、魔物と闘い、まるでゲームの世界を映像化したみたいと言われそうだが、そもそも現在のRPGに影響を与えているのが 「指輪物語」 であり、当然の結果である。モリアの地下宮殿のシーンはまさにそれの極みで、ゲームの世界をここまでリアルに映像化されると大興奮!

 キャストがニクイ。主人公フロドを演じるイライジャ・ウッドは、青い瞳で眉間にシワを寄せるのが似合ってる。原作では絶世の美女と言われるアルウェンをリヴ・タイラーが演じ、えー!?と苦情が聞こえてきそうだが、なぜだろう。浮ついた囁き声と、意志のある瞳、人間離れした雰囲気を漂わせるのに成功している。エルフの女王ガラドリエルを演じるのは、今絶好調のケイト・ブランシェットだ。これは少々難がある。登場シーンでやや平坦な顔立ちに見え、インパクトに欠けた。彼女の魅力が生かしきれていない。

 他にも、エルフの弓の名人レゴラスを演じるオーランド・ブルーム(これが映画デビュー)、サルマン役のクリストファー・リーなど、しっかりと地についたイメージで演じていて、この映画に馴染んでいるが(フロドの友人のホビットを演じる輩は今回出番が少ないので次回に期待)、何より嬉しいのがアラゴルンを演じるヴィゴ・モーテンセンと、ガンダルフ役のイアン・マッケランの活躍!これまで 『ダイアルM』、『クリムゾン・タイド』 など、そこそこのヒット作に出ていたモーテンセンだが、これぞ代表作と言える作品にとうとう出会った。風来坊だが、実は人間の王の末裔というアラゴルン役は、彼のワイルドなのに端正な雰囲気にピッタリ。イアン・マッケランは、もう言うことなし。この映画の格調を一人で何ランクも上げている。

 原作では、2作目以降に「指輪戦争」なる闘いが繰り広げられるらしい。つまり、2作目以降はよりアクションが炸裂!やっぱり、銃なんか使わずに生身の人間の闘いが一番見せてくれると思う。自らの剣と弓矢で敵に挑んでいく姿が、冒険活劇には欠かせない。その意味でも 『ロード・オブ・ザ・リング』 は文句なしだ。

 面白かったのは、ガンダルフとサルマンの戦い方。二人とも魔法使いなので、杖を持って「ほいやー!」「とーっ!」「はーっ!」とか言いながら、相手には指一本触れずに相手を吹き飛ばす。攻撃する時に杖を突き出しているので、一見杖を武器にしてるのかと思いきや、Mr.マリックのハンドパワー状態で(静電気で紙が倒れるやつ)相手を倒していくのが楽しかったー。何か笑いそうになっちゃって。

 今年のオスカーナイトでは13部門にノミネートされたにもかかわらず、主要部門でない4部門で受賞となり (作曲賞・撮影賞・音響賞・視覚効果賞) 、式の後半では映画の存在が忘れられそうな勢いだった。ちょっと残念だが、賞の行方は分散した方が面白くなる。それにしても予想以上に少なかったなぁ、受賞数。





アラゴルンを演じるヴィゴ・モーテンセン

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