『めぐりあう時間たち』 や 『ミスティック・リバー』 なんかメじゃない。「こんなキャスト反則級だよ」 もここまで来たか。だってさ。ヒュー・グラントにコリン・ファースに、えーっとえーっと、他にもえーっと・・・・えーい、もう、キャスト一覧を上から見てけばわかる通り! 堂々と主役を張れる売れっ子俳優から、名ワキ役、今が売り出し中の若手達、んでもってエマ・トンプソンとアラン・リックマンにリーアム・ニーソンなんてベテランも取り揃えて、一体映画何本分のキャストが集まったんだ。
独身のイケメン英国首相と庶民出身の秘書、夫の浮気に気づいた妻、同僚に2年7ヶ月片思いを続けているOL、親友の婚約者に恋してしまった男、ポルトガル語しかわからないメイドに恋に落ちた作家、落ちぶれたロック・ミュージシャン、学校の女の子に初々しくも恋をした少年などなど、9つのラブストーリーがクリスマスに向けて進行する 『ラブ・アクチュアリー』 は、色んな形の愛を見せてくれる。都合よく話が進む愛、現代のおとぎ話のような愛、ちょっとリアルで切ない愛、適当になってしまった愛と、まぁ要はラブコメのオイシイとこどりだ。ラストで主人公が相手を追って走るというのはラブコメの鉄則だが、今回は二人も踏襲してくれる。なんて欲張り、と思うのも無理はない。とうとう英国首相にまで登りつめたヒュー様だが、ヒュー様が英国首相なんて世界(さらには米国大統領がビリー・ボブ・ソーントン!)、あっという間に大混乱になるに決まっている。この時点で 『ラブ・アクチュアリー』 は基本的にマンガなんである。ウルサイことを言ってはいけない。豪華キャストの群像ラブコメ(?)なんだから、一度観始めたら楽しまなきゃ損くらいの勢いで観るのだ。
だが実際、9つの話の絡み方の上手さと、登場人物をカメラの奥で常に応援している(例え辛い愛の形でも)監督の優しい視線や、そしてラブコメにおいて何よりも重要なキャストの上手さに騙されて、浸りきらず、かと言って客観的になり過ぎもせずに2時間15分、彼らの姿に微笑んだり笑ったり泣けてきたりしてしまった。こういう、良くも悪くも大衆に受け入れられるラブコメって最近なかったと思う。あざといんだけど、気持ちいいあざとさみたいな。見事にやられたー、って感じ。ただし、やたらと流れるクリスマスソングやらラブソングの数々は狙い過ぎ。ちょっと白けちゃう。結局一番泣けるのは、ビル・ナイ扮する落ちぶれたロック・ミュージシャンの歌うヘボヘボのクリスマスソング(とダサダサのダンス)なのでした。
監督・脚本のリチャード・カーティスは、『フォー・ウェディング』 や 『ノッティングヒルの恋人』、『ブリジット・ジョーンズの日記』 など、ヒュー・グラントを書かせたら天下一品の脚本家だ。同時に、ラブコメを様々な角度から料理することでドラマとリアリティーの絶妙な配合をできる人でもある。今回も、それぞれのエピソードを似たり寄ったりにならないで描いてるし、今回が初監督とは思えない群像劇の演出の上手さは見事。こんなに豪華俳優盛りだくさんでも、それぞれの見せ場がちゃんとあって、登場人物多過ぎ! ってことにはならないのだ(その点、『X-MEN2』 に匹敵)。
その登場人物たちだが、『シャンプー台のむこうに』 と同じく絶好調のビル・ナイ、ウィノナ・ライダーを思わせる繊細さをのぞかせるキーラ・ナイトリー(『パイレーツ・オブ・カリビアン』)、芸達者でカワイイ子役のトーマス・サングスター(ヒュー・グラントの従兄弟!)など、みんな適材適所で観てて楽しい。シリアスな役が多いローラ・リニーも、今回はカワイく演じている。無名からスターまで並んだキャストは、誰一人違和感ないのだ。一番さりげなく上手かったのが、親友の婚約者に恋をしている男を演じるアンドリュー・リンカーン。ありがちで誰でもできそうな役柄だけど、とても自然に演じていて泣かせるのよ。彼の表情だけで何だか切なくなっちゃって。彼がクリスマスに想いを打ち明けるシーンは、この映画のベストシーンです。いや、どのストーリーも甲乙つけ難いんだけどね。観てて楽しいし、思い出しても楽しい。リチャード・カーティスの次回作に大きく期待しちゃおう。
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