ラブリーボーン THE LOVELY BONES

 

directed by Peter Jackson

cast : Saoirse Ronan  Mark Wahlberg

Stanley Tucci  Rachel Weisz

Susan Sarandon  Michael Imperioli

Rose Mclver  Nikki SooHoo

Reece Ritchie  Jake Abel

('10 02 14)

 

 

 幸せな家庭に生まれ育ち、自由に真っ直ぐに成長し、好きな男の子はいるけれど、まだキスをしたことがないという普通の女の子、スージーは、14歳で隣人の異常者に殺されてしまう。死後の世界(正確にはこの世と天国の間)を漂いながら、やりきれない憎しみと悲しみを抱える彼女と、彼女の家族との絆を描いたファンタジーのようなサスペンスのようなドラマのような物語。原作はベストセラーとなった小説ということで、そもそも原作が面白い話なのかどうか分からないのだが、まだ無垢な14歳の少女が死後の世界に行ってから現実の世界を見つめ、成長しながら天国へ旅立っていくというストーリーが根底にあるとは分かっていても、それが少女の父親や妹が犯人を突き詰めていく現実の世界でのストーリーにあまりリンクしないので、死後の世界、現実の世界でのそれぞれのエピソードは面白かったが、観終わってみると散漫な印象しか残らず、あまり訴えるものを感じられなかった。ピーター・ジャクソン監督の力不足か。まぁ、映像化するのが難しい(死後の世界をビジュアル化することではなく、物語を映像化すること)ことが原作を読んでいなくても想像に難くないストーリーだったので、監督はよくやったんじゃないかとも思うが。

 

 そんな消化不良的なストーリーを補って余りある演技を見せてくれる俳優たち。特に、主人公の少女スージーを演じたシアーシャ・ローナンがいい。家族の愛情を真っ直ぐに受けて育ったスージーの純粋さを青い瞳に宿したローナンは、殺される前の、1人の14歳の少女としての無垢で屈託のない笑顔を見せたかと思えば、殺されてからの寂しさ、憎しみなど様々な想いが入り混じった感情も表現していて、ハッとさせられる。『つぐない』 でのヒロインの妹役に続いて、本作でもオスカー候補になってもおかしくなかったと思う。殺されたスージーの魂を他の家族の誰よりも感じ、犯人を追い詰めようとする父親を演じたマーク・ウォールバーグも良かった。彼の演技がなければ、家族とスージーの間の絆は伝わらなかっただろうし、何より、突然子供を亡くした家族の喪失感というものが物語の中に自然と出てこなかったと思う(決して派手に語られることはないこの喪失感が、映画の後半全体を薄く、でも支配的に覆っていて、死後の世界のファンタジーと絶妙なバランスを保っている)。スージー一家の隣人にして異常者の犯人を演じたスタンリー・トゥッチの不気味さもすごかった。『プラダを着た悪魔』 や 『ジュリー&ジュリア』 での彼とは全く別人のようで、オスカー候補も納得。こんな演技もできるとは。一方でスーザン・サランドンのグランマ役と、レイチェル・ワイズの母親役は、別に誰が演じても良さそうな役で終わっていたのが残念。この2人なら出番が少なくても、もっと深く演じられると思うのだが。