メメント MEMENTO


directed by Chrisopher Nolan

cast :  Guy Pearce  Carrie-Anne Moss
Joe Pantoliano  Mark Boone Junior
Russ Fega  Jorja Fox
Stephen Tobolowsky
Harriet Sansom Harris
Thomas Lennon  Kimberly Campbell
Callum Keith Rennie
Marrianne Muellerleile
('01 11 30)



 全米で始めはたったの11館での公開だったのが、口コミで面白さが広がり、拡大公開となった「革新的リワインド・ムービー」。果たして、このリワインド・ムービーのカラクリは吉と出るか、凶と出るか?

 妻をレイプされて殺されたレナードは、その時殴られた後遺症で「前行性健忘症」となる。逆行性健忘症。つまり、昔のことは覚えているのに、最近のことを覚えていられないのだ。レナードは、妻を殺されるまでははっきりと覚えているのに、それから先の記憶が10分と持たない。妻を殺した犯人に復習するため、彼は会う人、行く場所の写真をとり、メモを書き、記憶ではなく「記録」する。そして、重要なことは自らの体にイレズミで残すのだ。そして映画は、レナードが一人の男を殺した瞬間から始まり、段々と過去へと話を巻き戻していく。過去を覚えていられないレナードと共に、観る側も過去に何があったのがわからない。

 という、段々過去に話が遡っていく、しかも10分単位で少しづつ戻っていくこの構成が「リワインド(巻き戻し)」なワケだ。確かに巧い。そして、その断片的なストーリーの間にもう一つ話が絡んでくる。ラストは、なるほど、その手があったか、と思わず感心してしまう。しかし、だからって今までのは何だったの、と疑問を投げかけたくなるのが痛い。クリストファー・ノーラン監督は、この時間軸を逆行する複雑な話を、確かに巧妙に演出しているとは思うが、どうにもそのストーリーにひきつけられないんである。観ているこっちは必死で話の筋を考える。そうしている間に次の(この場合は「前の」だけど)話が始まる。あぁ。また必死で考えて・・・・って、混乱させるだけさせといて、どう?すごい結末でしょ?というのは納得し難い。『スティング』や『シックス・センス』のような映画が、結末に対する驚嘆を映画の「面白さ」にしたのは、それに至るまでのストーリーに観客が目を離せなくなるからであって、そして初めて、結末が映画全体の力となりうるのだ。『メメント』の場合、結末を納得させるための話が理論的に展開していくに過ぎず、逆にこの結末がもったいなく思えてくるほど。「もう1回観たい」と思うのと、「もう1回観ないと面白さがわからない」は別だよね。

 というわけで、アイディアも演技陣も良いのに、何だか、小手先勝負の映画を観ている感は否めなかった。それでも、やっぱり一度観ておくべき映画には違いない。そして、一度観たらもう一度観るべき映画であることにも違いない。そうか。こうやって口コミが威力を発揮するのか。

 レナードを演じるガイ・ピアースは頑張っている。それに体が細い。俺もあんな体になりたいなぁ。





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