ミリオンダラー・ベイビー MILLION DOLLAR BABY


directed by Clint Eastwood

cast :  Clint Eastwood  Hilary Swank
Morgan Freeman  Jay Baruchel
Mike Colter  Lucia Rijker
Brian F. O'Byrne  Anthony Mackie
Margo Martindale  Riki Lindhome
Michael Pena  Benito Martinez
('05 07 09)


 『ミリオンダラー・ベイビー』 は、@クリント・イーストウッドに2度目のアカデミー監督賞を与え、A無冠の名優モーガン・フリーマンには念願の初のオスカーをもたらし、B何とヒラリー・スワンクに2度のオスカー主演女優賞受賞者という肩書きを与えてしまい、しまいにゃぁ、C本命だった 『アビエイター』 を押しのけて作品賞まで受賞してしまったという、今年のオスカーレースを大変賑わせた映画だ。ということで、ここらへんにポイントを絞って書いてみよう(全然絞れてないという話もあるが)。

 今年の監督賞はスコセッシとイーストウッドの対決みたいに言われていたが、結果はイーストウッドの2度目の受賞。これに疑問はない。勿論スコセッシが受賞してもおかしくなかったが、余計なものを削ぎ落としたイーストウッドのシンプルな演出はさすが。前半、ヒラリー・スワンク演じるマギーがタイトル戦までたどり着くストーリーが至極分かりやすいスポ根モノなのに、彼の手にかかると、ちゃんとキャラクターに血の通ったドラマになるのだから。がらっとトーンの変わる後半でも、イーストウッド演じるフランキーの最後の決断に到るまでを納得させるだけの骨太な演出で、最後まで見せてくれる。

 次にAモーガン・フリーマンの助演男優賞だ。正直モーガン・フリーマンは、いつでも‘いい人’スマイルで演技になる人なので好きじゃなかったんだが(『バットマン ビギンズ』 でもつまらなかった)、今回のフリーマンは年季の重みを感じるっていうか、伊達に片目の視力失って生きてないというか、とにかく魂のある演技をした。今までで一番の名演かというとそんなことはないが、これまでの数々の名演を考慮に入れて、今回の受賞は納得。おめでとうございます。

 さて。問題のBヒラリー・スワンク2度目の主演女優賞である。『ボーイズ・ドント・クライ』 以降の出演作の中で、少なくとも僕が観た 『ギフト』 『マリー・アントワネットの首飾り』 『インソムニア』 『ザ・コア』 の演技は全部外れで、こんな一発屋女優に2度目のオスカーあげるかぁ? と思っていたのだが、これが悪くない。というか、むしろ上手くてびっくり。ボクサーとしての体作りは勿論、ファイトシーンの迫力はあるし、イーストウッドとの絡みや、タイトル戦が決まった時に見せる笑顔など、自然で輝きのある演技だ。ありきたりの言い方だけど、マギーという役に成りきってるのね。彼女の底力を垣間見させて頂きました。けど、このマギーという役自体が得な役でもある。ヒラリー・スワンクという女優に合ってる役だし、合いさえすれば他の女優でも上手く見えたはず(まぁ、この役に合う女優なんてそうそういないだろうけど)。そう言えば 『恋におちたシェイクスピア』 のグウィネス・パルトロウの役もそうだったな。ということで、他の候補者たちの演技をまだ全員観てないので何とも言えませんが、やっぱり 「2度目のオスカーはあげ過ぎじゃないか?」 感は残ったまんまだ。

 これだけ監督と俳優が素晴らしいのに何だが、映画としては、同じくイーストウッドが監督して、去年のオスカーレースを賑わわせた 『ミスティック・リバー』 の方が格段に上だ。人間に対する洞察力の深さが違う。後半から突然話が重くなってくるので騙されそうになるけど、『ミリオンダラー・ベイビー』 の脚本はどこにでも転がっているような話だし、2本の映画をまとめて1本にしちゃいました、くらいの勢いで展開が変わり過ぎる。これじゃぁ、イーストウッドが監督しなかったら全然評判にならなかったと思うんだが。結局、『アビエイター』 とどっちかって言うと・・・・・やっぱオスカー向きなのは 『アビエイター』じゃないかなー。





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