ムーラン・ルージュ MOULIN ROUGE


directed by Buz Luhrmann

cast :  Nicole Kidman  Ewan McGregor
John Leguizamo  Jim Broadbent
Ricahrd Roxburgh  Garry McDonald
Jacek Koman  Matthew Whittet
Kerry Walker  Caroline O'Connor
Natalie Jackson Mendoza
('01 12 02)



 とにもかくにもニコール・キッドマンである!『誘う女』の彼女はすごく良かった。あの時、名声にしか目がないバリバリの悪女をすごーくイキイキと演じて以来、『ある貴婦人の肖像』『ピースメーカー』『プラクティカル・マジック』『アイズ・ワイド・シャット』と躍進を続けていたものの、『誘う女』ほどのインパクトと輝きが感じられなかった今日この頃。待ってましたとばかりに『ムーラン・ルージュ』のニコールはカワイくて、美しくて、切ない。そしてオーラがある。この映画にニコールを起用したバズ・ラーマン監督、あなたはとてつもなくエライです。

 ニコールが演じるのは、17世紀はモンマルトルのナイトクラブ、ムーラン・ルージュの輝くダイヤモンド、サティンだ。彼女は男は知っているが、恋を知らない高級娼婦。しかし、ある日出会った作家のクリスチャン(ユアン・マクレガー)と恋に落ちる。権力のある公爵のサティンへの想い、独占欲から隠れて密会を重ねる二人。だが二人の愛には大きな障害が待ち受けていた。

 なーんて書くと、ラーマン監督の前作、『ロミオとジュリエット』と何が違うんだー、と言いたくなるかもしれない。恐らく、始まって20分もすれば結末が読めるのでは?いや、むしろ観る前から予告編で読めている? 冒頭、モンマルトルに着いたクリスチャンがひょんなことからムーラン・ルージュに行く羽目になる下り。突然「サウンド・オブ・ミュージック」を歌いだすユアン。バカ騒ぎのジョン・レグイザモ達。やばい。この悪ノリについていけない。ひょっとして失敗作か?だが待てよ。『ロミジュリ』でも最初にワケのわからないレグイザモのパフォーマンスの後、主役の二人が出てくると一気に画面に引き込まれていったっけ。まだまだ期待できるかも。

 そして案の定、サティンの登場シーン。いや、ニコール・キッドマンの登場シーンの息を飲むほどの美しさに目を奪われると、彼女の独壇場が始まり、最後までノンストップだ。次々と繰り広げられるダンスにミュージカルナンバー。くらくらするような華麗で猥雑で、お茶目な映像美。またしてもバズ・ラーマンにやられてしまった。

 根本的にこの映画がすごいのは、既に世で流行った数々のラブソングが、歌詞をそのまんまにしてストーリーにマッチしてしまうところだ。とか何とかいいながら、そんなに世界のラブソングに精通してるわけでもないんだが、ホイットニー・ヒューストンの「Alwasy Love You」が突然出てきたりしても全然違和感がない。しかもマドンナの「Like A Vergin」をこう使うかー。ここにバズ・ラーマンの偉さをまた感じる。月夜にクリスチャンとサティンが歌うラブソングメドレーは、聞いてるだけで涙モノ。

 『ロミジュリ』でも感じたが、この人の映画は、「愛するって切ない」「愛するって辛い」「愛するっていいなぁ」ということを、単純な物語で真正面から謳い上げてくれる。ここまでやってくれると恥ずかしいを通り越して頷いてしまうのだ。そして、その世界に不思議とマッチする主役の二人。ユアン・マクレガーがイイ。彼には、『普通じゃない』や今作のような、純真で一途な青年役が似合う。彼が歌う数々のラブソングは必聴です。観ていて(聴いてて)、何だか恋愛に素直になる気分。

 キッドマンは34歳にして、初めて恋を知った純情さを演じる。カワイイ。失礼な言い方かもしれないが、けれどもカワイイのだ。これだけ美しくて、なおかつカワイイというアンバランスさが魅力。そして、やっぱりこの人、やる気が違う。歌って踊ってはしゃいで笑かしてくれて。彼女がマクレガーやレグイザモ達と「天国と地獄」を踊るシーンは是非笑い転げてください。この人は別にこんな捨て身でやらなくても大丈夫なのに、仮にもスターなのに、それでもやってくれます、彼女なら。キッドマンは2001年のゴールデングローブ賞で、今作と『アザーズ』で主演女優賞にダブルノミネートされた。トム・クルーズと離婚して、「やっとハイヒールが履けるわ」と言い切る自信。きっとこれから彼女の時代がやってくる!まずは新春に公開される『アザーズ』(古典的なホラー映画らしい)で、彼女の怯えた演技を堪能するのを楽しみにしよう。





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