ラッシュ プライドと友情 RUSH

 

directed by Ron Howard

cast : Chris Hemsworth  Daniel Brühl

Alexandra Maria Lara  Olivia Wilde

Pierfrancesco Favino  David Calder

('14 02 01)

 

 

 1976年のF1シリーズで激闘を繰り広げて全世界を熱狂させた、全くタイプの異なる2人の天才レーサー、ジェームス・ハントとニキ・ラウダの物語。2人を演じるのは 『マイティ・ソー』 以降売れっ子のクリス・ヘムズワースと、『グッバイ、レーニン!』 が懐かしいダニエル・ブリュール。監督は 『アポロ13』 のロン・ハワード、脚本は 『フロスト/ニクソン』 でもハワードと組んだピーター・モルガン。

 

 F1に興味がない自分でもぐいぐい引き込まれるレースシーンの迫力もなかなかだが、それよりも見応えがあるのが、勝利への考え方も生き方も違う対照的な2人の姿だ。毎日を人生最後の日のように謳歌し、レースにも興奮と情熱を追い求めたジェームスは、ニキへの対抗心からチャンピオン獲得を誓う。一方、日々を堅実に生き、レースには完璧を求める頭脳派のニキは、レース中の事故で瀕死の全身熱傷を負いながらも、ジェームスが次々と勝利してポイントを重ねていくのをテレビで見て、サーキットへ復帰しようとする。それだけでも十分に感動のドラマに仕上がりそうだが、本当の見せ場はニキがレースに復活してからで、最終決戦の富士スピードウェイでの意表を突く展開からラストシーンまでが白眉だった。それまで語られてきた、異なる価値観で勝負の世界に挑み続ける2人だからこそのレース展開は、まるで2人の生き様を象徴するようで、そんなお互いを認めつつ尊敬し、羨む2人のラストシーンが印象的なのだ。

 

 これが仮にフィクションだったら、最終決戦で2人が死闘を繰り広げるクライマックスになりそうだが、そうはならなかった実話を基にしているからこそ生まれた物語なわけで、そういう意味でピーター・モルガンは上手く脚本を仕上げたと思う。そして、迫力のレースシーンを交えつつ、2人のライバルとしての緊迫感と友情、そして生き様までも見事に描いたロン・ハワードもさすがだ。主役2人のキャスティングも適材適所で、ヘムズワースはカラダで勝負のアクション俳優というだけではないことを証明してくれたし、ブリュールはオスカー候補にならなかったのが残念なくらいの熱演。ていうか、『グッバイ、レーニン!』 の少年も大人になったねぇ。ていうか自分と同い年だったんだねぇ。月日が経つのは早いねぇ・・・・