スコルピオンの恋まじない
          THE CURSE OF THE JADE SCORPION


directed by Woody Allen

cast :  Woody Allen  Helen Hunt
Dan Aykroyd  Charlize Theron
John Tormey  John Schuck
Elizabeth Berkley  Kaili Vernoff
David Ogden Stiers
('02 12 28)



 1940年代のアメリカは、催眠術で人に恋心抱かせたり、人を操って犯罪を犯したり、そんなことが本当にできると信じられていた時代だったらしい。『スコルピオンの恋まじない』 は、そんな40年代のニューヨークが舞台。「ジェイド・スコルピオン」という怪しげな催眠術で、いつもいがみ合ってる主人公の二人(ウディ・アレン扮する腕利き保険調査委員と、ヘレン・ハント扮するやり手の社内改革ウーマン)が宝石を盗んでしまったり、恋に落ちてしまったりと、またまた素敵な雰囲気の漂いそうなコメディである。

 映画の出来はともかく、ヘレン・ハントについて何も言わずにはいられない。ハントの役は、仕事はバリバリにこなし男から敬遠されながらも、恋愛ではろくな男に巡り合えず、今は社長と不倫中というありがちな設定である。アレン映画に出演した女優はアレンの魔法にかかると言われるほど、女優が輝くことで有名なアレン映画だが、彼の腕をもってしてもハントの大根演技は治らなかった。『Dr.Tと女たち』 で見せた垂れ目演技や、『ペイ・フォワード 可能の王国』 で見せた垂れ目の泣き演技や、『キャスト・アウェイ』 で見せたずぶぬれ垂れ目の泣き演技もすごかったが(『恋愛小説家』 は観てない)、今回のハントの山場はズバリ、懐中電灯で照らされたアップのシワ顔でしょう。催眠術で宝石を盗みに行ったハントの顔がどアップになるシーンの衝撃といったら。痛々しくなってくるくらいの目のクマに、微妙な厚化粧、そして目元口元のシワシワ〜。シワシワ〜。乾燥肌なのか?ヘレン・ハントは。それに体も段々どすこい体型になってきて(『Dr.Tと女たち』 ではそうでもなかったのに)、だけど顔はいまだにトンガリ系だから、なんかもう全体として魔法使いとか妖怪婆みたいになってきてんの。んで、演技はやっぱり垂れ目で迫ってナンボの世界。あ、口半開き演技ってのも付け足しといて。今回は肩すくみ演技もプラスして。あーもう、そのワンパタ喜劇演技。いい加減にしろー。

 最近のアレン映画の魅力が、他愛もない話を絶妙なキャストと、アレンの描くちょびっとロマンティックな世界で語ることにあったことを考えると、『スコルピオンの恋まじない』 はイマイチだった。なぜかと言うなれば、それはもちろんヘレン・ハント。あぁ。これが誰でもいいから別の女優だったらどれだけ楽しめたことか。アレンとの素敵な化学反応も楽しめただろうに。悔やんでも悔やみきれん。(何がだ)

 ウディ・アレン、次回作ではティア・レオーニ(『ジュラシック・パーク3』 『ディープ・インパクト』)なんて使ってるけど、とうとう女優の審美眼が狂い始めたんだろうか。今回も、せっかく40年代のゴージャス美女をシャリーズ・セロンが雰囲気出して演じているのに出番少ないし。かと思うと、安っぽさ満天のショーガール女優、エリザベス・バークレーが秘書役でちょこまか出てきたりする。あぁ。なぜこの映画で突然こんなことになってしまったの、アレン様。

 勿論楽しみがゼロってことじゃなくて、今回もアレンは笑かしてくれます。にっくき仕事敵のヘレン・ハントの机をあさっていたものの、突然ハントが入って来て慌てふためくアレン。手に持っていた書類系をぶわっと宙に舞わせてしまう! 見せます、アレンの手先芸。見せます、アレンのおとぼけぶり。あぁ。けど、それだけなんてアレン映画じゃない〜。アレン映画じゃないぃ〜。





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