シェルター SHELTER

 

directed by Måns Mårlind & Björn Stein

cast : Julianne Moore  Jonathan Rhys Meyers

Jeffrey DeMunn  Frances Conroy

Brooklynn Proulx  Nathan Corddry

KatiAna Davis  Michael Graves

('10 04 03)

 

 

 ジュリアン・ムーア主演の 「科学では説明できない」 サスペンスと言えば、あの映画史上に残るトンデモ映画の 『フォーガットン』 が思い出されるわけで、もしや、あのハチャメチャな展開をもう一度味わえるのか!? という、どーでもいい期待と、『”アイデンティティー”』 の脚本家が仕掛ける多重人格サスペンスということで、これはもしかして意外な拾い物になるのではという、比較的真っ当な期待を持って観に行ったら、案外まともなスーパーナチュラル・ホラー映画だった。まぁまぁ面白かったけど、良い意味でも悪い意味でも想像を絶するような展開を期待していただけに、ちょっと拍子抜け。やっぱり、そう簡単に人間が空の彼方へドーンと飛ばされたりはしないものである。

 

 最初は多重人格のサイコサスペンスのようなトーンで始まり、多重人格のキャラクターがどんどん増えていくあたりは、この手のストーリーの定石通りだが、そこらへんからテーマが次第に神への信仰にスイッチしていく展開がなかなか面白くて、予想外にオカルトホラーみたいになってくる後半は結構引き込まれた。それだけに、不可思議な現象の原因を過去のある事件に全て帰着させてしまうラストが惜しい。ここらへんの展開は日本のホラー映画に通じるものがあるが、そんなホラーとしての 「まともさ」 が、かえって物足りなかったりするのだ。

 

 そんな中で見ものなのが、ラストに向かって次第にエスカレートしていくジョナサン・リース・マイヤーズの怪演っぷり。多重人格という、俳優としての腕の見せ所的な役柄にやる気を見せたのかどうかは分からないが、一番最後に登場する人格のハマリっぷりは、普段の顔と狂気の表情が表裏一体のマイヤーズならではで、他のどの人格の時よりハマっていた。ハマり過ぎて怖い。ごひいきジュリアン・ムーアは 『フォーガットン』 や 『NEXT』 に続き、どうしてまたこんなホラー映画に出たのか本当に分からないなぁと思っていたら、我が子が危機にさらされる母親役ということで納得。確か 『フォーガットン』 の時も、我が子を失った母親の悲しさと強さに共感して役を引き受けたようなことを言っていた気がするが、確かに、そこらへんの役作りはさすがだし、彼女の演技なしではここまで全編マジメに観られなかったと思う。つくづく、常に全力投球の女優である。それだけに、もっといい役を演じてほしいと切に願うばかりなのだが・・・