処刑人 THE BOONDOCK SAINTS


directed by Troy Duffy

cast :  Sean Patrick Flanery  Norman Reedus
Willem Dafoe  David Della Rocco
Billy Connolly  David Ferry
Brian Mahoney  Bob Marley
Scott Griffith  Richard Fitzpatrick
William Young
('01 03 09)



 「遂にハジけたハリウッド最狂の演技派!」素晴らしいですね、このコピー。おっと。『処刑人』のポスターのウィレム・デフォーの紹介コピーです。ウィレム・デフォー?いっつも狂ってるじゃん、と思ったら大間違い。いやいや。『イングリッシュ・ペイシェント』『愛しすぎて/詩人の妻』ではまともな役もやってたよってことじゃなくて、『スピード2』や『ワイルド・アット・ハート』の悪役なんてまだまだ甘いってこと。今回のデフォー様は今までのキレっぷりの集大成だ。あまりに集大成すぎて、ひょっとして今回限りで役者業引退しちゃうの?なーんて一人で勝手に心配しちゃいましたもん。

 デフォー様が演じるのは珍しくFBI捜査官。登場シーンは当然のようにちょこっとスローモーションがかかる。たなびく長髪と微妙なポーズのつけ具合がかっこいい。現場検証を始めるデフォー様、その前にCDウォークマンで高揚感たっぷりのオペラを聴きながら一人で悦に入っちゃうのだ。他の警察官もあっけにとられちゃう。ワケのわからないポーズをとりながら、キレる頭脳を駆使して推理をずばりと展開していくデフォー様。カッコよすぎです。デフォー様の見せ場はたっぷりあるんだが、中盤、彼が主人公二人の処刑シーンを推理しながら、何を思ったのか回想シーンにいきなり割り込んできちゃう。自分の推理を解説しながら、回想シーンの彼らの隣で二丁拳銃をぶっ放すフリして(銃なんか持ってないのに)、そん時の体の揺れ具合と、真剣すぎる目線のアンバランスがおかしすぎなのだ。そして何と!自分が出演したアノ名作の、アノ名シーンを、自ら堂々とパロってしまった!ワタクシもう、一人で爆笑しちゃって。すいません、劇場にいた方々。で、まだまだその後にもデフォー様の迷シーンは続くんですよ。本人、あまりにイッちゃってて、思わず(?)セリフで「やり過ぎやり過ぎ」ってつぶやいちゃうのね。似合ってるけどやり過ぎだよー、確かに(笑)。

 ショーン・パトリック・フラナリーとノーマン・リーダス扮する兄弟は、神の啓示を受けて街の悪人をぶっ放しまくる処刑人(原題は『荒れ地の聖者たち』)となる。一般人の見て見ぬフリなんて冗談じゃない。オレ達が悪人を殺してやるんだ。このプロットのおかげで全米では公開されるや即刻上映中止になってしまったとか。事件を追っかけるデフォー様率いる警察官たち。兄弟には一人仲間が加わって、どんどん事件はエスカレート。映画の加速度もエスカレート!観てるこっちのアドレナリンは全開放出で、おまけにデフォー様が狂演に狂演を重ねるから、体が踊り出しそうになる。うわぁー、カッコイイ!脚本・監督は映画デビューのトロイ・ダフィー。彼は映画の勉強をちゃんとしたわけじゃないんだって。そうそう。この粗削りの興奮がたまらないんだ。

 兄弟を演じる二人の処刑人っぷりも、お茶目な発想でキレまくるので面白い。それぞれがワンパタではなく個性を発揮しながらキレてるので飽きないのだ。特に弟のリーダスは、しっかり者(・・・?)のフラナリー兄さんの下で好き放題、心からキレてる目つきだ。二人のお洋服はいつもお揃い。タバコに火をつけるタイミングも一緒。ほとんど二人同時に画面に出てきて、その線対称ぶりがわけもなくカッコイイ。うわー、「カッコイイ」ってしか言いようがねー。語彙力ないね、オレ。そうだな。「クール」って言葉はこんな時に使いましょう、みたいな例の一つじゃない?この映画。

 テクニック的には、宗教を絡めて荘厳なミュージックをバックにしての銃撃戦が効果バツグン。教会の懺悔部屋でのシーンも『フェイス/オフ』の四つ巴狙い撃ちシーン的でカッコイイ。そうそう。しょっちゅう流れるノリノリのBGMもクドくない!なんかワクワクさせられるんだな。





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