高度1万メートルの上空を飛ぶ飛行機の中で、何種類、そして百匹以上もの毒蛇が放たれて乗客たちが慌てふためくという、よくぞ思いついた的な設定のパニック・ムービーである。そもそも、なぜヘビ入りの荷物が飛行機の中に入れるのか? 「変温動物だから温度探知機に引っかからなかったんだ」 と誰かが劇中で言っていたが、そういう次元の問題じゃないだろう。けど、そんなことはどーでもいい。こんなレビューを書くのも馬鹿馬鹿しくなってくるほどに荒唐無稽な、この設定が楽しいのだ。B級やるなら、とことんB級で行ってもらいましょう。
ところが、そんな支離滅裂な設定の割には、飛行機にヘビが放たれる理由として、マフィアだか何だかが殺人事件の証人を葬るためという、そこそこちゃんとした理由が一応用意されている。飛行機の乗客たちも意外にキャラクターの背景がしっかり説明されてたりして、パニック・ムービーの中にも数々のドラマがあるように思えるかもしれない。しかし、そんなこともどーでもいい。所詮B級映画と製作者も割り切ってるのか、かなり安っぽいドラマの連続なのだ。小難しいことは考えないで、とにかく狭い機内でヘビから逃げ惑う乗客たちと一緒にアドレナリンを放出しまくってれば楽しめる。そんな映画である。
文句ナシでサミュエル・L・ジャクソンがカッコイイ。どんな役もそこそこカッコ良くこなせるサミュエルだけど、ここまでバッチリ決まってるのは、下手すると 『交渉人』 以来じゃないだろうか。そして、カッコイイのに、演じてる世界はB級アクションっていうギャップがハマるのもサミュエルならではだ。ラストでサミュエルがぶっ放すとんでもない行動は、ありえなさ過ぎて爆笑モノなんだけど、キレたサミュエルなら本気でやりかねないよね。そこらへんの絶妙な可笑しさが、さすが。サミュエルの人間としての広い心と、ユーモアのセンスが現れていると思う。
すごいと思ったのは、映画に登場するヘビはほとんどが本物だということ。一見本物の毒ヘビと見分けがつかないような無害なヘビをたくさん用意して撮影したのだという。CG技術が発展しても、ヘビの滑らかな動きはなかなか上手く再現できていなかったが、やっぱり本物は違うね。生々しくてリアルで(本物だから当たり前か)、『アナコンダ』 の笑っちゃうような楽しさがないもの。俺が俳優だったら、こんな撮影現場イヤだなぁ。なんて思ってたら、途中で人間を巻き殺す大蛇もちゃんと出てきます。間違いなくCG。ちょっと出番が少ないのが残念だけど、アナコンダならではの人食いシーンもちゃんと観れるのでご安心を。やっぱりヘビ映画にアナコンダは欠かせないんですね。
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