恋愛適齢期 SOMETHING'S GOTTA GIVE


directed by Nancy Meyers

cast :  Diane Keaton  Jack Nicholson
Keanu Reeves  Frances McDormand
Amanda Peet  Jon Favreau
Paul Michael Glaser  Rachel Ticotin
('04 03 27)



 出会ったお互いの第一印象は最悪の2人が、なんだかんだ言ってるうちに惹かれ合って、またお互いの気持ちがわからなくなって・・・・というのはラブコメの定番中の定番。けどそれが中年の2人で、何年も恋をしていないバツイチの女流戯曲家と、若い女の子と軽い付き合いしかしたことがない中年男だったら? というか、演じるのがダイアン・キートンとジャック・ニコルソンだったら?

 というわけで、これはもうダイアン・キートンの映画。57歳にしてヌードやベッドシーンまでやっちゃうんだから、天晴れだ。しかもそれを笑えてキュートにこなすんだから、スゴイ。そう。ニコルソンとの憎まれ口の叩き合いから、心臓発作で倒れたニコルソンの主治医(キアヌ・リーブス)に想いを寄せられてちょっと浮き足立っちゃったり、若い女の子みたいに 「こんな気持ち初めて」 なんて言っちゃったりと、最初から最後までキートンの何てキュートなこと! やってることはメグとかジュリアなんかと同じなのに、ずっとキュートだ。こんな女優、他にいないでしょう。海岸をニコルソンと歩くシーンとか、ベッドインした後のシーンとか、泣きながらタクシーに乗るシーンとか、泣きながら原稿仕上げるシーンとか、いやもう、挙げればキリがない。この、“どのシーンもイイ!”的輝き具合は 『あの頃ペニー・レインと』 のケイト・ハドソン以来!

 ズバリ、テーマは中年の恋だ。大筋だけだど結構しみじみしちゃいそうだけど、そこが上手くコメディになってるのはキートンとニコルソンのコンビだからだし、キートンの妹がフランシス・マクドーマンドで(どーせならもうちょっと出番希望)、娘がアマンダ・ピートだからだ。こんな家族、ホントにいたら男達がおののくこと間違いなし。コメディだから許される、そんなキャスティングである。そしてキアヌ! そうよ。キアヌって、こういう素直で一途な青年みたいな役が一番似合うんだよね。『マトリックス』 より全然活き活きしてるのだ。キートンが浮かれるのも納得の、カワイさとカッコよさと純朴さ(コレ重要)がある。もっとキアヌの出番を! なんて思ったの初めてです。いやぁー。正直、こんなキアヌまた観れるなんて思わなかったなー。

 ここまで褒めといて何だが、いささか長くてダレるのが難点。監督のナンシー・メイヤーズは、あのヘレン・ハントですら輝かせた人なので(『ハート・ブ・ウーマン』)、どのシーンもダイアン・キートンの魅力全開で演出してくれるんだが、その分なーんかダラダラしちゃうのよね。逆に言えば二人の感情をいつもすごく丁寧に描いてるんだけどさ。ちょっと欲張りすぎ。演出の緩急をつけないと。

 キートン演じるエリカは夏でもいつもタートルネックを着ている。ニコルソン演じるヘンリーに彼女が心を許すと胸元の空いたシャツを着るようになるという演出なんだが(そんなキートンもステキ)、その前にヘンリーが、何でいつもタートルネックを着てるんだ? とエリカに聞くシーンがある。そんなのダイアン・キートンだからに決まってるじゃん! タートルネックだと首のシワが隠せるからだよ! 長い付き合いのジャックならわかるでしょ! とツッコんでしまった。そしてタートルネックの方がいつものキートンらしかったりもするのである。最近の映画の中の彼女はそんなんばっかだったが、そうじゃなくても(今年のアカデミー賞授賞式のガードの固過ぎるラルフ・ローレンじゃなくても)十分魅力のある、シワがキレイな素敵な年の取り方をしているのでした。





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