スパイ・ゲーム SPY GAME


directed by Tony Scott

cast :  Robert Redford  Brad Pitt
Catherine McCormack
Marianne Jean-Baptiste
Stephen Dillane  Larry Bryggman
Matthew Marsh  Todd Boyce
Michael Paul Chan
David Hemmings  Garrick Hagon
Andrew Grainger  Bill Buell
('01 12 27)



 ブラッド・ピットが大物俳優と共演する政治がらみのサスペンス。と来れば『デビル』を思い出し、あぁ、今度もダメダメの駄作になるのかしらー、と心配してしまう。ハリソン・フォードにブラピ、そして監督はポリテイィカル・サスペンスの名手アラン・J・パクラだと言うのに、なぜあんな作品になってしまったのか。って、そんなことはおいといて、かつて「ロバート・レッドフォードの再来」と言われたブラッド・ピットが、そのレッドフォードと待望の共演(僕は待ってなかったけど)。そのお話はというと。

 1991年、ベルリンの壁が崩壊して2年。CIAの諜報員ビショップ(B・ピット)が中国でスパイとして逮捕された。24時間に処刑される予定の彼を、CIAは中国との国交を円滑にするため見殺しにしようとする。それを知った、かつてのビショップの上司の諜報員、ミュアー(R・レッドフォード)は何とか彼を助けようとするが・・・

 と、それからレッドフォードがブラピと連絡を取って自ら救出に向かう、という筋書きではない。この映画の面白いところは、ビショップの救出が肉弾戦ではなく、全てミュアーの頭脳戦で行われるところだ。しかも、頭脳戦の相手は中国ではなく、彼を見殺しにしようとするCIAの上層部。なるほど。トニー・スコット監督(『クリムゾン・タイド』『エネミー・オブ・アメリカ』)らしいプロットだ。彼らの目をくぐりぬけてどうやってビショップを救出するのか?そこに二人の師弟愛を語る過去のエピソードを、ベトナム、ベルリン、ベイルートと重ねて上手く2時間見せてくれる。娯楽作品の職人らしい作り。細かい設定には目をつぶるとして、冒頭のビショップが捕らえられるシーンから最後まで飽きさせない。うん。面白かったです。

 シワシワのレッドフォードが痛々しいのではないかと観る前から気になって気になってしょうがなかったが、引退直前のCIA諜報員、老練の渋さでカッコよく決まっている。全てCIA本部内で行動してビショップを助けようとするクールな姿は、往年のファンにはたまらないだろう。対するブラッド・ピットの主な登場シーンは、レッドフォードの回想場面だ。理想の高い感情的な諜報員の若き日。「クセのない」役である。彼が普通の役を演じたら観てられないんじゃないかと、これまた観る前から気になって気になってしょうがなかったのだが、意外や意外。ソツなくこなしているではないか。春に公開された『ザ・メキシカン』とは随分違う。

 だが、ソツなくこなしているものの、ちょっと待ったコールをかけたい私。ビショップが中国側にスパイとして捕まったのは、ネタバレしないように書くと、「愛する人を守るため」だ。それだけの理由でアンタそこまでするか、と言いたくなる。なぜかというと、そもそもそこまで彼女を愛してたなんて知らなかったぞー、だからだ。ピットは、そこらへんの内面演技ができない。彼の演技の致命的な欠点と言える。まぁ、監督の演出もそこまで要求していないのかもしれないが、物語の発端がそこにあるため(彼が中国に捕らえられること)、話の流れにちょっと引っ掛かりを感じる。レッドフォードの方も、任務遂行を第一に考える優秀なベテラン諜報員ならば、いくら部下がカワイイとはいえ、いくら誕生日にウィスキー・フラスコをプレゼントしてくれた部下とはいえ、そこまでして助けなくてもいいんじゃないかー? ってつまり、二人の師弟愛も描ききれてないのだ。

 とまぁ、ここまでマジメにツッコミ入れる映画も久しぶりで、それも結構楽しめたから。僕の好きな部類の映画だ。それ故、ちょっと気になりだすと止まらない。最近見なくなった、スター主演の正統派娯楽サスペンス。観といて損はないです。





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