映画が始まって冒頭、『スター・ウォーズ エピソード3』 を観た時と同じ興奮が襲ってきた。あのジョン・ウィリアムズのスーパーマンのテーマ音楽を、劇場で、サラウンドの大音量で聴けるなんて! これだけで大興奮である。タイトルバックだけでもう元は取ったね。満足満足。
思い入れが大きかったであろう人気シリーズ、『X−MEN』 の3作目を降板してまで、新たなスーパーマン・シリーズの監督に名乗りを上げたブライアン・シンガー。本作の成功のおかげで続編の監督も決まっており、アメコミの映画化のヒットメイカーとして既に名前が定着した感アリだ。特殊な能力を持っていながら、社会の中では正体を隠してごく普通に暮らし、想いを寄せている女性にはスーパーマンとしてしか愛を伝えられないという葛藤を持つクラーク・ケントというキャラクターが、『X−MEN』 シリーズでマイノリティを描いてきたシンガー監督の琴線に触れたのだろうか。確かに本作はアクション満載というよりも、スーパーマン=クラーク・ケントの内面に迫るシーンが多くて、ドラマとしての見応えがある。けど、その分ヒーローものとしては冗長な感も残ってしまった。この手の映画にしてはスピード感がない。というか、そもそもストーリーがシンプル過ぎてブライアン・シンガーには役不足だ。もっと複雑なプロットを料理してこそ監督としての才能を発揮できる人なので、続編ではメインの悪役が3人くらい出てきて、ストーリーに絡みまくってほしいところである。というか、大味なプロットを映像化して楽しませてくれるのもいいけれど、ヒネリのあるサスペンスを撮ったりは、もうしてくれないのかなぁ。
とは言っても、数少ないアクションシーンは楽しませてくれて、シンガー監督がそこらへんのアクション映画監督とは違うことがよく分かる。CGや音響の迫力は、あくまで映画の一部に過ぎなくて、重要なのはアクションシーンだろうと、演出の間、そして俳優の演技なんである。船の中でピアノが飛ばされるシーンの引っ張り方なんかはさすがだ。
スーパーマン役のブランドン・ルースは、もはや彼以上にスーパーマンが似合う人はいないと思わせるほど、ぴったりの容姿であった。無名だった彼を抜擢したシンガー監督、恐るべし。ケビン・スペイシーも、久々に悪役演じてて楽しそう。スペイシーの隣に常にいるパーカー・ポージーは、コメディ演技をやらせたらピカイチなので、もっと出番があると嬉しかった。そして、登場するや否や、また当て馬かよ!と誰もがツッコミを入れてしまうのがジェームス・マースデンである。スーパーマンとかつてラブラブだった勝ち気な女性記者のロイス・レインが、スーパーマンが姿を消した後に結婚した相手という役で、『きみに読む物語』 といい、『X−MEN』 シリーズといい、人のいい当て馬役をやらせたら今一番似合う俳優だと思う。たまにはその恋を成就させて、本命にしてあげたいものだ。頑張れ、マースデン!
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