トランスアメリカ TRANSAMERICA

 

directed by Duncan Tucker

cast : Felicity Huffman  Kevin Zegers

Fionnula Flanagan  Burt Young

Carrie Preston  Elizabeth Pena

Graham Greene  Grant Monohon

Jon Budinoff  Raynor Scheine

('06 08 06)

 

 

 性同一障害で昔から女になりたかったブリー(♂)。とうとう1週間後に女性になる手術を受けることになって、心はもう女性だから、後は身だけ! なんて時なのに、自分の息子と名乗る少年が逮捕されたと連絡が。確かめるためにロサンゼルスからはるばるNYまでやって来てみたら、昔の一度の過ちで出来た息子だった・・・ まだ見ぬ父親と会うことを夢見ている少年トビーと、自分が父親だと言えない父親(母親?)。そんな奇妙な2人の、NYからロサンゼルスへの旅が始まった。

 

 という設定だけでもユニークだけど、それに加えて、「女になりたい男」 の主人公を演じるのが女優という前代未聞のアイディアがインパクト大だ。しかも演じるのは、TVシリーズの 『デスペラートな妻たち』 で話題のフェリシティ・ハフマン。これだけで話題性はバッチリ。けど、そのインパクトとは裏腹に、ストーリーはまともな父子(母子?)のロードムービーで、見た目の面白さに終わらない、ちゃんとしたドラマになっている。

 

 この役でフェリシティ・ハフマンは、TV女優のしがらみから逃れてアカデミー賞候補だ。実際、最初は違和感あれど、段々慣れてくると男に見えないこともなくなってくる。元々男っぽい顔だけど、がんばったなーって感じ。息子のトビー役を演じるケヴィン・ゼガーズは、整った顔立ちに、ちょっと翳のある瞳っていうのがリバー・フェニックスを思い出させて(役もリバーが演じそうな役だしね)、繊細な演技も悪くなかった。これからどんな映画に出るのか、ちょっと楽しみだ。

 

 この2人の他にも、ロードムービーでは欠かせないワキの人たちがいい味を出していて、それぞれのエピソードが面白かったり、ちょっといい話だったり。そして親子モノっていうと感傷路線に走りがちだけど、余計な盛り上がりとかなしに、そしていちいちセリフで感情を説明しなくても、2人の微妙な関係は少しずつほぐれていく。まだ見ぬ父親に会う時は、仕事を見つけて、ちゃんとした服を着て会いに行きたいと言っていたトビー。それがさりげなく叶うラストシーンは、これからの2人の関係がどうなっていくのか見てみたいと思う、そんな終わり方だ。監督のダンカン・タッカーは、これが長編第1作。名前覚えておこう。