ベン・スティラー監督の前作、『ズーランダー』 がバカバカしさにかけては一級の面白さだったので、今回も期待して観に行ったのだが、スケールアップしたせいか 『ズーランダー』 ほどの抱腹絶倒までは至らず。でも、狙いに狙ったクライマックスシーンのバカバカしさは好きだなー。『ズーランダー』 でもラストのキメポーズで爆笑したっけ。このシーンを観るために今までの下ネタとグロテスク尽くしの1時間半があったと思えば、それまで本気で笑えてなくても報われるのだ。
莫大な製作費をかけながら、撮影開始5日目にして既に予算オーバーという戦争映画大作の 『トロピック・サンダー』。言うことを聞いてくれないワガママな俳優たちに振り回される新人監督は、怪しげな原作者の口車に乗せられて俳優たちを本物の戦場に放り込むことに。何も知らない俳優たちは、この戦場をサバイバルできるのか!? というストーリーなのだが、今回は話の面白さよりも、体を張った俳優たちの肉体派ギャグ、そして白人なのに黒人の軍曹役を演じるために手術で自分の皮膚を黒くしちゃうという 「やり過ぎ演技派」 を演じるロバート・ダウニー・Jrの面白さで笑いを引っ張る。あぁ、確かに映画に出てくる黒人の軍曹ってこういう話し方をするよねって感じで笑わせてくれるが、それだけで引っ張るのはちょっとツラいように思う。『プラトーン』 を初めとする戦争映画のパロディや、オスカーネタを絡ませた皮肉とか、その手の笑いの方が個人的には好みだな。そういう僕が好きなのは、冒頭に出てくる架空の映画の予告編オンパレード。こういうのを真剣に作っちゃうところが、いかにもハリウッドのおバカ映画ですね。そしてダウニー・Jrは、何とこの役でオスカー助演候補だ。『アイアンマン』 の大ヒットもプラスしたノミネートだろうけど、ベン・スティラーのおバカ映画に出てオスカー候補とは、世の中分かりません。
日本ではあまりヒット作の印象がないスティラーだけど、『ズーランダー』 に続いて製作、監督、脚本、主演をこなし、アメリカでは人気が高いんだろうというのはカメオ出演しているスターたちの顔ぶれを見るとよく分かる。主要キャストとして登場するマシュー・マコノヒーやニック・ノルティに、本人役で一瞬出てくるトビー・マグワイアやトム・ハンクス、ジョン・ヴォイトなどなど、錚々たる顔ぶれだ。極めつけはデブハゲのメイクで変身したトム・クルーズ。劇中で製作中の 『トロピック・サンダー』 のプロデューサー役で出ているのだが、大スターがこんなメイクで出演するのをOKするなんて、よほどスティラーが好かれてる証拠だ。しかしどんなメイクをしようとも、顔面や体の隅々の筋肉まで力の入ったクドい演技は、どう見てもスター・トムクル。彫りの深い顔のドアップで叫んでる姿を観て、『ザ・エージェント』 の力みっぷりを思い出した。いやー、クドくてクドくて、エンディングのダンスは 「早く終わってくれー」 と心の中で叫んでたね。
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