ブラックサイト UNTRACEABLE

 

directed by Gregory Hoblit

cast : Diane Lane  Colin Hanks

Billy Burke  Joseph Cross

Mary Beth Hurt  Peter Lewis

('08 04 27)

 

 

 突如インターネット上に現れた公開殺人サイト。それはじわじわと人間を殺していく様子をライブで全世界に配信し、そのアクセス数が増えれば増えるほど処刑のスピードが早まるという、言ってみれば閲覧者たちを 「共犯」 とするサイトだった。ウェブでの犯罪を専門とするFBI捜査官のマーシュ(ダイアン・レイン)は捜査を始めて犯人を追い詰めようとする。

 

 閲覧者が共犯となる公開殺人サイトという設定と、監督が 『真実の行方』 のグレゴリー・ホブリット、そして主演がダイアン・レインとうところに興味がわいて観に行ったのだが、どれも期待を裏切らない面白さだった。特に、あらゆる個人の動画が氾濫しているネット社会の現代で、起こっても不思議ではないこの犯罪の設定には恐怖を覚えた。犯人がなぜこのような猟奇的な犯行に及んだのかという心理描写に説得力はあまりないが、その心理の背景にある事件のディテールや、こういうサイトが仮に現実に登場したら恐らく映画と同様にアクセス数が激増するのではないかというリアルさが怖い。そしてあまり字幕では訳されていないが、このサイトに続々投稿されるコメントがいかにもありそうなそれで、現代社会の異常さを上手く出していたと思う。ラストではそれまでのサスペンスな演出から一転してアクションが入り、ダイアン・レイン演じるヒロインのカッコよさゆえに許せる勧善懲悪的なエンディングを迎えるが、その後にパソコンの画面に投稿される数々のコメントが、その爽快感を完全に打ち消していた。これは純粋なサスペンスとして楽しめる娯楽作品であるとともに、ウェブ中心で回っている現代社会に警鐘を投げかける社会派映画でもあるのだ。というのは言い過ぎだが、とにかくネット社会って恐ろしいと思わずにはいられない映画です。

 

 グレゴリー・ホブリット監督はサスペンスというよりもホラー的な要素の強い演出で楽しませてくれる監督だが、今回も公開殺人シーンの絶妙なエグさ(正視に堪えないほどではないけれど観てると体が震えあがりそうな感じ)や、雨の夜に突然車も携帯も使えなくなってヒロインが濡れながら公衆電話から電話するシーンなど、まさにホラー映画なシチュエーションなシーンが多い。そしてダイアン・レインがホラー映えする演技をするので、ホラー映画として十分に楽しめました。この年代のキャリアのある女優で、手足縛られて芝刈り機の上で逆さ吊りにされる人なんてシガニー・ウィーバーくらいしか他にいないでしょう。